異世界の親が過保護過ぎて最強
──第34話──
俺達は里から少し離れた木の上で立ち止まる。
『……いるな。』
俺が声を掛けると二人は頷いて答えてくれた。
【索敵】にはいくつもの魔物の反応が示されていた。
もうすぐ魔物達はここに辿り着くだろう。
一呼吸し、ネロが先陣を切る。
ネロはポケットから小瓶を取り出す。
魔物の先頭集団の前に液体をばら蒔くと、すぐに液体は蒸発し煙が立ち込める。
煙の中を魔物が走り抜く途中でネロは毒を追加し、ラルフも毒をばら蒔き出す。
『グルルルルルルル──ドコダ……グルルルルルルル。』
『ギャァアアァオッ!サトヲ──コワス───』
魔物の言葉の端々に聞こえる声。
────マモノヲ、カル────モノタチノ───スミカ。
────コワス───ナクス。
────ジャマナ、サトヲ───ナクス。
何かがおかしい。
ジョセフの話を聞いた時にも感じた違和感があった。
俺はその場で止めを刺さずに、魔物の声に耳を傾けながら二人の元に、毒の効果が無い場所まで魔物を蹴り飛ばす。
二人は一瞬驚いていたが、すぐに魔物の足や口を縛り、動けない様にしていた。
すると、どこからともなく里の人達が来て縛った魔物を運び出してくれた。
俺がいるから、ここで止めも刺せるんだけど……。
こんな時でも俺を神狼族として扱ってくれている様子だった。
その事に甘え、俺はひたすらに毒の効果が無い所まで魔物を投げたり蹴り飛ばしたりする。
『なぁ、ネロ、ラルフ。』
『なんだ?』
『なーにー?』
『魔物の様子が何か変じゃないか?』
『……〈闇落〉じゃないからじゃないか?』
ネロの言葉で一度考えてみる。
〈闇落〉になれば理性が無くなり、言葉を話せる魔物も話せなくなってしまう。
〈闇落〉になりたての頃は、まだ片言でも言葉を発せられるが……。
目の前にいる魔物達は言葉が話せる魔物は、ほぼ全てが片言でも言葉を発している。
と言うことは、この状態になってから、まだそんなに時間が経っていないのか、この状態が最終形態なのか。
〈闇落〉じゃ無いので正確には分からなかった。
ただ、〈闇落〉になりたての頃によく似ている。
『うーん……僕はどうして里の事を知ってるのかなーって思った!!』
『そう言や、そうだな。』
ラルフの言葉でふと気が付いた。
ネロも同じだった様だ。
里は結界が張ってあり、外から見ても分からない様になっていた筈だ。
結界の中に入れるのは、認められた者のみ。
それ以外の者は見ることも出来ない筈。
人間の国に仕事へ行っている人達も人間に紛れている様に、神狼族の存在を隠し、里の存在を知られない様にしていた。
だとしたら、なぜ?
『ルディ!避けろっ!』
考え事をしていたせいで動きが止まってしまっていた。
ネロの言葉で咄嗟にその場から飛び退くと上から魔物が降ってきた。
こん棒を持ったゴブリンだ。
地面はこん棒で抉れていた。
『バカ野郎!ぼーっとしてんじゃねえ!!』
『ごめん、ごめん。』
危なかったな……。
霧が立ち込める場所に来たゴブリンは痙攣し、膝をついた。
そのゴブリンをネロへ蹴り飛ばそうとした時。
────タスケテ。
と、声が聞こえた。
足を振りかぶっていたので、勢いが止まらずそのままネロの元へ蹴り飛ばす。
何だったんだ?
助けて……?
敵意も無い攻撃に驚いてしまったが、少しずつ違和感が形になっていく。
なぜ、敵意も無い敵にジョセフはあんなにまで怪我をしていたのか……。
敵意が無ければ攻撃はしてこないと思っていた。
現実、攻撃を仕掛けて来る魔物がいても敵意が無い。
攻撃をしようとしてるんじゃなく、縋りに来ているのか……?
俺達に助けを求めて……?
