六恋愛

行動は一瞬。後悔は一生。気づいた時にはもう遅く、取り返しのつかない程になる事もある。

──九月二日。

あの日以来自分は、会社をずっと休んでいた。どうにもあの会社には行きづらさを感じる。それもそうだ。上司を殴った上に、見たくもない光景を見せられてしまっては…

そんな自分とは裏腹に、外の鳥達は気持ち良さそうに朝のさえずりで合唱会をしていた。

「痛…もうお酒なんて飲まなければ良かった…あー！最悪だ！もう、どうなってんだよ！」

思わず壁を殴ってしまい、また痛めてしまった。赤く腫れた拳と頭の痛さ。そして、傷心しきった心。もう、うんざりだった。

ここまで一人になるのは初めてだ。最初は寂しさもあったものの、今となっては慣れてしまい、あの子の事も忘れかけていた程。

「もうこのまま、京子の事は忘れて新しい恋を始めようかな」

探そうと思えばいくらでも見つかる。付き合おうと思えばすぐ付き合える。そう自分に思い込みをさせて、何とか傷を誤魔化している。もう数日はこの状態だ。

あの子以上の子を見つけられるのか…そんな事を考える。
そして、毎回出る結論はNO。このままあの子が戻って来るのを待とうとしている自分がいる。でも、戻らない。

あの光景が忘れられない。いつも一緒にいた時とは違ったあの顔。態度。雰囲気。女である自分には引き出すことも出来ない。
悔しくて、悔しくて仕方なかった。

そして、また壁を殴った。性懲りも無くまた拳を痛めた。明日になったら考えよう。こうしてくだらない一日は終わりを迎えた。

コメントを書く

六恋愛

コメント

「恋愛」の人気作品

書籍化作品