VS火龍

火龍をおびき寄せることに成功した私たちは一気に攻勢にはいる。

「我がドラゴンをおさえる、サーティアは攻撃を頼むのだ！」

「わかったわ」

「ルーナちゃんは遠距離からの攻撃への対応、余裕があったら攻撃してくれる？」

「わかった！」

私はルーナちゃんをおろしてサーティアさんと一緒に直接攻撃に加わる。

火龍は上空からの火吹きをルーナちゃんに防がれ、直接攻撃はクロエさんに防がれそのタイミングで私とサーティアさんで攻撃する。

魔力は隙を見てマナポーションで回復、体力は回復ポーションと私の回復魔法で維持している。このままいけば火龍の方も体力約束魔力が尽きてくるはず。

しばらくの攻防が続き、ついには火龍は空を飛ばず、地上に降りて戦闘し始めた。
至近距離からの火吹きは結構まずい！

「ルーナちゃん！」

「わかってる、ハイドロブラスト！！」

「デビルズランス！」

ルーナちゃんと火龍の火吹きが拮抗している中、クロエさんは火龍に攻撃する。狙いは口のようだ。

その時、火龍も翼をはためかせてものすごい風を起こす。

「うわぁ！？」

「きゃあ！」

「うっ、ぐぬぬ」

「うそ！？わぁ！？」

全員が吹き飛ばされてしまった。
そのおかげで火吹きは避けられたが大きな隙になってしまった。

「ルーナちゃん！！！」

火龍が真っ先に狙ってきたのはルーナちゃんだった。
私はすぐさま走って、ルーナちゃんの前へ出る。

ものすごい迫力だ。ゲームの時よりリアリティがあって、食べられたらさすがの私でも即死するだろう。

「リィア、逃げて！！！」

火龍を見ると、ところどころ鱗が剥がれていた。おそらくさっきのクロエさんの攻撃によるものだろう。それに、サーティアさんと私による切り傷もいくつかあった。
私は剣に魔力を込め、そして、私自身の強化も最大限にする。

「ボルティックブレイド！！」

私は迫ってくる火龍に向かって飛び上がり、鱗のない部分に剣を思いっきり突き刺す。

「ぐるぅうああああ！！！！」

全身が痺れ、火龍は動かなくなる。

「ルーナちゃん！早く逃げてください！」

これくらいじゃ致命傷にはならないし、痺れるのも一時的なものだ。その前にみんなを逃がさないと！

「リィアは我に任せるのだ！」

「ルーナは私に任せなさい！」

サーティアさんはルーナちゃんを連れて遠くまで逃げてくれる。直接攻撃さえこなければ2人でもなんとかなるはずだ。
そして、痺れている間に、クロエさんも攻撃に加わる。
私はクロエさんから溢れ出す魔力に少し恐れを感じながらその場から離れる。

「闇の力よ、我に従いその全てを葬りされ！！！イグジストバニッシュ！！！」

その瞬間私の目の前は闇に包まれた。
正確には私の目の前の火龍が闇に包まれている。

クロエさんの方を見ると、魔力切れを起こして倒れている。

「クロエさん！」

「…………うっぐ、気持ち悪い………」

「とりあえずこれ飲んでください」

私はマナポーションを飲ませてあげる。

「ありがとう」

「クロエさんあれなんて魔法ですか？火龍はどうなっちゃったんですか？」

火龍は闇に包まれたままだ。
少し距離をとっていたサーティアさんとルーナちゃんもくる。

「あれは我の最強魔法で、闇属性の最上級魔法だ。使えるのは邪神と魔王のみ。話だけはお母さんから聞いていたのだ」

「それで？ドラゴンは倒したの？」

「あの魔法は存在抹消、魔力と体力を全てを奪い取る必殺の魔法なのだが、我の力ではまだドラゴンを倒せるほどの力はない。だが相当弱らせたはずなのだ」

なるほど、ってサラッとすごいこと言ってない？私も一応光属性の最上級の魔法は使えるけど、それはあくまで神様チートによるものだからね。
それに、存在抹消ってえぐくない？
必殺魔法………私もくらったらただじゃ済まなそう。

