異世界の親が過保護過ぎて最強
――第110話――
ショーンの背中にある魔法陣をじっくりと見つめる。
この魔法陣は高度な干渉魔術だ。
相手の記憶の内部に入り込み、思い通りにコントロールさせる。
で、こっちは干渉魔術によってコントロールさせた内容の定着。
魔法陣の魔力が入れ墨の様に色素として身体の内部まで浸透している。
ちょっとやそっとの傷では、この魔法陣は機能停止にはならないだろう。
それこそ、身体ごと真っ二つにされない限り……。
「おい、ルディ。まだかよ」
「ルディー。まだー??」
俺、まだ考えてんだけど……。
急かしてくる二人に向き直り、俺の見解を告げる。
「おそらく……ショーンの過去を改変して、それを定着させてるって感じだな。その過去を絶対に崩されない様に魔法陣が崩れない仕掛けもされている」
「あぁ?……ショーンの過去が本物の過去じゃないってことか?」
「ネロの言う通り。でも、この魔法陣がいつショーンに付けられたか分からないから、過去がどこから改変されているのか、は分かんねぇんだよな……」
「んー? ってことはー、ショーンには“もどき”の陣とは違う陣が入ってるってことー?」
「そういう事。今回、俺たちが追っている件に関しては……多分関係ない」
干渉魔術は人を操る事も出来るが、ショーンのは過去改変のみで自爆機能も遠隔操作もされていない。
相当、ショーンの過去を変えたかったんだろう。
なんで そんな事をしたのか分からないけど……。
「……ショーンにも俺たちにも危害が無いんだったら、さっさと服 着せてやれ」
ネロはショーンの背中を ちらり と見て、険しくしかめている顔をそらして言葉を放つ。
俺はネロの言葉に「はいはい」とだけ答え、ショーンの着替えをしていると、ネロは部屋から出て行った。
ショーンの着替えも終わり、ネロの帰りをラルフとのんびり待った。
☆
帰ってきたネロに「どこに行っていたのか」と聞くと、<リシュベル国>にいる神狼族に話をしに行っていたようだ。
何か一言声かけてから行ってくれよ。
すぐに帰ってきたから良いけど、急にどっかに行くから驚いたじゃん。
ショーンの背中の魔法陣を見たとき、様子がおかしかったし……そのせいか?
う~ん……
考えても分からん!
俺たちはショーンをお店のおばさん……タリーに預け、ネロが掻い摘んで説明すると快く引き受けてくれた。
あの おばさん、本当に心が広い。
宿に戻った俺たちは今後について話し合った。
「これから、どうする?」
俺の質問に二人は腕を組んで悩む。
先に口を開いたのはネロだった。
「……そろそろ、向こうが強硬手段に出てくるだろうな」
「そーだねー! 僕たちにアジトの一部がバレちゃったからね!」
「だな。俺たちにバレて、全て水の泡になるくらいなら、駄目元でも何か仕掛けてくるだろうな。……ネロはどう思う?」
「ルディの言う通りだろう。本来の目的は知らねぇが、それが達成出来なくなるのは向こうだって嫌だろうよ。なら、多少のリスクを冒してでも俺たちを消しに来るだろうな」
「んー? 向こうが出てくるまで待つ?」
「俺はその方が良い。……ルディは、あの出城で持って帰ってきた魔力を使って、魔力探知機を改良してくれるんだろ?」
「ああ。とは言っても、魔力の質を記憶させるだけだから、そんな時間はかからないな……今、やっとくか。二人とも出してくれ」
俺は二人から魔力探知機の眼鏡を預かり、出城から持って帰ってきた魔法陣が描かれた宝石……“核”を取り出す。
俺の作業を見ながら、ラルフがネロに問いかけていた。
「入れ替える“核”はいつものでいーの?」
「良いんじゃないか? ほとんどの“核”はフローレンスが作ってたみたいだしな」
「最初に取れた“核”がその人ので良かったよねー!」
「そうだな。まぁ、王女様に近付ける人間は限られてるからな。最初にルディに王女様を仕向けて良かったな」
「あははははは! 最初、王女様にまで入ってるなんて思ってもみなかったけどねー!」
「全くだ……運が良かった」
それから二人は地図を広げ、どの範囲を捜索していくか役割を決めていた。
二人して楽しそうだな。
俺も会話に混ざりたい……。
くそっ、今やるなんて言わなきゃ良かった!
