異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第78話──

それからの三日間。

まず、俺が向かった場所は冒険者ギルド。

依頼書にある薬草は何かを確認した。

Fランクの薬草採取依頼は随時募集のものばかりで、依頼を受けた日に持ってくる様なシステムになっている。

書かれていた薬草は、簡単に見つかりそうなモノばかりだった。

逆に、俺の手持ちの薬草は依頼には無く、売れる様なモノが無かったのが残念。

その後、受けられそうな依頼を受けて、薬草を取りに行く場所を探し、薬草をギルドへ持っていく。

常にギルドでは、カードを作った時に対応してくれた猫耳お姉さんが相手をしてくれるのだが、なぜか いつも テンパり、言葉を噛んだりよく分からない事で騒いでいる。

薬草も沢山見つかり、思っていたよりも早くお金が集まりそうで、ランクももう少しで上がるそうだ。

そう言えば猫耳お姉さんが、こんなに沢山の薬草をどうやって見つけたのか、と聞かれたが……
探せばあるのだから、説明の仕様がない。

そんな三日間を過ごし、ネロとラルフと昼食をとった後 二人と別れショーンと一緒に門の外へと出る。

門の外、と言う事は国の外。

門にいた兵士に俺とショーンはカードを見せ、俺が見付けた薬草採取出来る場所へと行く。

少し距離があるので、俺はショーンを担がせてもらった。

最初は何か騒いでいた気もするが、全て風の音に消され、今は身体の力も抜けリラックスしている様だ。

うん。
力を抜いといて貰う方が運びやすいな。

目的地に着き、俺はショーンを降ろしたが、ショーンの顔色は真っ青になっていた。

え!?
どうした!?
何か怖いモンでも見たのか!?

思い返して見ると、何度か魔物の近くを通り過ぎた様に思う。

俺には襲い掛かって来ないし、来たとしても返り討ちに出来るから気にしていなかった。

門の外に出たことが無ければ、生きている魔物を間近で見る事は殆ど無いのかもしれない。

うーん……。
少し配慮が足りなかったか?
まさか、こんなに真っ青になるまで怖がるとは……。
魔物とは遭遇させない様に注意する必要があるな。
その前に……。
ショーンの体調を回復させる方が先だな。

【鑑定】をするが、特に状態異常は見られなかった。

俺はポケットから取り出した様に見せながら、【収納】から小瓶に入った回復薬をショーンに渡す。

この回復薬はロナと一緒に作った、リラックス効果のある薬だ。

……あの時の俺には凄く必要だった。
………………うん。

「……大丈夫か?何か怖いモンでも見たか??……これ飲めば落ち着くから飲みな。」

効果は俺が保証する!
なんたって、実験台は俺だったからな!!

ショーンは俺から小瓶を受け取りながら、力の無い声で言葉を溢した。

「……す、すごく……はやかっ、た…………。」

ショーンはそれだけの言葉を言うのが精一杯だった様で、後は言葉も話さずにゆっくりと薬に口をつける。

はやい?早い?速い?
んー……。
まぁ、すばしっこい魔物もいるからなぁ。
でも、そんな魔物と遭遇したっけ??

俺が疑問符を浮かべている間に、ショーンは薬を飲み終えると徐々に顔色も戻ってきた。

「……ありがとう、おにーさん。」

「どーいたしまして。」

お礼を言ってきたショーンに、俺は笑顔で答える。

「うわぁ──っ!」

落ち着いたショーンが周りを見渡すと感嘆かんたんの声をあげた。

俺もショーンの視線の先を追ってみる。

森と隣接している平原には様々な色の草花が咲き誇り、岩が所々あった。

今、背中を向けている方の森には木にツルが巻き付き、そこから赤や黄色等の実がなっている。

上を見上げれば、木の枝から葉が生い茂り丁度良い日陰にしてくれている。

その木には木の実があり、小動物がその木の実を食べていた。

「すごいね、おにーさん。」

キラキラした眩しい笑顔が俺に向けられる。
俺はショーンの頭に ポン と手を乗せ、言葉にする。

「外にはこういう場所もある。だけど、危険もあるから俺の目の届かない所には行くなよ?」

ふ と、自分の発した言葉に苦笑してしまう。
今までは俺が見られる立場だったのに、今度は見る立場になっている。
それが、不思議とおかしく感じてしまった。

俺の言葉にショーンは元気良く頷く。

「うん!……これから、何したらいいの?」

「そうだな……」

俺はこの先の事はあまり考えていなかった。

あとは好きに薬草見付けてこいって するつもりだったんだけど。
言われてみれば、薬草の知識がショーンにあるとも思えないし……。
でも、初めて外に出たんなら自由にもさせてやりたいしな。

俺は少し考え、依頼書にもある回復薬に使う薬草を取り、ショーンに見せる。

「これが、回復薬に使う薬草だ。これを見付けてくれるか?」

「分かったっ。」

ショーンは頑張るぞとやる気を見せガッツポーズまでして頷く。

だが、ショーンの目は木の実や花等の誘惑に負けそうにもなっていた。

俺はその様子を見て、苦笑しながら言葉を続けた。

「他にも気になるのがあったら取っても良いぞ。ただし、毒もあるから勝手に口に入れるのはやるなよ?」

ショーンは俺の言葉が意外だったのか、驚きの声で問い掛けてきた。

「……いいの?」

「??  何が?」

何に対してか良く分からなかったので聞き返すと、ショーンは もじもじとしながら言葉にする。

「ぼくが、勝手にうごくと いつも おこられるから。」

家の人に、かな?
別に死ななければ何とでもなるし……。

「命の危険があれば怒るかもしれんが……それ意外なら怒らないぞ。後は……最初の目的通りに薬草をちゃんと取ってくれれば、な?」

「分かった!……頑張る。」

ショーンは にっこり と眩しい笑顔で答えると、好きな方向へ走り出す。

俺はその様子に、ライアとカインもこんな気持ちだったのかな、と思い、俺を育ててくれた親に思いを馳せた。






















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