転生した神龍は呪いで強くなる

夢咲 湊

襲撃

 近くで物音がする。両親は寝静まっている。深夜。生ぬるい風邪が、壊れかけた扉をかたかたと揺らしている。


「......っさと......ろう......」


「......るさ......静かに......」


 夜風に乗って、微かな声が聞こえる。



 本能が必死に何かを訴えている。これは......殺気。それも十数人ほど。



 かたかたかたかた......



 かた。




 俺は即座に両親を起こしに行ったが、突然、音も無く家全体がぶち破られた。


「と、父さん、母さん!!」


 粉塵の中に見えたのは、黒いTシャツに身を包んだ小柄な集団と、それを睨みつける父親、血を流して倒れている母。



「母さんが怪我をした。ルシは下がってろ」



 有無を言わさぬ父の語気。まだ......弱い俺では出しゃばっても足を引っ張るだけだ。



「何者だ」



 短く父が誰何、対峙する集団はにこりとしたーー勿論気のせいだと思うーー。



「なんだっていいよ、聞いてもすぐに死ぬんだ」



 そう答えた彼はおもむろに右手をかかげた。



「《光雨ホーリーレイン》 」

「やめ......」



 上空から注ぐ光の奔流。幾筋もの光線が、父さんと母さんを穿った。



「早く......逃げ......」



 それが、両親から聞いた最後の言葉だった。二人とも死んだ。冷たくなった風の中、無残に破壊された家の跡地で、ただ一人の息子である、俺を残して。



 白く煙の上がる中、焦げた匂いが鼻を突き刺す。数多の目が俺を見ている。獲物を見つけた、狂気。





 万感の思いで、俺は逃げ出した。翼があったから逃げるのはそう難しくなかった。そしてあの二人は死んでしまった。



 


「ぐっ......ぅあ、ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」




 子どもみたいに、俺は泣いた。泣いて、泣いて、泣きまくった。そして俺は無力だった。




 疲れた。




 空を飛ぶ俺は近くの森に体を預けた。硬い枝が全身を抉ったが、不思議と痛くはない。




「仇は、討つ」




 どさりと地面に落ちた俺は、そのまま意識を失った。

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