異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第93話──

部屋に戻り、俺はネロから頼まれていたモノを渡す。

「はい、コレ。」

ネロに渡したのは魔法陣を描き込んだ宝石に紐を巻いただけのネックレス。
ネロはそれを受け取ると まじまじ と眺めて疑問を口にした。

「ん?何だコレ?」

「ネロが前に言ってた、魔力を探知するヤツだよ。ほら、こうして……」

俺はネロの手にあるネックレスに“もどき”から採取した歯を近付ける。

「近くに同じ魔力があったら、こんな風に暖かくなる。まだ試作品だけど、効果はあるから とりあえず渡しとく。」

「ふぅん?分かった、ありがとな。」

「おう。」

ネロはそのネックレスを首にかけると、出掛ける準備を整えてから窓に向かう。

「ラルフは……もう寝てるな。」

「そうだな。」

俺とネロはラルフの幸せそうな寝顔を見て笑い合う。

その後、ネロは カタン と音を立てて窓を開けた。

「じゃ、行ってくる。」

「いってらー。」

ひらり と窓から消えたネロは危なげ無く着地し、音も無く走って行く姿を俺は眺め、俺はもう少し解析を進めようか と思い机に向う。

気が付いた時には俺は机で寝てしまい、帰ってきたネロに凄く怒られてしまった。







エヴァンに“もどき”を何事も無く引き渡してから数日。

ラルフが魔術に関しては分からないと言うので、ネロと一緒に色々と動いている様だった。

俺は俺でネロに渡した試作品の改良版を作り、魔法陣の解析を進めていた。
解析をやる内に、埋め込まれていた“核”は魔法陣で皮膚に傷つける事無く体内に入れられる様な仕組みだと分かった。

後からでも描き直せる様に出し入れ出来るみたいで……
まるで、人体実験をしている感じだ。

俺自身、確認が取れていないので憶測の域を出ず、断言は出来ないが。

埋め込んだり……取り出したり……。
俺も試してみたいけど……
実験の為とは言え、他人や魔物にやるのは気が引けるな……。

自分にやるのも考えたが、もし不具合が出てしまい 俺が廃人になるとネロやラルフはどう思うだろうか……
…………う~ん。
最悪の事態を考えると……。
立ち会って貰って、不具合が出たら対象してもらいたいし……
俺が暴れまわる事があれば処分してもらわなきゃいけないしな……。

……こんな事をネロとラルフに相談したら、自分にやれって言われそうだな。

相談出来ない と言うことは自分にも試せない。

また“もどき”を捕まえられたら良いんだけど。

前の“もどき”で試すか?
すでに廃人になっている人間に試したとして効果はあるのか?

~~~っ!!
分からんっ!!

こう……都合良く“もどき”は現れてくれないし。

そもそも、あの食堂であった一件いっけん以来“もどき”は鳴りを潜めている。

俺達が“もどき”を捕まえたから、慎重になっているのかもしれないな。

どうしようかな……。

俺は椅子にもたれ掛かり天井を見上げ、手をかざす。
左手につけられたミサンガがライトに照らされて光っていた。

ユニコーンに貰ったんだよな、コレ。
俺がユニコーンに会うなんて思っても見なかったな。
……ユニコーン?

あの時確か……

───何匹かは戻って来たが、その様子は変わり果て、何か……人間に怪しい実験でもされたのだろう。

そう、何匹かは戻って来たって言ってたよな。
えっと、それから……

───その者らはほうむってやるしか無かった。

ほうむると言っていた。
殺したとは言ってない。
ほうむるの意味は表に現れない様に捨て去るって意味もあった筈だ。
その後に続いた言葉でてっきり殺したと思ってしまっただけだ。
その言葉は、確か……

───あの様に苦しみ、悲しみ、助けを求める姿を見ては、一刻も早く楽にしてやりたかった。

うん、そう。
確か、そう言ってた。
俺は“もどき”の事だと思ったけど……
誰がとは言ってない。

───家族や友人が……殺されたと思っていた者があの様な姿になり、人間に使われているのをみた者は数多く……狂う寸前だった。

ユニコーンはこうも言っていた。
なら“苦しみ、悲しみ、助けを求める姿”は狂う寸前の家族や友人?
“もどき”だったとしても、レベル以上の身体能力を発揮していた。
それは俺が相手にした事があるから分かる。
そんな魔物をあの森にいる魔物だけで対処できるのか……?

もしかしたら、あの森にまだ“もどき”の魔物がいるかもしれない。

行ってみる価値はありそうだな……。

ガチャ
「ルディ!ただいまーっ!!」
「帰ったぞ。」

「ぅお!?ビックリした~。おかえり、ラルフ、ネロ。」

考え事に没頭していたので、急に声をかけられて驚いてしまった。
帰って来た二人に俺は言葉を続ける。

「そっちの調子はどうだ?」

「向こうが持ってる情報は把握したから、今は城内を“コレ”を持って確認してる途中だな。」

ネロはコレと言い俺が渡したネックレスを示した。
俺はその言葉に疑問を覚えてそのまま口にする。

「城内で?なんで?」

「あのね!あのね!お城でずっと反応してるんだよ!人が多いから誰に反応してるのか分からないんだよねー!」

「それと、エヴァンから貰った情報を整理して手当たり次第探してたら拠点…になるのか?そこを見つけてたんだよ。でも、まだ中には入れねぇから、ラルフに案内がてら外から確認したら、そこでも同じ様に反応してたな。」

「だから今はネロと一緒にお城で誰に反応してるのか調べてー、拠点はどうなってるのかを調べてたんだよねー!」

「簡単に言うとそうだな。……で、ルディの方はどうなんだ?」

「そうだな……あ、その魔力探知の改良版を作ったぞ。」

俺が作ったのは、宝石を一度溶かして薄く伸ばし、そこに魔法陣を描いてサーモグラフィーの様に特定の魔力を視認出来る様に改良していた。
いわゆるメガネを作ったのだ。

俺とネロとラルフ用にそれぞれ作った。
俺はネロとラルフにそのメガネを渡す。

「これはメガネって言うんだ。少し改造して特定の魔力を視認出来る様になってる。」

「すごい!すごい!!これがあったら調べるのも楽になるよー!」

「何でメガネが作れて服は作れないんだ?」

何でって言われてもな。
出来んもんは出来ん!

俺達は話をそこそこにし 昼食を食べてから、俺は森に行く事を二人に伝えて出掛ける準備をした。















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