異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第84話──

翌日。

俺達は朝食を食べ終えると、すぐに街へ出掛けた。

ネロは地図を見ながら歩き、俺達に声を掛ける。

「ここら辺で“もどき”が目撃されてんな。」

「何を見たら良いんだろー??」

ラルフは周りを キョロキョロ と見て首を傾げる。

俺も周りを見るが、綺麗に並べられた石で出来た広い地面、煉瓦れんがや木造等の建物が里と違い、ちゃんと地面の上に建っている。
建物と建物の間にある細い路地裏、屋台の様に道で飲食を販売しているお店。
昼からしか開かないお店や、既に開いているお店。
行き交う冒険者に街の人。

見る場所が多すぎる……。
……どこを見たら良いのかすら絞れない。

俺とラルフ、ネロも周りを キョロキョロと観察しながら歩いて行き、気が付けば俺のローブを買って貰ったお店に辿り着いた。

ネロは周りの観察をやめると、そのままお店の中へと入って行く。
俺とラルフもネロの後に続いてお店に入った。

俺達を見たオバさんは笑顔で出迎えてくれる。

「おや、いらっしゃい。」

ネロは並ぶ商品には目もくれず、真っ直ぐオバさんの前へ行くと、ローブを取り出した。

「これと同じモノはあるか?」

オバさんはローブを受け取ると、様々な角度からローブを確認する。

「“似ているモノ”じゃなくて“同じモノ”かい?」

「そうだ。あぁ……ただ、細部が違ったとしても、誰が見ても同じに見えるなら似ているモノでも良い。」

「そうだねぇ……。残念ながら、そう言ったモノは無いねぇ。すまないねぇ。」

少し悩んでから、オバさんは申し訳無さそうに眉を下げてネロに謝った。

ネロは、さほど気にした様子も見せずに会話を続ける。

「なら、同じモノを作れるか?」

「それは出来るねぇ。……一着いっちゃくで良いのかい?」

「いや、……出来れば三着。」

オバさんはネロの言葉を聞き、少し悩んでから言葉を口にする。

「そうだねぇ……最初から作るとなると……時間と……お金がかかってしまうけど、良いかい?」

「金の方は何とかする。……どれくらいの期間で出来る?」

「う~ん……二ヶ月は欲しい所だねぇ。」

今度はネロが口元に手を当て悩んでいた。

「もう少し早くは……出来そうに無いか?」

「急ぎなのかい?」

「そこまで急いでる訳じゃ無ぇけど……早い方が有難い、な。」

「そうかぃ、そうかぃ。……それなら、方法がひとつあるよ。」

「なんだ?」

「このローブと同じ色のシンプルなローブに手を加えたら出来るねぇ。」

「元々あるローブを改造するのか。……それなら、どれくらいで出来る?」

「それはやってみないと分からないねぇ。……まぁ、一ヶ月いっかげつも掛からないだろうねぇ。」

「そうか、なら それで頼む。」

「出来上がったら届けるねぇ。いつもの宿かい?」

「あぁ、そうだ。……金はいくらになる?」

「それも、やってみないと分からないねぇ。出来上がった商品と一緒に請求書も入れて置くから、後で支払いに来てくれたらそれで良いよ。ネロ君は踏み倒したりはしないしねぇ。」

「する訳無いだろ。」

「なら安心だねぇ。」

穏やかにオバさんが笑うと、ネロは「それじゃ、後は頼む。」とだけ言い、出口へと向かう。

俺とラルフもオバさんに声を掛けてから、お店を後にした。

「ネロ~……お腹空いたー……。」

店から出るとラルフはお腹を押さえて空腹をアピールする。
振り返ったネロが苦笑を漏らすと、進行方向を指で示す。

「もう少し行った先に旨い屋台があるんだ。そこで飯にするか?」

「ほんとー!?行く!行くっ!!」

ラルフは両手をうえげると、ネロが示した先へ走り出した。
そのラルフの背中にネロが声を掛ける。

「おい、ラルフ。お前が先に行っても場所を知らねぇだろ!」

くるっと振り返ったラルフは驚いた顔をしていた。

「ほんとだー!!」

ラルフはネロの元まで戻るとネロ、そして俺の腕を掴んで走り出す。

「ほら!ネロもルディも!早く行こっ!!」

俺とネロは互いに顔を見合せ苦笑した。






俺達は屋台で串焼きを数本と飲み物を買い、噴水の脇に座った。

白を基調とした噴水は、丸く石で囲われている。
中央から水が滝の様に流れていて、フォンデュタワーに似ていた。

風が吹く度に、水に当てられた風が冷たくて気持ちが良い。

涼しい風に熱々の串焼き、冷たい飲み物。

穏やかな空気の中、ラルフの陽気な声が聞こえる。

「あちっ!おいしーねー!!」

口元をタレで汚しながらも、美味しそうにラルフは串焼きを頬張った。

ラルフの笑顔につられ、俺もネロも笑顔になる。

ネロは串焼きを食べながら、国の地図を広げ、俺とラルフに見せる。

「今、俺達がいるのは この辺りだな。丁度、国の中心。次はどーする?ここからなら何処どこへ向かっても距離は変わらないしな。」

俺もラルフも地図とにらめっこをし、俺はラルフよりも先に口を開いた。

「なぁ、ここに行って見ても良いか?」

「……あ?あぁ、まぁ……特に手掛かりも無いしな。んじゃ、そこに行くか。」

「それじゃー!しゅっぱーつっ!!」

俺達は食べ終わった串焼きの串と飲み物の容器をゴミ箱に入れて、地図を見ながらそこへ向かった。

──数時間後。

「やっぱり、急いで見ても一日いちにちじゃ、全部見きれないな。」

ネロは地図に見てきた場所を印すると、言葉にした。

「広いし、な。まぁ、何日か掛ければ見れるんじゃねーの?」

「わーい!まだ、ネロとルディとお出掛け出来るんだねー!」

ネロの言葉に俺が返すと、ラルフはなぜか笑顔で喜んでいた。
その様子にネロはため息を溢す。

「はぁ……あんまり時間掛けなくねーんだけどな。今日はもう遅ぇし帰るか。」

ネロは宿へ向かい走り出し、俺達もその後を追った。























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