異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第66話──

店内に響き渡る、一つの爆発音を合図に戦闘が始まる。

相手が俺の首に目掛けて剣を振り下ろした。
が、それをすんでところで避け、風魔法で相手と軽く距離を離す。

さらに俺は続けて風魔法で鎌鼬かまいたちの様な攻撃を仕掛けた。
相手は身体に小さな傷がつくことには気にも留めずに再び俺の方へ向かってくる。

ネロやラルフの様子から判断すると、戦闘不能状態になると爆発してしまう様だった。
相手が気絶、もしくは反撃出来ない身体になると爆発する。
ただ、腕一本だけの時は爆発しなかったので、五体満足であれば……捕まえる事さえしなければ爆発はしないだろう。

いや、五体満足で捕まえないって……。
どーすんだよ。

俺は相手の剣と剣を交え、力比べをしながら思考を巡らせていた。

ローブの男は奇声を上げながらも俺を殺そうとしてくる───その姿は、もはや映画に出てくる殺人鬼の様。
数秒の後、相手が根負けし、少し距離が離された。

剣を交えた時に俺は何か──違和感を覚えた。

そういえば、ラルフが言ってた……

───何か行動を起こさないと“死ぬ”って結果は出ないと思ったんだよね────
───爆発する前に口の中に魔力を集めだしたんだよね───

あの時の会話を思い出す。

ラルフが爆発の原因が何か、を確認した後の会話。

口の中……ねぇ……?

俺はもう一度、剣を交える為に相手のふところに飛び込んだ。
相手は奇声を発しながらも剣を構え、俺の剣と交わる。

───そうか。

俺の考えが正しければ、爆発する条件は二つ。
一つは魔力を込める事。
そして、もう一つは───

俺は一度相手から距離をとり、手に魔力を込め、手の平に火の塊を作る。
それを、相手の顔面に投げつけると同時に爆発音が響き渡る。

俺の相手が爆発したのかと思ったが、辺りを見ると爆発音の正体はネロとラルフが二人がかりで相手にしているほうだった。
火を食らった相手は顔面に浴びた熱に奇声を上げる。

周りを見た時に手頃の物が無いか探したが見つからず、俺はそのまま再び相手の懐に潜り込み、短剣を右手に持ち、相手の左肩に突き刺すとまた一つの爆発音が聞こえた。

「ア"ア"ア"ァァァァァガァァァアアァァァ──ヴヴヴヴヴヴヴ」

俺の相手はまだ爆発していない。
大口おおぐちを開けて叫ぶ相手の口に、俺は自分の左腕をじ込んだ。

「──っ!」

俺はじ込んだ勢いのまま、相手を壁際に叩き付ける。

ローブ越しに俺の腕を噛み千切ろうとしてくるが、ローブにほどこされている防御の魔術のお陰か、千切られはしなかった。

他の様子を探ると、ネロとクリスの二人が赤に染まりエヴァンとラルフの様子を窺っていた。

どうやら、さっきの爆発音はクリスとネロの方だったようだ。

俺はそう認識すると、ネロに声を掛ける。

「ネロ!!何か口にはさめそうなヤツ持ってきてくれっ!!」

「はぁ!?どんなのだよ!」

「丈夫なやつ!あと!持ちやすそうなヤツ!」

「お前急に言うなよっ!注文多いじゃねぇか!!……くそ!ちょっと待ってろ!」

「早くしてくれ!腕が痛いっ!!」

「腕を口に入れるヤツが悪いんだろうがっ!!」

「これしか思い付かなかったんだよ!」

「お前バカだろ!!」

「バカって言うんじゃねーよっ!!」

俺の腕から血が溢れ、ローブに染み込み床にポタポタと落ち初めている。

俺は歯を食い縛り、痛みに耐えていた。

そんな俺を見て、ネロは気を紛らわせる様に言葉を投げ掛けながらも店内を探し回っている。

「グゥルルルゥゥヴヴヴゥゥ」

「いってぇ!?」

相手が更に力を込め、腕にビリッと電撃が走る。
俺は相手の左肩に刺さっている短剣を更に奥へと深く押し込むと店内に爆発音が響いた。

「ルディ!大丈夫か!?持ってきたぞ!」

「ネロ!ありがとう!それをコイツの口に……って抜けねぇ!?」

「はぁ!?何やってんだよ!!」

ネロが持ってきたのはフライパン等の持ち手だった。
鉄製の丈夫そうなもので、持ち手の先は乱暴に落とされた後があった。

俺はその持ち手を相手の口に入れたいんだけど。

腕が抜けねぇ!!
ちょ!!
いたたたたたたた!!

腕を抜こうとしても、相手が噛み付いているので更に痛みが増える。

え!?
まじで!?
どうしよう!?
このままじゃ冗談抜きで腕が無くなるって!!

「あれ?何してるのー?……って!?ルディ!?本当に何してるの!?」

「ラルフ!丁度良い!!手を貸してくれっ!」

「え!?うん!?分かった!!」

戦闘の終わったラルフが俺を見て困惑していたが、すぐに力を貸してくれた。

「ラルフ!合図を出したらコイツの口を広げてくれ!」

ネロとラルフが相手の手足を拘束している最中に俺が段取りを伝えていると、ラルフが問い掛けてくる。

「……下顎落としたらダメなの?」

「そんな事して爆発したらどーすんだよ!?ここまで来て爆発させたくねーよ!!」

ラルフの発想が怖いよ!!
今までの努力が水の泡になるのは避けたいっ!!

「そうだね!分かった!!」

「ネロは俺の腕が抜けたら、それを口に突っ込んで口が閉じない様にしてくれ!」

「……ああ。」

それぞれ体勢を変え準備が整ったのを確認し、俺は合図を出す。

「せーのっ!」

俺は腕を一度相手の方へ押し込み、そこに出来た隙間にラルフの腕が入る。
ラルフが力を込め、相手の口をじ開け、すぐさま俺は腕を引き抜きネロが鉄製の持ち手を横向きに入れた。
ネロは相手の口からモノが外れない様に両手で押し込み、ラルフが相手の頭と持ち手をロープで固定する。

全てが終わり、俺達は暴れている相手の様子をうかがう。

「爆発は……?」

「しない……ね?」

俺とラルフ、そしてネロも詰まっていた息を外に吐き出した。















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