異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第40話──

しばらくすると、長剣の男が俺に気が付いた。

「……お前は、あの時の……?」

「ああ!やはりお会い出来ました!」

男の発言で俺に気が付いた王女様(と思われる人物)が歓喜の声を上げる。

「以前は助けて頂きありがとうございました。私は〈リシュベル国〉の王女、サムと申します。」

本当に王女様だった!
ネロは間違って無かった!
ネロをあなどってたよ、まじごめん。
いや、でも、本当に何でこんな場所にいるんだよ、王女様。

ドカァァアアァァン!

突然、俺達のいた所に魔法が落とされた。
俺達三人はそれぞれ飛び退き攻撃を回避する。

「おい、ニーナ!!勝手に攻撃するなっ!!」

「ごごごごごごごめん、ウィル!つい!!」

で攻撃しないでくれませんかね!?
当たってたら大変だろ!! 

俺は声をひそめ、

『なぁ、ネロ。』

『……なんだ?』

『攻撃されたんだから、反撃しても正当防衛せいとうぼうえいだよな?』

『ルディがやったら過剰防衛かじょうぼうえいだろうな。』

『…………手加減はする。』

『……お前、俺の事『短気だ』っつってたけど、ルディの方が短気だろ。』

『あはは!ルディもネロも気が短いよっ!』

ラルフ、フォローになってないぞ。

ニーナと呼ばれた魔術師はウィルと呼んだ大楯の男に怒られていた。
すると、長剣を構えたままの騎士団長が俺達に声を掛ける。

「その、すまなかった……。決して悪気があった訳では、」
「悪気があっても無くても、攻撃は攻撃だろ。」

騎士団長の声に被せ、ネロは言い放つ。

ネロとラルフは俺をかばう様にし、相手を見据えていた。

これ、端から見たら庇ってる様に見えても……。
絶対お前ら俺が攻撃しない様にしてるだけだろ!
分かってんだぞ、ちくしょー!

隙があれば、ちょっと反撃しようと考えていたのがバレていた。

一呼吸置いて、騎士団長が口を開いた。

「そうだな……申し訳無い。」

「ねぇ……君たちは、僕たちの敵なのー?」

明るい声のラルフだったが、その目は鋭く光っていた。

「いや、そんな事は」
「だったら、剣を下ろしてくれないかなー?剣を向けられるのは気分が良くないんだよねー。」

「ああ、そうだな。」

ラルフの言葉でそれぞれの武器を下ろした。

『ルディ!大丈夫そうだよ!』

ラルフは満面の笑顔で振り向き俺に声をかけた。

ラルフの新しい一面を見てしまった。
怖いよ、ラルフ。
ずっと純真無垢じゅんしんむくでいて欲しかったよ。
あの頃のラルフはどこへ行ったんだろう。

俺は遠目になりながら、成り行きを見ていると王女様が一歩前に足を踏み出す。
それに対し、俺達は警戒心を緩めずに次の行動を待った。

王女様は深々と俺達に対して頭を下げる。

「大変失礼を致しました。本日は、そちらの銀の髪と紅い瞳の方をお迎えに来ただけなのでございます。どうか、お許し下さい。」

王女様の言葉でネロとラルフの目が俺に向けられる。

そんな顔で見られても、俺も訳が分からん。

『……ルディ、何かしたのか?』

『いや、何も。』

『ルディ!前の時はー?』

『薬を渡しただけだぞ。』

『俺が見てない隙に何かしたとか。』

『今、この状態でそんな隙があったか?』

小声で三人で相談するが、答えが見つからない。

俺は仕方がないので王女様に声を掛ける事にした。

「……なぜ、俺を?」

「お告げであなた様が我が国の問題を解決して下さると聞いたからです。」

……はい?
聞いても意味分からん。

俺は、はっきり言ってリシュベル国の問題に興味も無ければ関わる気もない。

自分の国の問題は自分達で解決してくれ。
これ以上、面倒事に巻き込まれたくないっ!

「迎えの馬車をご用意しております。詳しくは馬車の中でお話したく思います。リシュベル国までは七日程かかりますので、その間にでも関係を深めたく思っております。」

王女様はゆっくりと頭を上げながら話を進めて行く。

詳しく聞いたら逃げられなくなりそうだな……。

「七日も掛からんだろ。」
「七日もかからないよー?」

返答に困っていると、ネロとラルフが声を上げた。

「そうなのか?」

「逆になんでそんなに掛かるのか不思議だよー?」

「あ、あの……馬車より早い乗り物をお持ちで……?」

二人の言葉に驚いた王女様の質問に、ネロとラルフが顔を見合わせる。

「走った方が早いな。」
「走った方が早いよー!」

「え……走る……?」

静観せいかんしていた騎士団長達まで、ざわつき始めた。

「具体的に何日位で着くんだ?」

「そうだな……」

俺の問いにネロとラルフが悩む。

「三日くらいで着くんじゃないか?」
「三日くらいで着くと思うよー!」

「それ……俺の足で考えてくれてるか?」

「ルディで考えて、だ。ルディは持久力が無いからな。」

「僕とネロだったらもう少し早くなると思うよー!」

あ、ちゃんと俺の事を考えてくれてたんだな。
くそぅ、ここで持久力か……。
瞬発力なら俺の方が勝ってるんだからな!
多分。

俺は王女様に向き直り、返事をする。

「と、言うことで、俺達は走って行くよ。目的地は〈リシュベル国〉だから、もしかしたら向こうで会うことがあるかも……。」

出来たら会いたくないけど。

「でででも!身分証が無かったら入れないよ!?サム様と一緒なら身分も保証されるし、安全に入れるよっ!!」

王女様が言葉を発する前にニーナが割り込んで来た。

「そうなのか?」

「入る前に仮発行して貰えば良いだけだ。身分証を持っている奴が側にいればすぐに発行してくれる。」

「僕もネロも身分証持ってるからね!前にお父さんと行った時に作ったんだー!!」

「……らしいから、心配はいらない。……行こう、ネロ、ラルフ。」

これでカルロスにも無視したとは言われないだろう。
別に常に行動を共にしろなんて言われてないからな。
うん、良しとしよう。

「ああああ!!待ってぇぇええぇ!!」

二人は俺の言葉に頷き、三人で走り出す。
ニーナの呼び止める声を後ろに聞きながら。

「私が攻撃しちゃったばっかりに……うわぁぁああぁん!どどどどどうしよー!?」

攻撃されてなくても一緒に行く気は無かったと思う。
俺を面倒事に巻き込むな!!

少し離れた俺達にも聞こえる、ニーナの叫びがそこにあった。


















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