スキルメイカー

にこ

その7 お城の生活

朝の眩しい日差しに目を覚ますと、真っ白い天井が映った。
「知らない天井だ。……これ一回やってみたかったんだよね〜」
ベットから起きてクローゼットを開けてみると、中には男物の服が数着入っていた。
1着取り出して着替えていると朝食の時間を知らせる鐘がなったので食堂へ向かった。
朝食は洋食風で昨日と同じフランスパンもどきとサラダ、少し味が薄めなお肉だった。
朝食を食べ終わると今後の予定が伝えられた。午前中は全員で歴史や生活するのに必要な基本的知識を学び、午後は武器の扱い方や魔法の使い方、道具の使用方法などを学ぶらしい。
クラスは先生を含めて39人いて、前衛組が18人、後衛組が13人、生産組が8人となっている。
俺は、昨日≪幽幻≫スキルで≪剣術≫スキルを見せたため前衛組に入っている。


午前中の授業を簡単にまとめるとまず、この大陸の通貨は統一されていて“ニール”というらしい。お城で食べたフランスパンもどきが大体100ニールなので1円≒1ニールと考えていいだろう。
次に、この世界にある種族だが大きく分けて5種類になる。
人間・魔人・獣人・精霊・竜人で、人間と魔人と獣人は国単位で生活をしているが精霊と竜人は総数が少ないため村程度の大きさの集落が大陸各地に点在しているらしい。
そしてこの大陸には5つの大国といくつかの小国があり、大陸のほぼ中央に存在しているこの国、ルーメル王国。大陸北部、最も魔大陸に近い国、ダリヤ帝国。大陸南西部に位置し、女神リアを信仰する国、マール聖国。大陸東部のメルク大森林の中央に植わっている聖樹を中心に森全体を領土とする国、イルシア獣王国。そして獣王国のさらに東、ガルダン山脈を越えたところにあるヴェルナンド魔王国。
各国の特色や特産物、風習なんかも教えてもらったけどそれは実際その国に行ったときにでも紹介しよう。


その後、昼食をとった俺たちはそれぞれの訓練場所へと別れていった。
「よし! お前ら、俺は武術指南をする王国騎士団長のディアスだ。とりあえず木製の武器を一通り持ってきた。自分のスキルや戦い方にあった武器を好きに選んでくれ」
団長がそういうとみんなは用意された武器を持って、軽く振ってみったり重さを見たりして各々にあった武器を選んだ。
もちろん≪刀術≫スキルは俺が作ったため刀は無く、とりあえず片手剣と呼ばれる無難な剣にした。
「よし! 全員武器は選んだな。持ち方や扱い方は騎士が1人1人付いて教える。分からないことがあったら何でも聞いてくれ」
そのあと夕食の時間までは剣の振り方や足の運び方などを徹底的に教え込まれた。
夕食になり、それぞれ散っていたクラスメイト達が食堂に集まったが、全員疲れ切った顔をしていた。聞くところによると他の場所も基礎体力が必要らしくランニングをしたり筋トレをさせられたらしい。昨日よりよく眠れたのはいうまでもなかった。




こんな生活が気付いたら一か月が過ぎようとしていた。一か月もほぼ毎日のように訓練をさせられればどんな初心者でもある程度は武器を扱えるようにはなっている。なのでもちろん実力に差が出るのも必然であるといえるだろう。勇也と悠二などは、すでに騎士の人といい勝負をするぐらいだ。
前衛組以外にも、後衛組は魔法の維持や発動時間の短縮を練習し、生産組は鍛冶や装飾品作り、武器や防具の修理を練習しているらしい。特に後衛組は訓練に慣れてくると食事の時間に魔法の話を楽しそうにしているので正直とても羨ましい。
一か月経って気づいたことだが、この大陸にも四季があるらしい。聞いてみるとこの世界は一年が約350日で四季に合わせて春が1季、夏が2季、秋が3季で冬が4季となっている。この世界での季節は最上位の4大精霊が一年を4つに分けてそれぞれ自分の好きな気温に変化させているといわれている。ちなみに季節は大陸全体でほとんど同じらしいので、この大陸自体がそんなに大きくないのか、魔法などがあるので地球とは全く違う法則か何かがあるのかもしれない。
まぁ、四季の変化には慣れている日本人なので特に問題はないだろう。


一か月訓練をしていたといっても実際は5日に一度休みの日があった。その日は一日中はやでゴロゴロしていても、図書館で本を読んでも訓練場で自主練をしてもかまわない。
一か月も一緒にいるのだ、気づいたら数組のカップルができていているのはおかしくないのだが休みの日に俺のお気に入りの昼寝スポット(中庭)でイチャイチャするのはやめてもらいたい。というわけで今日も中庭から逃げてきた俺は、やることもないので何となく訓練場の隅で剣の素振りをしていた。いつもは何人か練習している風景を見かけるが、今日はめづらしく誰もいなかった。


今日の昼食を考えたり歌を歌ったりしながらひたすら剣を振っているといつの間にか太陽は頭の真上まで昇っていた。ちょうど鐘が鳴り昼食を食べるために食堂へ向かおうとしたとき食堂の反対方向、つまり訓練場の裏側から一瞬何かが光った。少し気になった俺は訓練場の裏へと向かった。