それなら敵意が無くても辻褄が合う。
小さく、耳を澄ませていなければ聞き逃す様なその声。
もう一度意識して耳を澄ませてみる。
─────ナクス─ィャ───コワス───ヤメテ。
────ジャマナ──オネガイ───サトヲ──ナクス───タスケテ。
聞こえる小さな叫び。
求める小さな声。
一体何が────。
ふと【索敵】に反応が映る。
今までの魔物と明らかに動きが違った。
『ネロ、ラルフ!ここを任せる!』
『お、おい!』
『ルディ!?』
俺は二人を残し、その反応の場所まで移動した。
後ろから驚きと困惑の声で呼ばれたが、今は気にする余裕は無かった。
この反応の仕方は
───人間だ。
なぜ人間が、今ここにいる?
その場に辿り着くと、物陰に隠れる人影が見えた。
黒いフードを目深に被り、顔ははっきりと見えなかった。
俺は短剣を握り締め、隠密の魔法を纏わせ人間との距離を詰める。
走り出した速度のまま、相手の足にツルを巻き付かせ、人間の上に覆い被さる。
俺の足で人間の上半身を固定させ、短剣を喉元に突き付けた。
「お前は誰だ。」
フードが取れ現れた顔は見覚えの無い顔だった。
人間は俺の顔を見、一瞬驚いていたが、すぐに苦痛の表情になった。
その人間に俺は【鑑定】を──
「……チッ。」
ドカァァァアアアァァァァン!
その人間は舌打ちをしたかと思うと爆発した。
『くそっ!』
俺は咄嗟に防御膜を張り、目の前に結界を作ったが、それごと吹き飛ばされてしまった。
『かはっ───』
太い一本の木にぶつかり吹き飛ばされた勢いが止まる。
肺の空気が一気に抜けたが、大怪我はしてない様だった。
息を整え、人間がいた場所へと戻るが、そこには破片しか残されていなかった。
爆発物を持っていたのか、魔力を暴走させて爆発したのか……。
俺には判断が出来なかった。
俺は周りを見渡した。
何も残っていない事を認識すると無意識に舌打ちをし、ネロとラルフの元へ戻る。
『……いるな。』
俺が声を掛けると二人は頷いて答えてくれた。
【索敵】にはいくつもの魔物の反応が示されていた。
もうすぐ魔物達はここに辿り着くだろう。
一呼吸し、ネロが先陣を切る。
ネロはポケットから小瓶を取り出す。
魔物の先頭集団の前に液体をばら蒔くと、すぐに液体は蒸発し煙が立ち込める。
煙の中を魔物が走り抜く途中でネロは毒を追加し、ラルフも毒をばら蒔き出す。
『グルルルルルルル──ドコダ……グルルルルルルル。』
『ギャァアアァオッ!サトヲ──コワス───』
魔物の言葉の端々に聞こえる声。
────マモノヲ、カル────モノタチノ───スミカ。
────コワス───ナクス。
────ジャマナ、サトヲ───ナクス。
何かがおかしい。
ジョセフの話を聞いた時にも感じた違和感があった。
俺はその場で止めを刺さずに、魔物の声に耳を傾けながら二人の元に、毒の効果が無い場所まで魔物を蹴り飛ばす。
二人は一瞬驚いていたが、すぐに魔物の足や口を縛り、動けない様にしていた。
すると、どこからともなく里の人達が来て縛った魔物を運び出してくれた。
俺がいるから、ここで止めも刺せるんだけど……。
こんな時でも俺を神狼族として扱ってくれている様子だった。
その事に甘え、俺はひたすらに毒の効果が無い所まで魔物を投げたり蹴り飛ばしたりする。
『なぁ、ネロ、ラルフ。』
『なんだ?』
『なーにー?』
『魔物の様子が何か変じゃないか?』
『……〈闇落〉じゃないからじゃないか?』
ネロの言葉で一度考えてみる。
〈闇落〉になれば理性が無くなり、言葉を話せる魔物も話せなくなってしまう。
〈闇落〉になりたての頃は、まだ片言でも言葉を発せられるが……。
目の前にいる魔物達は言葉が話せる魔物は、ほぼ全てが片言でも言葉を発している。
と言うことは、この状態になってから、まだそんなに時間が経っていないのか、この状態が最終形態なのか。
〈闇落〉じゃ無いので正確には分からなかった。
ただ、〈闇落〉になりたての頃によく似ている。
『うーん……僕はどうして里の事を知ってるのかなーって思った!!』
『そう言や、そうだな。』
ラルフの言葉でふと気が付いた。
ネロも同じだった様だ。
里は結界が張ってあり、外から見ても分からない様になっていた筈だ。
結界の中に入れるのは、認められた者のみ。
それ以外の者は見ることも出来ない筈。
人間の国に仕事へ行っている人達も人間に紛れている様に、神狼族の存在を隠し、里の存在を知られない様にしていた。
だとしたら、なぜ?
