異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第21話──

光の珠は猛スピードで来たかと思うとライアの目の前で止まり、何やらライアと言い争っているみたいだ。

光の珠の方の声は聞こえないので、ライアが一人で言葉を話している様に見える。

ロナとメリルは現状を受け止めきれずに放心していた。

『ねえ、今どうなってるの?』

『…………レオナルド、激おこ。』

『凄く怒っていますね。言葉遣いもいつもより悪いですわ。』

『…………寝起き、だから……しょうがない。』

『そうですわね。寝起きが悪いですものね。』

『母さん大丈夫かな?』

『心配しなくても大丈夫ですわよ。』

『…………いつもの、事。』

『そっか……。』

そっかー。
いつもの事かー。
涙目になっているライアがいつもの事なのか。
それとも、この惨状がいつもの事なのか。
聞くのが怖くて聞けない。

『あら、ライアがレオナルドに『ルディに加護を~』って話になりましたわね。』

『…………レオナルド、加護…………渡す、みたい?』

何か聞いてる限り凄く怒ってて怖いイメージなんだけど!
今、この状態で加護はいらないかな!?

『え、別にいらな…………。』

《【火の大精霊の加護】を取得しました。》

来ちゃったよ!!
俺の意思に関係なく来ちゃったよ!!
もういらないって言えないじゃん!!

『よぉ、お前がルディか?』

『う、うん……。』

威圧的な態度で目付きの悪い赤髪の男性が俺を見下ろして来た。

怖い!
蛇に睨まれた蛙所じゃない位怖いっ!!

『オレはレオナルド=ギデオン。火の大精霊だ。ところでよぉ、何でライアを止めなかったんだ?こっちはゆっくり休んでたのによ。』

『ロナ姉さんとメリル姉さんが止めようとしたんだけど、止められなかったんだ。』

『そうですわよ?ルディ君は悪くありませんわ!』

リアム、庇ってくれてありがとう。
涙が出ちゃう。
我慢するけど。

『ふ~ん……ん?……『姉さん』?何でロナとメリルを『姉さん』って呼んでるんだ?』

『えっと……そう呼んでって言われたから……』

としか言い様がない!!
俺が呼びたいって言い出した事じゃないから!

『ふ~ん……。ルディは、後誰の加護を持ってる?』

『え……?えっと、サンルーク兄さんとノア姉さんとリアム姉さん……かな?』

『ははははは!!イーサン以外の全員持ってやがるのか!そりゃ、面白ぇ!!』

先程の不機嫌さは鳴りを潜め、豪快に笑い出した。

良かった!
機嫌悪くないみたい。
何が面白いのかは分からないけど、とにかく良かった!!

『じゃ、オレの事は『兄さん』だな!』

『……え?』

そうなるん……ですかね??

『なんだぁ?オレの事はそう呼べねぇってか?』

威圧しないで下さいっ!!
顔が怖いからっ!

『えと……レオナルド兄さん……?』

『ははははは!!良いねぇ、気に入った!!』

気に入られた!?
なぜに!?

『そぃじゃぁ、火の魔法使ってみっか?』

『……えと。うん、お願いします。』

俺が言葉を発しても、レオナルドはじーっと俺の事を見ていた。

なんで!?
言葉が変だった!?

『宜しくお願いします……?』

『……はぁ。』

えぇ!?
違うの!?
正解があるの!?

『…………ちゃんと、『兄さん』……て、呼ぶ。』

こそっとノアが俺に耳打ちしてくる。

そんなに重要なワードなの!?
どんなけ兄弟に餓えてんの!?

『……レオナルド兄さん、お願いします。』

『おう!』

……めんどくせぇ!!

『ルディは他の魔法は使えるんだよな?なら、まず指先に火を灯してみろ。』

言われるがまま、ライターをイメージして指先に火を出した。

『へぇ……。飲み込みが早ぇな。なら今度は手の平全体で出してみろ。』

『こう……かな?』

火の玉をイメージして手の平に炎を出すと、レオナルドは嬉しそうに笑い肩をバシバシと叩いてきた。

力強いよ!
痛いって!

『良いねぇ。ならそれを飛ばすイメージに変えて、あそこに飛ばしてみな!』

指の先は例の残りカス。

失敗したら、ライアみたいに怒られたりしない?
大丈夫??
失敗しても怒らないでね!!

少し集中して火の玉を飛ばすと中心からはズレたが、的が大きかったので徐々に火が燃え移り、やがて全てを燃やしていく。

『やった!出来たっ!』

喜びのあまり声に出しガッツポーズをしていると、レオナルドに頭をガシガシと撫でられた。

『ルディは筋が良いねぇ。寝ているよりも面白そうだ。これからも教えてやるよ!』

『あ、ありがとう。』

レオナルドは俺の頭から手を離し、未だに放心している二人に顔を向ける。

『おい!いつまでそうしてんだ!さっさと後片付けしろよ!』

『だって……ライアが……ライアがぁ……。』

『ボク達が育てた場所を一瞬で~……。』

今にも泣き出しそうな……と言うか泣きながら二人は訴えていた。

『ほら!さっさと行きやがれっ!!』

レオナルドは二人を蹴り飛ばし、あの惨状の方へやる。
痛がる様子もなく、諦めて二人は惨状現場へトボトボと歩いて行った。

『ロナもメリルも大変ですわねぇ。』

『……ん。可哀想。』

…………ノアさん?
元凶は貴女ですよね!?
すっごく他人事にしてるけど!!

俺は、哀愁漂う二人の背中を見えなくなるまで見送った。













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