「それで？このやみのまほう？はいつ終わるの？」

回復を済ませて落ち着いてきたけど、まだ火龍を包む闇は晴れない。

「わからないのだ」

「え？」

「だって我も初めてみたのだ！どうなるかなどわからなかったのだ！」

「じゃあまだ油断できないってわけね」

探知魔法で確認してみても火龍の反応はそのままだし、同時にクロエさんの魔力も感じる。

見張りながら休憩していると急に闇が火龍の中に吸収される。

「え！？」

「何が起こったのだ？」

そこに火龍の姿はなく、小さな女の子が倒れていた。

「みなさん警戒はしてください！火龍の反応は消えていません！」

「ど、どうするのよ」

「とりあえず近づきましょう」

私達は火龍？の元にゆっくり近づく。
女の子は服を着ていなく、傷だらけだ。もしかしてだけど

「これ、ドラゴン？」

「ルーナちゃん、水かけてみましょう」

「わかった………はい！」

ばしゃーん

「ひゃあぁ！？ごめんなさいごめんなさい！！！」

飛び上がった女の子はそのままジャンピング土下座をする。

「確認するが、お前がドラゴンなのだ？」

「は、はい！久しぶりに実家に帰ってきたら同族の気配がしたので久しぶりに腕が鳴るぜと思ったら返り討ちにされました」

らしい。うん、よくわかんない。

「同族？」

「あ、はい、あの、同族ですよね？」

女の子はクロエさんを指さす。

「我？」

「はい、ドラゴンの気配を感じました」

「確かに我にもドラゴンの血は入っているが、そんなにわかりやすいものなのだ？」

「龍同士は縄張り意識が高いのですぐにわかるんです」

へぇ〜、それじゃあもしかしたら地龍が現れたのも縄張り意識のためにクロエさんに反応したから！？

「そういえば、ドラゴンって誰でも人化できるの？」

確かに、キャリーさんといいエミリーさんといいドラゴンだけどちゃんと人化できてる。

「あ、私はドラゴンと人のハーフ、つまるところドラゴニュートですお母さんはまだあの山で寝てます。お父さんはだいぶ前に寿命で………」

ドラゴンとのハーフなら龍化できるんだね。クロエさんはできないっぽいからそれ以上血が薄くなるとできないのかもしれない。

「我には龍の力はあまりない。空を飛ぼうとするだけで魔力を使い切ってしまうほどなのだ」

「そうだったんですか。でもあの魔力と強い意識はドラゴンらしいと思いましたよ」

それにしても見た目年齢が私と同じくらいの女の子を拘束してる絵面はまずい気がする。

「とりあえず服を着せましょう」

そういえばまだこの子全裸だった。普段から全裸の魔物にとって裸である恥じらいはないのだろう。

ちょうど私の服のサイズが合っているので着せてあげる。その前に乾かしてあげないとね。

「ついでに回復も…………」

「待つのだ、貴様はもう敵意はないのだ？」

すると女の子はお腹をみせて寝転がる。

「はい、完全降伏です。もう戦う力もありません」

なんだかいけないことをしている気分になるけど、この子は街を襲おうとした……いや、待てよ。

「もしかしてクロエさんの気配に誘われただけで街には元から興味がなかった、とかですか？」

「あ、はい！街を襲ったことは無いです。人間と遊んでもらうことはあるのですが、街に行くとすぐに遊び相手が来てくれるので」

人間にとっては大惨事でもドラゴンにとってはただの遊びだったなんて………

「はぁ………とんだ迷惑ね」

「でも、悪い子じゃないんだね」

無害ということで、回復してあげる。

「ビリビリしてたのが治ってきました。ありがとうございます」

「そういえば我の魔法を受けて大丈夫だったのだ？」

確かに、あんな凶悪魔法を受けて無事に済んだの？

「無事じゃないですよ！本当に死ぬかと思いました。辺りが闇に包まれたと思ったら魔力と体力がどんどんなくなっていって、ついには龍の姿を保てなくなったんですから」

それにしても龍の力はすごい。

「本気で倒そうとしてたのにすごいですよ！」

「ですね、めちゃくちゃ殺意を感じてました。でも自分はこれでもここいらじゃ一番強いんで！簡単にはやられないですよ」

あ、そういえば名前とか聞いてなかったね。

「名前はなんて言うんですか？」

「テナです」

テナちゃんは意外と礼儀正しい子でこれまでのことも考えると普通に遊んでただけに思えてしまう。まぁ火龍基準だから人間にとってはたまったものではないのだけど。

「それで？この子どうするのよ」

とりあえず火龍は処理したことをギルドに伝えないとね。そしてこの子のことも。