異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第27話──

ラルフは土煙が収まる前から俺の方を見ていた。

『あ!ルディ!ルディも遊ぶ?』

ラルフ……俺が気配を消してる理由を察してくれ。

俺が気配を消していても何故かラルフには見つかってしまう。
もっと上手く使える様にならないとな。

人間達の意識もこちらに向かっているので、諦めて降りる事にした。

人間達から少し離れ、ラルフの正面に着地する。
端から見れば三つ巴状態。
戦闘意識があるのは人間だけなんだけど。

「なっ!どこから現れたっ!」
「何で子供がこんな所にいるんだ!?」
「君、危ないよっ!こっちにおいで!」
「まさか……〈神の子〉……?」

この人達賑やかだな。

すると一人の女性がこちらに駆け寄ろうとしてくる。
向こうに敵意が無かったので、意識を女性に向け土魔法で尖った槍を地面から生やし女性を制止する。
だけど、こちらを油断させようとしているのかも知れないので注意しておいた方が良いだろう。

「うわっ!危なっ!」

「大丈夫か!?」

「敵意は無い様だが……」

「……今は近付かない方が懸命かもしれませんね。」

俺は視線を女性からラルフに向ける。
意識は人間達の方に向けたままだが。

『……ラルフ。何してるんだ?』

『えっとね、さっきまで追いかけっこしてたの!色々と飛ばしてくるから、それを避けながら追いかけっこしてた!』

『それ、攻撃されてんじゃ……?』

『えぇ!?そうなの!?全然気付かなかったー!!当たっても痛く無かったから、ルディみたいに遊んでくれるんだって思ったよ!!』

『気付けよ!バカ!!』

『えぇー……人間って弱いんだね……ルディしか知らないから分からなかったよ。ルディの攻撃はいつも痛いから。』

『それでも手加減してる。ラルフの攻撃の方が強いじゃん。何回腕をもぎ取られたか……』

『でも、ルディは【治癒】が使えるから大丈夫だもんね!』

『使えなかったらどーすんだよっ!』

俺とラルフが言い争っていると、人間達から「銀狼と喋ってる……」とざわざわしていた。

『はぁ……それで?何でラルフは毒状態になってんの?』

『え!?毒!?あれかなー?弓が当たった時?それとも魔法が当たった時かな?どうりで頭がふわふわすると思ってたよー!』

毒状態だから余計に正常な判断がしにくくなっていたのかな。
ラルフが攻撃を受けている以上、相手に敵意があるから殺しても大丈夫なんだろうけど……。

つか、ラルフを攻撃したヤツは誰だよ。
俺が殺してやりてぇ。

仲間を傷つけられて冷静でいられる程出来た人間じゃないからな、俺は。
俺には神狼族の役目には当てはまらないし。
俺は、人間族だからね。

『とりあえず、解毒しろよ。』

『うん!ルディおねがーい!』

『……たくっ。』

ラルフに治癒をかけようと思ったが、近くには人間がいる。
少し考え、ポケットから解毒薬を出すフリをして、小瓶の中身の液体を球体にし、ラルフの口まで投げ飛ばす。
ラルフはそれをパクっと食べた後、舌を出していた。

『うぇぇ……にがーい……』

『勝手に行動してた罰だ。有り難く受け取っとけ。』

『ルディのいじわるー!』

『何とでも言え。イリーナおばさんに『ラルフが人間相手に余計な事してた』って告げ口するぞ。』

『えぇ!?遊んでただけなのに!?』

『その遊びが問題なんだって……』

『うぅ……そーなの?』

『そーなの。ほら、さっさと向こう行け。後は俺がやっとくから。』

『ルディは一緒に来ないのー?』

『すぐに行く。ラルフの尻拭いをするんだ、感謝しろよ?』

『あはははは!分かったー!先に向こう行ってるね!』

ラルフと軽口を叩き終わると、ラルフは森の奥へと走って行った。

「銀狼が帰っていった……」
「なななななんで!?」
「何がどーなってやがる……」

ラルフが消えた事を確認すると、俺は警戒したまま人間達の方へ向き直る。

「あ、あの……?」

一人の女性がビクビクとしながら声を掛けて来た。

「助けて頂き、ありがとうございます。」

その女性に対し俺は目を細める。
女性を庇うかのように一人が剣をこちらに向けたままだったし、杖を握りしめた人も同様。
重症の人を抱えた男性もこちらを警戒している。

ま、当たり前か。

俺も俺で警戒を止めていない。
しばらく沈黙が流れ、俺の言葉を待っている様だった。

何と言おうか……

「…………すぐに、帰れ。」

この言葉に尽きるな。
この森でそのレベルだとすぐに死ぬ。
別に俺には関係無いが。

「話せるのか…………!?…………子供がなぜここにいる?」

剣を構えている男性が声をかけてきた。

「……お前に、関係あるか?」

「いや……すまない。忘れてくれ。」

俺の不機嫌を読み取ったのか、すぐに謝罪してきた。

ちゃんと俺は成人してるんだからなっ!!
見た目が子供に見えても精神は大人のつもりだから!

このまま、この人達が野垂れ死んでも俺には関係無いが、ラルフが万が一神狼族の役目に反する事になってしまったら、俺は自分を許せなくなってしまうだろう。

仕方がなく様々な種類の回復薬をポケットから出したフリをし、相手に投げ渡す。
絶対ポケットに入る様な量じゃないけど、気にしない。

「こ、これは……回復薬……?」

受け取った剣の男性は驚いた顔をしていた。
ピンクにブルー、グリーンと色によって効能が変わるので見ただけでどの薬かは分かるだろう。

「お、おい!薬をそいつに飲ませろ!」

「なっ!信用して良いのか!?」

「向こうは銀狼を遠ざけてくれたんだ。信用してみよう。」

「くそ!これでコイツが死んだら恨むぜ!?」

「ああ。」

男性二人が言い争っていたが、重症の人に薬を飲ませ始めた。
色々な種類を片っ端から。

うぇー。
あれ、絶対口の中地獄だろうな。

薬を飲み終えると、重症だった人の傷はみるみる内に回復し、顔色も良くなっていった。
人間達は歓喜の表情を浮かべていた。
他の人達の分の回復薬も残っていそうなので、後は大丈夫だろう。

これ以上、ここには用は無い。

「……さっさと、帰れ。もう、二度と来るな。」

それだけ言い残し俺はその場から離れた。
呼び止められる声がしたが、振り向く気も無い。

『ルディー!まだぁー??』

『今行くー!』

そして、ラルフの声の元まで走る。












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