「正太~、もっとしっかり結界を張らないと怪我するぞ~」
「おい、大吾。お前それ言いながらも魔法の威力を強めるとかめっちゃいい性格してるな~」
「おいおい、変なこと言うなよ。俺は正太の練習に付き合ってるだけだぜ」
そこでは2人の男子が1人の男子に向かって魔法を撃っていた。
撃っている2人は神山大吾かみやまだいご石川健治いしかわけんじだった。この2人はクラスではノリの軽いちゃらちゃらした奴らで噂では中学の時に何回も万引きで警察のお世話になっていたらしい。
撃たれている男子は望月正太もちづきしょうただろう。背がとても小さく女子にも劣らない顔をしている。と、そんなことを考えている場合ではない。正太の張った結界はまだかろうじて保っているが今にも壊れそうなほど薄くなってきている。


「おい! お前ら何をやっている」
「やべっ、って竜馬じゃねえか。なんだよ驚かせやがってヒーローぶりにでも来たのか?」
「お前剣術しか持ってないんだろ。俺たちは2人ともに属性持ちだぜ、サッサとどっかいけよ。それともお前も魔法の練習台になりたいのか?」
「竜馬君、僕は大丈夫だからここから離れて」
正太が俺に気づき話しかけてきた。く、くそっそんなヒロインみたいなことを言われたらなおさら引けないじゃないか。
俺は見ても特に意味はないが一応二人のステータスを確認した。


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カミヤマ ダイゴ
種族:人間
Lv.1


STR 50
VIT 50
AGI 50
LUK 45


スキル:スキル ≪火魔法≫Lv1
    スキル ≪土魔法≫Lv1
    スキル ≪アクト言語≫


称号:異世界から呼ばれし者


イシカワ ケンジ
種族:人間
Lv.1


STR 50
VIT 50
AGI 50
LUK 53


スキル:スキル ≪風魔法≫Lv1
    スキル ≪土魔法≫Lv1
    スキル ≪アクト言語≫


称号:異世界から呼ばれし者


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俺は魔法を防ぐすべを持っていない、だから2人とまともに戦ったら魔法を連打されてすぐに負けてしまうだろう。なので俺はとっておきの秘策を使うことにした。やり方は簡単、思いっ切り息を吸って力いっぱいある言葉を叫ぶだけだ。
「すみませーん!!! 騎士の方はいませんか!!!」
そう、これが万国共通の必殺技“警察(騎士)を呼ぶ”だ!
「はぁ? まじかよこいつ」
「おいっ大吾、早くいくぞ。本当に来たら少しめんどくさいことになる」
そういうと2人は城の方へと走っていった。


「よしっ計画通り! 大丈夫か? し、望月君」
「う、うん大丈夫だよ。ありがとう竜馬君、それと僕のことは正太でいいよ」
ニコッ、と笑う正太の笑顔は正ヒロインを思わせるほどの威力があった。
「そ、そうか。それよりも正太の結界魔法はすごいな、あんなに魔法を撃たれてたのに壊れてなかったな」
正太が持つ≪結界魔法≫はスペシャルスキルだった。その名の通り魔力を使って結界を張り、物理や魔法、様々なものかあら身を守れる。
「僕はこれしかできないからね。戦うこともできないし自分の身を少し守れるだけだよ」
正太のその言葉には少し悲しさと悔しさがこもっている気がした。
「騎士の人から聞いたんだ。この魔法は確かに強いけど欠点がいっぱいあって、実はこの結界自分しか守れないんだ。しかも結界を張っている間はこっちの攻撃も相手に当てられないんだって。ほかの人を守れないのに他の人に戦ってもらわなくちゃいけないんだよ」
確かにそれは使い方が限定されている。だけど仮にもスペシャルスキルがそんな使えないものなのだろうか?俺h少し気になったので正太のステータスを確認した。


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モチヅキ ショウタ
種族:人間
Lv.1


STR 50
VIT 50
AGI 50
LUK 60


スキル:スペシャルスキル ≪結界魔法≫Lv1
    スキル ≪物質鑑定≫Lv1
    スキル ≪アクト言語≫


称号:異世界から呼ばれし者
   結界師
   (秘めし者)


≪結界魔法≫
魔力を使い結界を張る
Lv1:物理結界・魔法結界


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スキル自体に気になるところはなかったが称号に見慣れないものがあった。


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結界師
覚醒時にハイスキル≪広域化≫を獲得


秘めし者(隠蔽中)
覚醒時スキル再取得


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(う~ん、とりあえず結界師の称号が覚醒すれば仲間にも結界が張れるようになるのか? 覚醒条件まではわからないのか。問題はもう1つの称号だな。なんか隠蔽されてるし、スキル再取得ってなんだ?とりあえず保留か)
「正太、大丈夫だ問題ない。お前は絶対に強くなれる! もちろん神山や石川よりもな、俺が保証する」
正太は急に励まされ、キョトン、とした顔になったがすぐに笑顔になり「うん、ありがとう」といった。大丈夫だ、少なくとも強くなるまでは俺が横で代わりに戦ってやろう。

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