コミュ障だけど転生したし、なんだかいけそうな気がします!!
閑話 ある神様と男の話
妾は神だ。
といっても実感もなければ実態もない、さまよう霊とそう変わらない存在。
小さな街の近くにある山の神として信仰されているいわゆる土着神というもの。
とはいえ昔から山の近くの複数の街の人間達から信仰を受けているのでこうして自我のようなものが出てくるほど力はあるらしい。
依代もなければ、それを自分で作ったり、神の力を使って世界に干渉する程の力もない。
ただ人々に信仰されてるだけで、見守るだけの神。
ある日に山で火事が発生した。雷によるもので発生したもののその後の豪雨によって自然鎮火された。
雨により土砂が流れ、山の麓にある街に被害が出た。
当然妾のせいでは無い。妾が自然に干渉する程の大きな力はないからな。
だが人間達は違った。この自然被害を妾の怒りだと思った。
人間達は妾に生贄を差し出してきたのだ。
神事に尽くす人々に運ばれ、身綺麗な少女と食べ物や酒、金目の物を置いて、何やら怪しい踊りをし神の怒りを沈める儀式をした。
妾はそもそも怒ってはいないがこれも信仰心の現れだろう。
儀式が終わったあとは少女1人を置いて山から去っていった。
「………………」
土着神には神域というものがある。妾の場合はこの山全域。
霊のような存在ではこの山を出ることは出来ないが、この山のことならばどんなことだろうと知ることが出来る。
特に人間の建てた祠ではより強く力を感じることができる。
ちょうど神の怒りという事件で人々の信仰心が強まったり新たな信仰者が増えたのだろう。
その時妾は少女に干渉することができる気がした。
(小娘よ、おい!)
やはりダメだったか?
(………誰?)
少女から反応があった。
(妾はこの山の神。お前は妾の生贄にされたみたいだな)
(………………私、私を食べるのですか?)
(実体を持たない妾にそんなことできるわけないだろう。そこに置かれた食料も酒も楽しむことは出来ない)
(私はどうすればいいのですか?)
(妾は長いこと退屈していた。中途半端に力があったせいでずっと幽霊みたいな存在だったからな。ちと話し相手になれ)
そこから妾と少女は色々話し合った。
少女は元々身寄りがなく、街の人から疎まれていた存在だったそうで、今回のことがあり、すぐに生贄として抜擢されてしまったようだ。
神に捧げるということで身体は清く、パッと見綺麗だが、よく見ればところどころに傷跡があった。
聞いていた通り扱いはよくなかったようだ。
(小娘よ、お前はどうしたい?このまま死ぬ運命を辿るか?)
(はい……神様の暇つぶしにもなりませんから)
その時ひとつの可能性を思いついた。
どうせこの娘は死んでしまうのなら、依代とするということはできないのかと
(依代……ですか?)
(そうだ。妾は身体を手に入れられる。これ以上の喜びはない。どうせ死ぬのならよいではないか?)
(はい。私はもう、疲れました。これで神様のお怒りが鎮まるのなら………)
(そもそも妾は怒ってなどないと言っているだろう)
まぁよい。これで契約は完了した。
あとは妾が少女の中に入れば……………
視界が明るくなる。
「…………あー、あー、これが、ふむ、これが身体」
少女と妾が一体化したような感覚。
「動く時にいちいち感覚があるのか」
酒は……やめておくが、食べ物には興味がある。
少女も食べていたが……どういうものなのか
「なんだこの感覚は!?」
初めて身体を手に入れた妾は驚くことばかりだった。
その時祠近くに気配を感じた。
「誰だ?」
「ハミン!僕、僕だよ」
出てきた男にそのまま抱きしめられた。
抵抗しようと思ったが、身体が思うように動かない。
さっきまではなかった身体から溢れる熱、そして心臓の音がうるさくなる。
「だ、誰」
「もしかして、覚えてない?」
わからないが、この男が来たら身体がおかしなことになった。
少女の知り合いということはわかる。
男は妾が少女の身体に入ったことを知らないのだろう。
「説明するからまて。妾はこの山の神。お主らが信仰している神だ。それで少女は生贄になり、妾の依代となった」
「神?それじゃあハミンは、もう……」
「死んではない、妾が意識の中心にいるだけだ」
「そう、なの?」
「生きておるが、前の少女とは違うということだ…………なぁお主よ」
「ぼ、僕?」
「そうだ、お主妾になにかしただろう?さっきから心臓の音がうるさくて仕方ない、それにお主がいるとなんか妙に心地よいし、身体が熱くなってくる。さっきまでは感じていなかったが………むっ!?」
また強く抱きしめられた。
「僕も同じ気持ちだよ。ハミン」
一体なんなんだ?