『ルディ!避けろっ!』
考え事をしていたせいで動きが止まってしまっていた。
ネロの言葉で咄嗟にその場から飛び退くと上から魔物が降ってきた。
こん棒を持ったゴブリンだ。
地面はこん棒で抉れていた。
『バカ野郎!ぼーっとしてんじゃねえ!!』
『ごめん、ごめん。』
危なかったな……。
霧が立ち込める場所に来たゴブリンは痙攣し、膝をついた。
そのゴブリンをネロへ蹴り飛ばそうとした時。
────タスケテ。
と、声が聞こえた。
足を振りかぶっていたので、勢いが止まらずそのままネロの元へ蹴り飛ばす。
何だったんだ?
助けて……?
敵意も無い攻撃に驚いてしまったが、少しずつ違和感が形になっていく。
なぜ、敵意も無い敵にジョセフはあんなにまで怪我をしていたのか……。
敵意が無ければ攻撃はしてこないと思っていた。
現実、攻撃を仕掛けて来る魔物がいても敵意が無い。
攻撃をしようとしてるんじゃなく、縋りに来ているのか……?
俺達に助けを求めて……?
それなら敵意が無くても辻褄が合う。
小さく、耳を澄ませていなければ聞き逃す様なその声。
もう一度意識して耳を澄ませてみる。
─────ナクス─ィャ───コワス───ヤメテ。
────ジャマナ──オネガイ───サトヲ──ナクス───タスケテ。
聞こえる小さな叫び。
求める小さな声。
一体何が────。
ふと【索敵】に反応が映る。
今までの魔物と明らかに動きが違った。
『ネロ、ラルフ!ここを任せる!』
『お、おい!』
『ルディ!?』
俺は二人を残し、その反応の場所まで移動した。
後ろから驚きと困惑の声で呼ばれたが、今は気にする余裕は無かった。
この反応の仕方は
───人間だ。
なぜ人間が、今ここにいる?
その場に辿り着くと、物陰に隠れる人影が見えた。
黒いフードを目深に被り、顔ははっきりと見えなかった。
俺は短剣を握り締め、隠密の魔法を纏わせ人間との距離を詰める。
走り出した速度のまま、相手の足にツルを巻き付かせ、人間の上に覆い被さる。
俺の足で人間の上半身を固定させ、短剣を喉元に突き付けた。
「お前は誰だ。」
フードが取れ現れた顔は見覚えの無い顔だった。
人間は俺の顔を見、一瞬驚いていたが、すぐに苦痛の表情になった。
その人間に俺は【鑑定】を──
「……チッ。」
ドカァァァアアアァァァァン!
その人間は舌打ちをしたかと思うと爆発した。
『くそっ!』
俺は咄嗟に防御膜を張り、目の前に結界を作ったが、それごと吹き飛ばされてしまった。
『かはっ───』
太い一本の木にぶつかり吹き飛ばされた勢いが止まる。
肺の空気が一気に抜けたが、大怪我はしてない様だった。
息を整え、人間がいた場所へと戻るが、そこには破片しか残されていなかった。
爆発物を持っていたのか、魔力を暴走させて爆発したのか……。
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