異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第85話──

数日間、俺達は国中を駆け回った。

午後になり、地図を片手に他に見落としが無いかを確認し、特に無さそうなので、一度宿に帰る事になった。

道中 なにやら人混みがあり“もどき”かと思ったが、騒がしく賑やかな様子を見ていると、どうやらそうでは無い様だ。

「何集まってんだろうな?」

めっちゃ人いるし。
何してるんだろ?

俺の質問にネロは「知るか」と一言。

もう少し考えてくれても良いと思う。

ラルフは人混みを じっ と見ると、人混みに向かってゆびして声を上げる。

「ねぇ!ねぇ!あそこに いるのってセシルとテト じゃない?」

「あぁ?……確かにいるな。」

「え、ちょ、ラルフ!?」

ラルフはネロの言葉を聞くと、俺の言葉に気付かず、すぐに走って行ってしまった。

俺も気になるけど、何か一言ひとこと 言ってから行こうぜ。
団体行動してんだからさ。

俺とネロは諦めてラルフの後ろを歩いてついて行った。

テトとセシルに近付いたラルフは二人の背中を叩いた。

「テト!セシル!」

「ん?あぁ、ラルフか。」

「よぉ、ラルフ。奇遇きぐうだな。」

振り返ったテトとセシルがラルフの姿を確認すると笑顔で迎えていた。
後から来た俺達に気が付くと手を振られたので、俺とネロも軽く手を振り返す。

ラルフに追い付いた俺はテトとセシルに質問をした。

「なぁ、これ、何の集まりだ?」

「あー……ルディは見ない方が……。」

テトは何とも歯切れの悪い答えを返してくる。

俺は見ない方が良い?
こんなに賑わってて楽しそうなのに?
なんで??

俺は頭に疑問符を浮かべ、首を傾げる。

答えてくれないなら仕方ないか。

俺は自分の目で確認する為、密集している人を掻き分けて前に出る。

「さぁー!!次の挑戦者は誰だーっ!!」

そこには、机がひと卓と椅子が二脚。
座っている屈強な男性ひと人に、司会進行している男性がひと人。
金を集め集計している男性がひと人いた。

その三人は以前ギルドでイラッとした、あの三人の冒険者だった。

何してんだ、こいつら。

俺の後をついてきたネロが こそっ と耳打ちしてきた。

「ルディの知ってるヤツか?」

「あぁ、前にギルドで吹っ飛ばしたヤツ。」

「へぇ。」

追い付いたラルフも俺達の会話に入る。

「なにしてんだろー?」

「さあな。」

「罰金になって金が無くなったんじゃねーの?」

ラルフの問いに俺とネロが答え、ひと足遅れて来たテトとセシルも会話に加わった。

「今、やってるのは腕相撲だ。」

は?
腕相撲??
なんでまた……。

「あの冒険者に勝てたら賞金が貰えるんだよ。参加費は金貨一枚なんだ。」

セシルの後にテトが補足してくれた。

金貨一枚!?
たっかっっっ!!

俺が驚いている横で、ネロがテトに質問をしていた。

「賞金っていくら貰えるんだ?」

「挑戦者が支払った参加費が積み立てされて、その八割が貰えるみたいなんだけど……。」

「まだ誰も勝ってねぇんだよ。前、ルディに突っ掛かって来やがったから、俺とテトで挑戦したが全く歯が立たなかったぜ。根性が腐ってても、さすがAランクって事だな。」

「ふぅん。」

ネロ、テト、セシルの会話を聞き、もう一度あの冒険者達の方へ視線を向けると、小さい机の上に金貨が山になって置かれていた。

うっわ。
超大金。
めっちゃ金儲けてるな。

「今度は俺だっ!!俺が行くぜっ!!」

観客だったひと人が名乗りを上げ、観客の円の中心に立つ。

観客からは声援が飛び交い、さらに賑やかになった。

両者の右手を合わせ、司会進行がその上に手を置いた。

「準備は良いか?」

「あぁ。」
「いつでも。」

「それじゃ、レディ…………ゴッ!!」

両者一歩も引かずに、押され押し返ししていたが、挑戦者の方の顔が真っ赤なのに対し、あの冒険者の方は余裕の笑みを浮かべていた。

「なんだ?弱ぇな。……これでしまいだっ!」

ボキンッ!

あの冒険者は一気に畳み掛けると、相手の腕が変な方向に曲がっていた。

「──っ!!うがぁぁああぁぁ!!」

痛がる挑戦者に心配の声も上がるが、冒険者の方が多いのか、悲鳴等の声は聞こえず、さらに盛り上がりを見せていた。

痛そー……。
アイツ……やっぱ、気に入らねぇなぁ……。

あの冒険者は勝利の余韻よいんに浸り、観客を見渡していた。

俺はネロに こそっと耳打ちをする。

「なぁ、ネロ。」

「なんだ?」

「アイツさ────」

おれと俺とネロが会話をしている最中、あの冒険者と目が合ってしまった。

げっ。
また何か言われんのか?
気色悪い笑いをすんじゃねぇよ。
そんなに俺を見付けられて嬉しいのか?

「よぅ、〈呪い子〉にまた会うとはなぁ。」

「…………。」

「なんだぁ?さっきの見て怖くてチビッたか?ギャハハハハ」

その冒険者の言葉で仲間の冒険者も俺に気付くと、嫌な笑みを浮かべる。

そんな様子に俺は呆れてため息を溢した。

「なんだぁ?やるのか?だがな、〈呪い子〉には そんな資格はねぇんだよ!ギャハハハハ」

「触ったら呪われるかもしれんからな!呪いを振り撒く悪人がっ!」

「周りにいるのは、てめぇの「お・と・も・だ・ち」か?そいつらも呪われてたりしてな!」

「挑戦しねぇ弱虫はさっさと帰るんだなっ!!」

「お友達は呪われて弱体化してたりしてな!」

「あぁ、だから挑戦したくても出来ねぇのか!ギャハハハハ」

「弱いヤツは弱いヤツらしく、尻尾巻いて逃げるんだな!」

「さっさと家に帰ってママのおっぱいでも飲んどきな!クソガキ!」

ちょっと待て。
言わせてれば好き勝手言いやがって……。
……ネロ?
ネロさん?
ちょっと落ち着きませんかね?

不穏な気配を感じ隣を見るとネロの額には くっきり と青筋が立っていた。

殺気は……うん。
頑張って押さえてるな。
気配を消しながら怒るって……器用だな。

冒険者の一人が睨んでいるネロに気が付き言葉を放つ。

「んだぁ??やんのか??〈呪い子〉のお友達のクソガキよぉ……」

「あぁ、やる。」

「へっ、病院送りにしてやらぁ!!」

冒険者が怒鳴り声を上げるとネロは親指である人物を示した。

「やるのは、俺じゃなくてコイツ。」

「……は?……はぁ!?ネロ!?何で俺なんだよ!!」





























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