異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第96話──

このやり方で間違いなさそうだな。

 そう確信した俺は再び“核”を元の位置に戻す。

 魔物の首元に“核”を当て、魔力を流すと皮膚の中に溶ける様に入っていった。

 全てが中に入り込んだ事を確認し、魔物の様子を観察する事 数分……最初に見た“もどき”の状態へと戻った。

やっぱり、この“核”が原因で“もどき”になるのか。
ほんと、えげつない事を考えるな……。

 俺が実験用に作った身体に影響を与えそうな“核”も試したが、全て俺の予想通りの結果に終わった。

 ついでに持ってきた人体に影響を与えそうな魔法陣を抜いた“核”も試した後、俺はここにいる魔物の“核”を全て取り除き、解毒薬を飲ませていった。

 薬が効くのを待っていると、通常状態に戻った魔物が次々に起き上がる。

 ちなみに、最後の“核”の結果は身体に影響は無かった。

これで、今後 俺で試しても大丈夫そうだな。

 起き上がった魔物は術が解かれてから時間がたっていないからか 興奮状態にあり、一匹いっぴきが俺を認識すると襲い掛かってきた。

ドンッ!
ゴゴゴゴゴッ

 俺は向かって来る魔物に対し、足で地面を強く叩き、土の魔法で軽く地震を引き起こす。

 それに驚いた魔物は すぐさま足を止めた。

 魔物は弱肉強食の世界。
 どちらが強いか認識させれば話は早い。
 人間には人間のルールがある様に、魔物には魔物のルールがある。
 一度、下に見られると今後にまで関わってくる。
 今は興奮しているから状況判断が出来ていないとしても、こういう時は最初が肝心だ。

 俺は魔物を睨み付け、言葉を放つ。

『もしかして……俺を殺そうとしたのか?』

 俺の言葉を認識した魔物は ズササササッ と後ろへ下がり、壁際まで行って座り込むと勢い良く首を横に振る。
 他の魔物も同じ様に首を横に振っていた。

いや、何でお前らまで反応してんだよ。

 その様子に俺は苦笑したが、すぐに次の質問をする。

『殺すつもりは無かったんだな?』

 その質問に魔物全員が こくこく と首を縦に振る。

『なら、何で俺に向かって来たんだ?』

 この質問には シーン となり、誰一人として動く魔物はいなかった。

『あぁ、俺にお礼を伝えたかったのか?』

 俺のこの言葉で魔物達は一斉に今までに無い勢いで首を縦に振る。

……からかう のはこの位にしとこうか。

 途中から少し楽しくなったしまった事を反省し、俺はこの穴の出口を見上げる。

一人ひとりで出るだけなら出られるけど。
どうせなら、こいつらも連れていくか……?
一匹いっぴきずつ運んだとして七往復……
うん、面倒だ。

 そう思った俺は地面に手を置いて土魔法を使う。

ゴゴ……ゴゴゴゴゴッ

 地面が揺れると土や岩が盛り上がり、上にある穴の出口までの坂道が現れた。
 初めて作ったので表面は凸凹でこぼことし、不格好ぶかっこうな仕上がりになったが、大丈夫だろう。

 俺はいまだに壁際にいる魔物達の方へ顔を向けて言葉を掛ける。

『これで外に出れる。出たければ着いて来い。』

別に連れて帰るとも約束してないしな。

ここに残りたければ残れば良いし、出たければ出れば良い。

 魔物は自由で好きに生きられる……が、弱肉強食の世界で生きている。
 弱ければ死ぬ、ただそれだけの世界だ。

 なので、俺は魔物に好きに選ぶ様に言葉を掛け、返事を待たずに俺は自分で作った坂道を登って行く。

 坂道を登りきった後に立ち止まり振り返ると、七匹全ての魔物が恐る恐るといった様子で着いてきていた。

 俺はその光景を見てから前へ向き直り、再び歩みを進めて洞窟の出口へと向かった。






 洞窟の外へ出ると、心配そうな表情のユニコーンと森の中から様子を窺ってきている魔物達の姿が見える。
 俺の足音を聞き付けたユニコーンはすぐに俺の近くへとやってきた。

『ルディ……お主、無事だったのだな。地面が二度程揺れたので、心配しておったのだ。』

『心配してくれて ありがとな。見ての通り大丈夫だ。』

 俺は笑顔で答えてユニコーンを安心させる。

 俺から数秒程遅れて、洞窟にいた魔物達が外へと出てきた。

 森の方から魔物達の不安気な声が聞こえてくるが、外へと出てきた魔物達は キョロキョロと見回した後、それぞれ何かを見付けた様子で駆け出した。

 魔物達が到着した先には、同じ種類の魔物が駆け寄って来た魔物を出迎えている。

 恐らく、家族か友人なのだろう。

 その様子を見ていたユニコーンは驚きを隠しきれない様子で言葉を口にする。

『ルディ……あの者達は、まさか……?』

『そう、洞窟の中にいた奴らだ。全員、正気に戻ってるから、心配する事は無い。って言っても、また弱肉強食の世界に戻ってきただけなんだけどな。』

 後半は少しおどけて言ったのだが、スルーされてしまった。

何か反応してくれよ。
肯定でも否定でも同意でも、さ。
スベったみたいになるじゃん。

 ユニコーンは俺の瞳を覗き、真面目な口調で言葉を放つ。

『これは人間業とは思えぬ。まるで神の様な力だ。』

『え、いや……そんな事は無いって。俺は俺の目的の為にしたい事があって、そのついで みたいなもんだし……』

『何を言うか。その様な謙遜けんそんをせずとも、ルディの力は神の域に達している。……すぐに、この森の魔物ら全てが知る事になろう。我は、ルディの様な者に出会えて嬉しく思う。』

 なぜかユニコーンは誇らしげに頷いている。

いやいやいや!
本当に、ただの偶然だから!
実験しに来ただけだしっ!
そんな大事おおごとにしないでっ!

『いや、本当に……ただの偶然で』
『何をしている。早く乗らぬか。』

聞いちゃいねぇ……。
自分本意のマイペースは良いけどね?
それが魔物だからさ。
でも、少しは聞いてくれると嬉しいかな……。

 少しテンションの高いユニコーンに俺は断る事も出来ず、行きの事を思い出し、息を吐き出して覚悟を決めてからユニコーンの背中にまたがった。

 すると、俺の思っていた感じと違い、ユニコーンはゆっくりと歩き出した。

 ユニコーンと俺が通る道すがら魔物達と出会うが、魔物は立ち止まると一礼をして、俺達が通り過ぎるのを待っていた。

 パレード的な様子に俺は恥ずかしさを覚える。

ちょ、マジやめてっ!
恥ずかしっ!!
なに考えてんの!?
ちょ、ちょっとっ!

 俺は早く行く様にユニコーンの首元を軽く叩くが、ユニコーンは首を少し持ち上げて姿勢を正しくするだけだった。

あ~……
早く着かないかな……

 こういう時は諦めが肝心だと分かっているので、俺は諦めてユニコーンの好きにさせる事にした。

 俺が森の出口に着いた頃にはすでに日は落ちていた。

 ユニコーンは名残惜しそうに俺を見つめると言葉を放つ。

『ルディ、また森に来てくれるか?他にも狂う魔物がおるのだ。』

〈闇落〉かな?
それとも“もどき”??

『分かった。また来るよ。』

 俺はユニコーンに答え、門の方へと駆け出した。


















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