異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第46話──

人が多い街中で、人をき分ける事もなく冒険者ギルドに辿たどり着いた。

ギルドは周りに比べると倍以上の大きな建物だった。
扉も大きく開け放たれ、剣や杖を持った人が出入りしている。

ネロは迷う事なく、その中に足を踏み入れ、俺とラルフもその後に続く。
俺達が中に入ると、ガヤガヤしていた室内がザワつきに変わった。

「お、おい。銀髪に紅い目をしてるぞ……」
「まじかよ……初めて見た。」
「何でここにいるんだ?」
「〈神の子〉だよな……」
「あの容姿は間違いない……〈神の子〉だ……」
「俺、初めて〈神の子〉を見たぞ……」
「〈神の子〉なんて伝説じゃ……」

一人が俺に気が付くとその声が波の様に広がり、何故俺がここにいるのか、と情報が飛び交う。
ネロは入り口で立ち止まり、俺を見て意地悪な笑みを浮かべていた。

「ルディは神の子だったのか。」

「いや、俺は人の子だ。」

「違うよネロ!ルディは変な子だよ!」

「……そんな事を言うのはこの口かっ!ラルフ!」

俺はラルフの頬を左右に引っ張ったが、ラルフは痛がりはするが、笑顔のまま。

「まぁ、ルディは変なヤツではあるな。」

ネロはラルフの言葉を肯定する。

俺は普通だっ!
俺は人間で狼に育てられたが、どこにでもいる普通の子だよ!!

くつくつとネロは笑いをこらえながらも、ギルドの受け付けに向かって行った。
俺もラルフの顔から手を放し、後を追う。

受け付けには猫耳をした獣人の綺麗なお姉さんが座っている。
だが、俺達を認識すると、驚きと困惑の表情をしていた。

「あ、あの、冒険者ギルドへようこひょっ!?──~っ!」

んだ。

舌を噛んだらしく、口元に手を寄せ、耳と尻尾しっぽがピンッと伸びてしまってる。

涙目になりながらも、猫耳お姉さんは言葉を続けた。

「ぼ、冒険者ギリュドの、う、う、受け付けをしておりまひゅ、エレナと申しまひゅ!!」

大丈夫か!?
かみかみだけど!?
少し落ち着こうよ!!
何でそんなにパニックになってるの!?

「あの……お姉さん……?少し落ち着いて……?」

俺は見かねて声をかけると、エレナはわたわたした後、胸に手を当て、スーッ……ハーッと呼吸を整える。

「お見苦しい所を……申し訳ございません……。」

「いや、別に大丈夫だけど……。」

深々と頭を下げる猫耳お姉さんに俺は頭を上げる様にうながすと、猫耳お姉さんは目を輝かせてきた。

「ああ、やはり〈神の子〉はお優しい心をお持ちなのですねっ!」

「え、いや……」

なぜ、そうなる!?
後ろの二人!!
笑ってないで言いたい事があるなら言えよ!
怒んないから!……多分!

笑うのに満足したのか、ネロが猫耳お姉さんに声を掛ける。

「今日来たのは、コイツの登録をしに来たんだ。」

「そ、そうなんですね!えっと、でも……冒険者登録ではなく住民登録の方が宜しいのでは……?」

「ここに住む訳じゃないからな。住民登録は出来ない。」

「な、なるほどっ!……はっ!!まさかっ!私がそのお役目を……!?」

「……他に誰がいるんだよ。」

「あのあの!ギルドマスターとかですねっ!」

「…………さっさと登録して終わらせたいんだよ。」

「わ、分かりましたっ!!」

ネロはどことなく疲れた様子だった。
猫耳お姉さんのエレナは大きな水晶を持って来、机の上に置く。

「えっとですね、ここに魔力をそそいで頂ければ登録完了です!」

エレナにうながされ、俺は水晶の上に手を置き魔力をそそぐ。
水晶が俺の魔力に反応し、水晶がきらめくと、カードが一枚いちまい現れた。

「こちらが冒険者カードになります!入出国の際は必ず提示をお願い致します。そ、それから……えっと、何かご依頼を受ける際やご依頼が完了した際、素材を換金する際には、こちらのカードを冒険者ギルドに提示をお願い致します!他に分からない事がございましたらご質問して下さいね!」

「うん、分かった。ありがとう。」

「いえいえ!!私の方こそ!!〈神の子〉のカードを担当したのは私だと皆に自慢出来ますっ!ありがとうございます!」

勢い良くエレナは頭を下げながらカードを渡してきた。

いや、自慢する程の事じゃないでしょ。

俺は苦笑をらしながらも、そのカードを受け取る。
カードは凄く頑丈で、装飾もほどされた緑色をしていた。

俺は再びエレナにお礼を言ってから、ネロとラルフと歩き出す。

「そういえば、二人のカードはどんなんなんだ?」

「俺はこれ。」
「僕はこれ!」

二人が出したカードはデザインは同じだが、色は違った。
ネロは赤色をしていて、ラルフは青色のカード。

「色が違うな。」

「冒険者カードはランクが決まっていてな。Sが金、Aが銀、Bが銅……俺はCランクだから赤。」

「僕はEランクだから青いんだよ!」

「俺の緑は?」

「最低ランクのFだな。所謂いわゆる、駆け出し。EとFが初級冒険者、BからDが中級冒険者、SとAが上級冒険者だ。」

緑は初心者マークみたいなもんですか。

あれ、でも、ネロって俺達より前からやってるみたいだし……
なんでCランクなんだ?
前にサンルークから聞いた話だと、レベル的には上級冒険者でもおかしくないと思うんだけど。

「ランクを上げるのって難しいのか?」

俺は疑問に思った事をそのままネロに聞いた。

「いや?人間に比べれば簡単に上げられるとは思うけど、あんまりランク上げるのは『神狼族』には向かないんだよ。」

ネロは一部言語を変えて説明をしてくれた。
俺はなんとなく小声で再びネロに聞く。

「向かないって?」

『上級になると指名依頼なんかも来るからな。狂って無いヤツは倒せない、つーか倒す気もねぇ。ランクはそこそこ上げとくと楽になる事もあるが、中級が限界だな。』

『楽になるって例えば?』

『魔物の情報を集めたり、だな。弱いヤツが強い魔物の事を聞くと笑われて終わりだ。』

『なるほどな。』

確かに弱いヤツが強い魔物の情報を聞くとイキがってる様に見えてしまうのかもしれないな。
〈闇落〉は強い魔物でもあるから、そこそこランクを上げて無いと周りから馬鹿にされる訳か。

俺達はそのままギルドを出ようとした。

「おい!ネロ!!ちょっと待てって!」

ネロを呼び止める男性の声が聞こえ、俺達は足を止め声のする方を見る。

そこに居たのは男性二人。
どちらもケモミミ付きだった。
























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