スキルメイカー

にこ

その1 王都

朝、広間に集まると前日言われたように仲のいい人同士で集まり始めていた。
そうなると必然的に1人の奴が目立っているので直ぐに正太と合流した。
「さて、どうしようか」
「うーん、もうみんな仲のいい人同士でパーティを組んじゃってるね」
冒険者になる奴が大体30人くらいで1パーティ5〜6人でみんな組んでいたため俺たちを除いて5パーティが出来ていた。
優也たちのパーティは昨日断っているし神山たちのパーティには入りたくもない。
残った3パーティに声をかけてみたがやんわりと断られてしまった。
「よしっ! こうなったら冒険者になってからギルドで探すか」
「そ、そうだね。冒険者は沢山いるって言ってたしきっといい人が見つかるね」


その後、大臣が来て注意事項を話した。要するに外で勇者とできるだけバラすな、だそうだ。
そして全員に1ヶ月生活出来るだけのお金が配られた。
召喚されて約2ヶ月。俺たちはようやくこの世界に1歩を踏み出し始めた。




竜馬達がお城を出て直ぐ、ある一室で国王と第2王女が話をしていた。
「ふむ、やはり少し心配だな。騎士をつけるべきだったか」
「お父様、大丈夫ですよ。勇者様方はこの2ヶ月でとても強くなられました。そしてこれから魔物を倒し経験値を得ることによって、より強くなっていきますよ」
「そうだな、心配するより生きて強くなってくれることを願い待つ方がいいな」
国王と王女は顔を見合って少し笑った。


「それよりもお父様。急ですが私は少し用事ができたので、しばらくの間城を離れますね」
「はい? いきなりどういうことだ?」
「もう決めたことなので。安心してください、必ず帰ってきます。くれぐれも騎士を使って連れ戻そうなどしないでくださいね」
そういうと既に準備をしていたのか用意された荷物を持って王女は城を後にした。
「……」これが反抗期というやつか」
1人残された国王は寂しそうに呟いた。




「まるでヨーロッパに来たみたいだ」
それが王都の第1印象だった。お城から毎日のように眺めてはいたが、実際、その場に来てみると改めて自分が異世界にいるのだと実感した。


「賑わってるね〜、美味しそうな匂いもいっぱいするよ」
正太は街の風景よりも食べ物に目がいっていた。
俺たち以外は街に入るとギルドに向かって走って行ってしまった。今行くと確実に混んでいるため俺と正太はギルドを後に回し、先に街を観光することにしたのだ。
「竜馬君! このお肉とっても美味しいよ」
少し目を離した隙に正太の手には串焼きやホットドッグのようなものが握られていた。1人で放置したら直ぐにお金を使い切ってしまいそうな勢いに俺は少し引いてしまった。
「し、正太。俺、少し武器屋に行きたいんだが……」
「なら! 太陽が真上に昇ったぐらいにギルド前に集合にしよう!」
食い気味にいうと、正太は近くの屋台へと走っていった。


取り敢えず正太のことは置いておき俺は武器屋を探すことにした。
少し大通りを歩いていたが見つかる気がしなかったので、近くの八百屋さんのようなところで果物を買うついでに聞いてみるとどうやら“ドーン”という人のお店に行けばいいらしい。


教えてもらった場所に向かうと、そこは大通りから何本か中に入り込んでいて店に着く頃には辺りに人が全然いなくなっていた。
「ドーンさんか……八百屋のおばちゃんがドワーフで少し変わり者って言ってたな。ドワーフで鍛治職人とかさすが異世界だな。やっぱり頑固な人なのかな」
そんなことを考えながら歩いているとそのお店に着いた。
この街には珍しい木造建築の家で看板に大きく“武器屋”と書かれている。
中に入ると壁には剣や槍、斧など様々な武器が掛けてあった。誰もいないのかと思ったが店の奥から何か音が聞こえるので声をかけてみることにした。


「すみませーん。ドーンさんはいらっしゃいますか?」
店の奥から聞こえていた音が途切れるとドタドタと走ってくる音が聞こえた。
「はーい、お待たせしました~。僕がこの店の店主のドーンです~」
出てきたのは身長が130㎝ぐらいの男性だった。
ドワーフを想像するときの特徴である立派なヒゲは無く、体が厳ついわけでもなく、身長以外では特に人族と変わりなかった。


「僕ってあんまりドワーフっぽくないですよね〜」
俺がジロジロ見ていたので何を考えていたのか分かったのだろう。
「あっ、いや、すみません。ドワーフの方を見たのは初めてだったのでつい……」
「そうでしたか~。僕は他のドワーフの方と姿が違うのでよく驚かれるんですよね~。それでお客様はどの武器をお求めですか~?」
「実はある武器を作ってもらいたいのですが」
「ほほぅ、どんな武器ですか?」
ドーンさんは急に口調が変わって興味津々に聞いてきた。


「俺の地元に伝わっている刀と呼ばれる武器なんですが少し作り方が特殊でして……」
俺は自分が知っている限りの刀の作り方や性能を伝えた。
「うーん、斬ることに特化した剣ですか。それはとっても面白そうですね~。挑戦してみましょうか~」
「ありがとうございます! それでお金ってどれぐらいかかりますかね? そこまで持っているわけではないんですけど……」
「そうですね~。とりあえず初めてのことなのでお金は完成してから決めましょうか~。支払いも特に期限を決めませんので払えるようになったら、ということで~」
ドーンさんは既に何か考えているようで意識が上の空のようだった。
「とりあえず3日後にもう1度来てください~。それまでに試作品を作ってみますね~」
それだけ言うとドーンさんは店の奥に入っていった。


店を出て空を見上げると、太陽が真上に来るまであと1時間ほどあったので大通りに戻って少しぶらぶらしようと振り返って歩き出すと誰かとぶつかってしまった。
「あっ、すみません」
相手はフード付きの外套のようなものを着た小柄な人だった

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