あ、でも、やらないと どんどん時間が無くなっていくのか……
くそぅ……
魔力を記憶させるには、少し集中しなければならないので、会話をしながらは難しい。
俺は何とか仕上げ、ネロとラルフに改良した眼鏡を渡す。
「ほい、出来たぞ。んで、俺はどこを回ったら良い?」
俺は二人の間に置かれた地図を見て問いかけると、ネロもラルフも きょとんとした顔で見てくる。
「は? ルディは留守番だろ」
「ルディは出てきちゃだめだよー?」
なんで!?
国中駆け回るんだろ!?
少しでも手が必要だろ!?
「俺、やる事ほとんど無いんだけど……」
俺がやるとしたら偽造した“核”を作る事くらいだ。
それも今は多少余裕があるので、外に出られないほどでは無い。
「他にやる事でも探しとけ」
「んだよ、そんな風に言う事ないだろ」
「ルディ拗ねちゃったー!」
「拗ねてねぇ!!」
俺は決して拗ねてなんかない!
仲間外れにされて寂しいなんて思ってないからな!!
俺とラルフが わいわい騒いでいると、ネロの溜息が聞こえてきた。
「はぁ……。別にないがしろにしてる訳じゃねぇよ」
「じゃぁ、なんだよ」
「ルディの髪の毛の色が問題なんだ。何をしててもすぐにバレる。秘密裡に事を進めてぇのに、それじゃ、意味ねぇだろうが」
「う……」
髪の毛の色は皆同じはずなんですがねぇ!?
二人は変えられるから良いけど!?
俺は変えられないんですが!?
神狼族の血が無いとそのチョーカー使えませんもんねぇ!?
「どーせ、俺は人間ですよ」
もう、ここまで来たら とことん拗ねてやる。
「あははははは! ルディが拗ねたー!」
「悪ぃか、ちくしょう!!」
「開き直んなよ……面倒臭ぇ」
拗ねる俺、笑うラルフ、呆れるネロ。
黒幕と立ち向かう前でも、いつも通りの俺たち。
今から気を張ってたら持たないしな。
いつフローレンスさんからのアクションがあるか分からない。
ネロとラルフはそのアクションが起こる前に“核”を入れ替える為に奔走する。
……。
俺には何が出来るだろうか。
何かやり残したことはあるだろうか。
今、俺たちがしている事は黒幕がやろうとしている事を気が付かせずに不発させ未然に防ぐ事。
ネロとラルフ、里の皆を守るために……あと何が出来るだろう。
俺は二人と会話しながら、そんな事を考えた。
この魔法陣は高度な干渉魔術だ。
相手の記憶の内部に入り込み、思い通りにコントロールさせる。
で、こっちは干渉魔術によってコントロールさせた内容の定着。
魔法陣の魔力が入れ墨の様に色素として身体の内部まで浸透している。
ちょっとやそっとの傷では、この魔法陣は機能停止にはならないだろう。
それこそ、身体ごと真っ二つにされない限り……。
「おい、ルディ。まだかよ」
「ルディー。まだー??」
俺、まだ考えてんだけど……。
急かしてくる二人に向き直り、俺の見解を告げる。
「おそらく……ショーンの過去を改変して、それを定着させてるって感じだな。その過去を絶対に崩されない様に魔法陣が崩れない仕掛けもされている」
「あぁ?……ショーンの過去が本物の過去じゃないってことか?」
「ネロの言う通り。でも、この魔法陣がいつショーンに付けられたか分からないから、過去がどこから改変されているのか、は分かんねぇんだよな……」
「んー? ってことはー、ショーンには“もどき”の陣とは違う陣が入ってるってことー?」
「そういう事。今回、俺たちが追っている件に関しては……多分関係ない」
干渉魔術は人を操る事も出来るが、ショーンのは過去改変のみで自爆機能も遠隔操作もされていない。
相当、ショーンの過去を変えたかったんだろう。
なんで そんな事をしたのか分からないけど……。
「……ショーンにも俺たちにも危害が無いんだったら、さっさと服 着せてやれ」
ネロはショーンの背中を ちらり と見て、険しくしかめている顔をそらして言葉を放つ。
俺はネロの言葉に「はいはい」とだけ答え、ショーンの着替えをしていると、ネロは部屋から出て行った。
ショーンの着替えも終わり、ネロの帰りをラルフとのんびり待った。
☆
帰ってきたネロに「どこに行っていたのか」と聞くと、<リシュベル国>にいる神狼族に話をしに行っていたようだ。
何か一言声かけてから行ってくれよ。
すぐに帰ってきたから良いけど、急にどっかに行くから驚いたじゃん。
ショーンの背中の魔法陣を見たとき、様子がおかしかったし……そのせいか?
う~ん……
考えても分からん!
