異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第14話──

『ただいまー。』

俺は大きな木の下で声をあげる。

すると、家の扉が開きライアが降りてくる。

『おかえり、ルディ。今日は早いの。』

優しく出迎えてくれたライアに持ち上げられ、家の中へ入っていく。

椅子に座り、ライアが入れてくれた飲み物を飲みながら今日あったことを話す。

『それで、おれ、まほうをつかいたい!』

『そうじゃの……だが、妾はあまり得意ではないから教えられるかどうか……』

部屋の奥からカインもやってきて『どうした?』と聞くので、ライアが事のあらましを説明する。

『そうだな。ライアが魔法を教わっていた方に頼めるのであれば一番なんだが……難しいだろうしな。』

『!!そうじゃなっ!今度ルディと会いに行ってみるかの。ルディを紹介してやりたいのだ!』

『…………大丈夫なのか?』

ちょっと待て。
カインが提案したのに、何故不安になってるんだ。

『大丈夫なのだ!邪険には扱いまい。』

『それはそうだろうが……失礼の無いようにするんだぞ。』

『なっ!妾は子供ではないぞ!』

『…………昔の様に困らせ無いようにしてくれ。』

『っ!!それは昔の話じゃろう!今は大丈夫……なはずなのだ、多分…』

ライアさん、どんどん自信無くなってませんかね?

苦笑するカインに、少しむくれているライア。
そして、近い内にライアに魔法を教えていた先生に会いに行く事に決まった。

ライアの魔法の先生って一体どんな人なんだろう。



それから数日後。

俺とライアは深淵しんえんの森に来ていた。
だけど、今回の目的は魔物を倒す事では無い様で、魔物のいない道を選び歩いている。

最初は魔物に出会っていたが、ライアが『ここら辺で良いかの。』と呟いた後は魔物に出会っていない。

何か魔法でも使ったのかな。
敵を寄せ付けないやつとか。

道の無い道を歩いていく。

俺なら迷子になるな。

目印も何も無く、同じ様に見える風景の中をひたすら歩く。

突如、光が射し込み拓けた場所に出た。

大きな湖があり、色々な木や草、そして花が咲いている。
たくさんの色があるが、それが一枚の絵に見える程の綺麗な場所だった。

『本当はルディをもっと早く連れて来たかったのじゃが……』

『……?どうしたの?』

『カインにも内緒で準備しとったからの。……この場所に入るには許可を貰わねばならんかったのだ。』

照れ臭そうに微笑み、ライアは湖へと目をやる。
それに、つられる様に俺も湖へと目をやると、何処どこからともなく光が溢れ人型になっていく。

『やぁ、ライア=ギルバート。ルディ=ギルバートはぁ、加護を与えた日以来だねぇ。』

そこにはサンルークの姿があった。

え、なんでいるの?
あの神殿みたいな所じゃないのに。

『ライア=ギルバートぉ。君はまたぁ、説明するのを忘れたねぇ?』

呆れながらライアを見るサンルークに対し、ライアは目を合わせなかった。

『ち、ちゃんと説明はしたぞ!?』

いや、聞いてないんだけど。

『……うん。どういう説明をしたのかなぁ?』

『妾が魔法を教わった方に会いに行くと説明をしたのだ!』

『………………。それぇ、説明不足じゃぁないかなぁ……。』

ほんとそれ。
魔法の先生=大精霊
って誰が思う!?
大精霊に魔法を教わっていたライアって何者!?
それに、今日行くって言ってなくない!?

もう、どこから突っ込んだら良いんだろ……。

『……じゃぁ、ライア=ギルバートに変わって説明するねぇ。』

お願いします。

俺がこくりと頷くと、少し疲れた顔をしたサンルークがにこりと微笑みかけてくる。

眩しい。

此処ここはぁ、〈精霊の泉〉だよぉ。此処ここにあって此処には無い場所でぇ、此処に無くて此処にある場所なんだぁ。』

…………。

……………………。

………………………………意味わからん。

有るけど無い?
無いけど有る?
なにその真理みたいなの。

『そしてここはぁ、母様かあさまが認めた者しか入れないんだぁ。……簡単に言うとぉ、誰でも入れる場所じゃぁ無いって事だねぇ。』

そんな所に入れるってライアは一体なんなんだろう。

あれ?
でも、何で俺も入れてるの?? 

俺の疑問を感じとった様子でサンルークが説明をしてくれる。

『君がぁ、此処に入れたのはぁ……ライア=ギルバートが母様に直談判したからだねぇ。』

ちょ!
なにやってんすか!ライアさん!!

『ミアは快く受け入れてくれたぞ?』

『そうだねぇ。母様もこの子には興味を持っていたみたいだしねぇ。』

なぜ、サンルークの母親に興味を持たれてるんだろう……。
俺、特に変わった事してないはずなんだけどなぁ。

その前に……

『かあさんは、なんで、はいれるの?』

俺の素朴な疑問を投げ掛けた。

ライアは気まずそうに何処ともなく目をやり、サンルークは当時を思い出してるのか遠い目をしていた。

『ライア=ギルバートはねぇ……当時は好奇心旺盛でねぇ、大精霊がいるとされている場所を片っ端からぁ……』

『サンルーク!!それは若気の至りじゃっ!!ルディに聞かすのは止めておくれっ!!』

サンルークの説明をライアが必死に止めている。

一体何をしたんだ。

『……それはそうとぉ、二人は何しに来たのぉ?僕はぁ、母様から二人が来る事しかぁ聞いてないんだぁ。』

『魔法を教わりに来たのだ!』

『…………また、地形を変えるつもりぃ?後処理でぇ、メリルとロナがぁ大変だったんだけどぉ……』

『そ、それは昔の話ではないかっ!』

『僕達にとってはぁ、時間の概念が無いからねぇ……昔と言われればぁ昔だしぃ、最近と言われればぁ最近なんだよぉ?』

『うぐっ……こ、今回は違うのだぞ!ルディに魔法を教えて欲しいのだ!妾では教えられる自信がないからの……』

『そっかぁ。ライア=ギルバートが教えてぇ、魔力調整が出来なくなってぇ、地形を変える魔法しか出来なかったら大変だもんねぇ?……ちゃんと約束守ってるぅ?』

サンルークさん、何か怖い。
言葉にトゲがあるよ!

『他に影響の与える魔法や攻撃魔法をしない事かの?ちゃんと守っておるぞ!』

天変地異を止めたのはこの人か!
さすがっ。

『なら良いよぉ。』

自信満々に胸をはるライアに、にこやかに微笑むサンルーク。

ライアに至っては威張る様な事じゃないと思うんだけどな。














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