「どうすればおさまる?」
「多分僕にはどうすることにも……」
心の中で小娘に聞いてみるか?
(おい!どういうことだ!)
(……………き、なの)
(??なんだ?)
(私、彼のことが好きなの)
正直意味がわからない。
(おさまる方法は?)
(多分、無理)
「あーもー離せ!」
「ご、ごめん」
「まずはお主のことを話せ」
男は村の若者で疎まれていた少女とよく関わっていたらしい。
いずれは駆け落ち?というのも考えていたらしい。
神の生贄になると知り、儀式が終わり次第助けに来たという。
「なるほどな。駆け落ちというのはよく分からないが、お主は妾の味方ということだな?」
「大体合ってるよ。僕はいつまでもハミンの味方だから」
慣れてきたと思ったのにまた心臓がうるさくなる。
本当に大丈夫なのか?この身体は
「それで、妾はさっさとこの山の外に出たい」
「えっ?山の神なのに?出てもいいんですか?」
「妾は存在したくてしてる訳では無い。無駄に信仰が多いせいでこうして山に閉じ込められてて信仰が少ないせいで依代も作れず、退屈していた」
「でも、山の怒りは………」
「妾にそんなことする力はない妾はもう信仰心はいらぬ。そもそも信仰者にそこまで関心もない。自由になりたいだけだ」
「そうなんだ。わかったよ。じゃあまずはここから出よう。と言っても、ごめん、あんまり僕蓄えがなくて………貯めてはいたんだけどなかなか上手くいかなくて」
「よいよい、金ならそこにあるし数日なら食料も問題はあるまい」
「いいのかな?勝手に持っていって」
「無論だ。信仰者が妾に献上したものだ。それは妾の物だろう?」
「あ、確かに」
「これからよろしく頼むぞ!お主よ」
といっても実感もなければ実態もない、さまよう霊とそう変わらない存在。
小さな街の近くにある山の神として信仰されているいわゆる土着神というもの。
とはいえ昔から山の近くの複数の街の人間達から信仰を受けているのでこうして自我のようなものが出てくるほど力はあるらしい。
依代もなければ、それを自分で作ったり、神の力を使って世界に干渉する程の力もない。
ただ人々に信仰されてるだけで、見守るだけの神。
ある日に山で火事が発生した。雷によるもので発生したもののその後の豪雨によって自然鎮火された。
雨により土砂が流れ、山の麓にある街に被害が出た。
当然妾のせいでは無い。妾が自然に干渉する程の大きな力はないからな。
だが人間達は違った。この自然被害を妾の怒りだと思った。
人間達は妾に生贄を差し出してきたのだ。
神事に尽くす人々に運ばれ、身綺麗な少女と食べ物や酒、金目の物を置いて、何やら怪しい踊りをし神の怒りを沈める儀式をした。
妾はそもそも怒ってはいないがこれも信仰心の現れだろう。
儀式が終わったあとは少女1人を置いて山から去っていった。
「………………」
土着神には神域というものがある。妾の場合はこの山全域。
霊のような存在ではこの山を出ることは出来ないが、この山のことならばどんなことだろうと知ることが出来る。
特に人間の建てた祠ではより強く力を感じることができる。
ちょうど神の怒りという事件で人々の信仰心が強まったり新たな信仰者が増えたのだろう。
その時妾は少女に干渉することができる気がした。
(小娘よ、おい!)
やはりダメだったか?
(………誰?)
少女から反応があった。
(妾はこの山の神。お前は妾の生贄にされたみたいだな)
(………………私、私を食べるのですか?)
(実体を持たない妾にそんなことできるわけないだろう。そこに置かれた食料も酒も楽しむことは出来ない)
(私はどうすればいいのですか?)