俺たちはショーンをお店のおばさん……タリーに預け、ネロが掻い摘んで説明すると快く引き受けてくれた。
あの おばさん、本当に心が広い。
宿に戻った俺たちは今後について話し合った。
「これから、どうする?」
俺の質問に二人は腕を組んで悩む。
先に口を開いたのはネロだった。
「……そろそろ、向こうが強硬手段に出てくるだろうな」
「そーだねー! 僕たちにアジトの一部がバレちゃったからね!」
「だな。俺たちにバレて、全て水の泡になるくらいなら、駄目元でも何か仕掛けてくるだろうな。……ネロはどう思う?」
「ルディの言う通りだろう。本来の目的は知らねぇが、それが達成出来なくなるのは向こうだって嫌だろうよ。なら、多少のリスクを冒してでも俺たちを消しに来るだろうな」
「んー? 向こうが出てくるまで待つ?」
「俺はその方が良い。……ルディは、あの出城で持って帰ってきた魔力を使って、魔力探知機を改良してくれるんだろ?」
「ああ。とは言っても、魔力の質を記憶させるだけだから、そんな時間はかからないな……今、やっとくか。二人とも出してくれ」
俺は二人から魔力探知機の眼鏡を預かり、出城から持って帰ってきた魔法陣が描かれた宝石……“核”を取り出す。
俺の作業を見ながら、ラルフがネロに問いかけていた。
「入れ替える“核”はいつものでいーの?」
「良いんじゃないか? ほとんどの“核”はフローレンスが作ってたみたいだしな」
「最初に取れた“核”がその人ので良かったよねー!」
「そうだな。まぁ、王女様に近付ける人間は限られてるからな。最初にルディに王女様を仕向けて良かったな」
「あははははは! 最初、王女様にまで入ってるなんて思ってもみなかったけどねー!」
「全くだ……運が良かった」
それから二人は地図を広げ、どの範囲を捜索していくか役割を決めていた。
二人して楽しそうだな。
俺も会話に混ざりたい……。
くそっ、今やるなんて言わなきゃ良かった!
あ、でも、やらないと どんどん時間が無くなっていくのか……
くそぅ……
魔力を記憶させるには、少し集中しなければならないので、会話をしながらは難しい。
俺は何とか仕上げ、ネロとラルフに改良した眼鏡を渡す。
「ほい、出来たぞ。んで、俺はどこを回ったら良い?」
俺は二人の間に置かれた地図を見て問いかけると、ネロもラルフも きょとんとした顔で見てくる。
「は? ルディは留守番だろ」
「ルディは出てきちゃだめだよー?」
なんで!?
国中駆け回るんだろ!?
少しでも手が必要だろ!?
「俺、やる事ほとんど無いんだけど……」
俺がやるとしたら偽造した“核”を作る事くらいだ。
それも今は多少余裕があるので、外に出られないほどでは無い。
「他にやる事でも探しとけ」
「んだよ、そんな風に言う事ないだろ」
「ルディ拗ねちゃったー!」
「拗ねてねぇ!!」
俺は決して拗ねてなんかない!
仲間外れにされて寂しいなんて思ってないからな!!
俺とラルフが わいわい騒いでいると、ネロの溜息が聞こえてきた。
「はぁ……。別にないがしろにしてる訳じゃねぇよ」
「じゃぁ、なんだよ」
「ルディの髪の毛の色が問題なんだ。何をしててもすぐにバレる。秘密裡に事を進めてぇのに、それじゃ、意味ねぇだろうが」
「う……」
髪の毛の色は皆同じはずなんですがねぇ!?
二人は変えられるから良いけど!?
俺は変えられないんですが!?
神狼族の血が無いとそのチョーカー使えませんもんねぇ!?
「どーせ、俺は人間ですよ」
もう、ここまで来たら とことん拗ねてやる。
「あははははは! ルディが拗ねたー!」
「悪ぃか、ちくしょう!!」
「開き直んなよ……面倒臭ぇ」
拗ねる俺、笑うラルフ、呆れるネロ。
黒幕と立ち向かう前でも、いつも通りの俺たち。
今から気を張ってたら持たないしな。
いつフローレンスさんからのアクションがあるか分からない。
ネロとラルフはそのアクションが起こる前に“核”を入れ替える為に奔走する。
……。
俺には何が出来るだろうか。
何かやり残したことはあるだろうか。
今、俺たちがしている事は黒幕がやろうとしている事を気が付かせずに不発させ未然に防ぐ事。
ネロとラルフ、里の皆を守るために……あと何が出来るだろう。
俺は二人と会話しながら、そんな事を考えた。
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