(妾は長いこと退屈していた。中途半端に力があったせいでずっと幽霊みたいな存在だったからな。ちと話し相手になれ)
そこから妾と少女は色々話し合った。
少女は元々身寄りがなく、街の人から疎まれていた存在だったそうで、今回のことがあり、すぐに生贄として抜擢されてしまったようだ。
神に捧げるということで身体は清く、パッと見綺麗だが、よく見ればところどころに傷跡があった。
聞いていた通り扱いはよくなかったようだ。
(小娘よ、お前はどうしたい?このまま死ぬ運命を辿るか?)
(はい……神様の暇つぶしにもなりませんから)
その時ひとつの可能性を思いついた。
どうせこの娘は死んでしまうのなら、依代とするということはできないのかと
(依代……ですか?)
(そうだ。妾は身体を手に入れられる。これ以上の喜びはない。どうせ死ぬのならよいではないか?)
(はい。私はもう、疲れました。これで神様のお怒りが鎮まるのなら………)
(そもそも妾は怒ってなどないと言っているだろう)
まぁよい。これで契約は完了した。
あとは妾が少女の中に入れば……………
視界が明るくなる。
「…………あー、あー、これが、ふむ、これが身体」
少女と妾が一体化したような感覚。
「動く時にいちいち感覚があるのか」
酒は……やめておくが、食べ物には興味がある。
少女も食べていたが……どういうものなのか
「なんだこの感覚は!?」
初めて身体を手に入れた妾は驚くことばかりだった。
その時祠近くに気配を感じた。
「誰だ?」
「ハミン!僕、僕だよ」
出てきた男にそのまま抱きしめられた。
抵抗しようと思ったが、身体が思うように動かない。
さっきまではなかった身体から溢れる熱、そして心臓の音がうるさくなる。
「だ、誰」
「もしかして、覚えてない?」
わからないが、この男が来たら身体がおかしなことになった。
少女の知り合いということはわかる。
男は妾が少女の身体に入ったことを知らないのだろう。
「説明するからまて。妾はこの山の神。お主らが信仰している神だ。それで少女は生贄になり、妾の依代となった」
「神?それじゃあハミンは、もう……」
「死んではない、妾が意識の中心にいるだけだ」
「そう、なの?」
「生きておるが、前の少女とは違うということだ…………なぁお主よ」
「ぼ、僕?」
「そうだ、お主妾になにかしただろう?さっきから心臓の音がうるさくて仕方ない、それにお主がいるとなんか妙に心地よいし、身体が熱くなってくる。さっきまでは感じていなかったが………むっ!?」
また強く抱きしめられた。
「僕も同じ気持ちだよ。ハミン」
一体なんなんだ?
「どうすればおさまる?」
「多分僕にはどうすることにも……」
心の中で小娘に聞いてみるか?
(おい!どういうことだ!)
(……………き、なの)
(??なんだ?)
(私、彼のことが好きなの)
正直意味がわからない。
(おさまる方法は?)
(多分、無理)
「あーもー離せ!」
「ご、ごめん」
「まずはお主のことを話せ」
男は村の若者で疎まれていた少女とよく関わっていたらしい。
いずれは駆け落ち?というのも考えていたらしい。
神の生贄になると知り、儀式が終わり次第助けに来たという。
「なるほどな。駆け落ちというのはよく分からないが、お主は妾の味方ということだな?」
「大体合ってるよ。僕はいつまでもハミンの味方だから」
慣れてきたと思ったのにまた心臓がうるさくなる。
本当に大丈夫なのか?この身体は
「それで、妾はさっさとこの山の外に出たい」
「えっ?山の神なのに?出てもいいんですか?」
「妾は存在したくてしてる訳では無い。無駄に信仰が多いせいでこうして山に閉じ込められてて信仰が少ないせいで依代も作れず、退屈していた」
「でも、山の怒りは………」
「妾にそんなことする力はない妾はもう信仰心はいらぬ。そもそも信仰者にそこまで関心もない。自由になりたいだけだ」
「そうなんだ。わかったよ。じゃあまずはここから出よう。と言っても、ごめん、あんまり僕蓄えがなくて………貯めてはいたんだけどなかなか上手くいかなくて」
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