異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第12話──

それから早いもので一年たった。

一年の間、ラルフと遊んだり、ライアに連れられ深淵の森に行ったり、カインに短剣を教わったり……

家にいる時は短剣で遊んでいる。
前に教わったペン回しみたいなやつ。

変わった事と言えば、レベルが200を越えた辺りで上がりにくくなっている事。

それから、カインは短剣だけじゃなく体術も教えてくれる様になった事かな。

体術は最初は攻撃ではなく、防御と回避を教わっている。

俺にとっては滅茶苦茶必要な事なので何度も練習を繰り返して身体に染み込ませている。

生き残る為にも必要だしね。

ライアにずっとおんぶに抱っこ状態のレベル上げはそろそろ終わらせたい。

なんというか、俺の矜持プライド的に……

俺がちゃんと戦えたら安心してくれるだろう。

本当は戦いたくは無いんだけどな。

この世界がそういう世界なら、いつまでも現実逃避せずに受け入れて行かないといけないよな……

郷に入っては郷に従えと言うし。

気持ちを切り替えてからは、戦闘にも前向きになったと思う。

怖い時は怖いけど。

もう1つ変わった事と言えば、カインに短剣や体術を教えてもらっている時に、ジョセフも加わる様になった事だ。

ジョセフはイリーナの旦那。
つまり、ラルフの父親になる。

ジョセフとカインの三人でする事もあれば、ジョセフと二人の時もある。
たまに、ラルフの乱入。

カインとライアは里の中は安心している様で、側にいない時も増えた。
何か企んでる様な感じがしているが、気のせいだろう。

そして、今はジョセフに体術を教わっている。

ジョセフはがっしりとした体格に口元に髭を生やしている。
その顔にケモミミ付き。

人間の姿が怖くないとライアとカインに説明したんだが……
『気を使う必要はないぞ。』と言われ、今は里の全員がケモミミ付きになっている。
長老の命令で。

もう否定しても聞いてくれないので、そのままにする事にした。

『ほら!ルディ、ぼーっとしてると当たるぞ?』

ジョセフの左手が下から上へと来る攻撃に身体を反らしその場から飛び退く。
追撃の右手の拳を左に避けると今度は腹に蹴りを入れられそうになったので両手で防御する。

『こうげきが、はやい、です!』

『がはは!これでも遅いくらいなんだぜ?』

結構早いと思うんだけど。
目で追えない時があるし。
四歳の子供にやらせる内容じゃないし!

目で追えない攻撃は身体に染み込ませた防御を条件反射の様に出せるまでになった。

それを見越して、ジョセフはギリギリの攻撃をしてくるから凄い人なんだと思う。

子供相手に容赦ないよな……
スパルタ教育だ。
児童相談所に相談する案件だぞ。
……児童相談所無いけどなっ!!くそぅ!!

当たれば痛い。
今後、命の危機がこれで遠避けられるんなら頑張ろう。

ジョセフの攻撃を避けては防御をしていると遠くから声が聞こえてくる。

『ルディー!!』

ラルフの声だが、今ジョセフから意識を反らすと痛い攻撃が来るので、ジョセフの方に集中する。

ジョセフから左手で攻撃を仕掛けて来た。
それを避けようと右へ飛ぶ。

────どんっ!!

右脇腹に衝撃が来る。

『──ぐはっ!』

え、なんで?

ジョセフは左から攻撃してきたはず。
フェイントをかけられた……?

考えながら右脇腹を見るとラルフが抱き付いていた。

お前か。
犯人はお前なのか。
そら、避けらんないわ。

『がはは!不意討ちでやられたなっ!俺ばかりに集中してるからだぞ。もっと周りをみるんだな!』

大声でジョセフは笑いながら正論をぶつけてくる。

ジョセフの攻撃を避けるので一杯一杯なんですけど!?

言っている事が正しいのは理解しているので、文句も言えない。

くそぉ……ラルフめ。

『ルディ!あそぼっ!』

『え、いや、おれは……』

ちらっとジョセフを見ると、手をひらひらとさせている。

『子供は遊ぶのも仕事だ!思う存分遊びなっ!!』

がはは、と盛大に笑いながら広間にある大きな岩の上に腰掛けた。
そしてそのまま目を瞑る。

おい、保護者。
子供をほったらかしにして寝るんじゃない。

『ルディ!なにする?なにする?』

『そうだな……いつもの、する?』

『うん!やろう!!』

二人でいつもしている遊びは、広間の範囲内での鬼ごっこ。
相手に触ったら攻守交代。

最近、ラルフも俺も身体能力が上がってきたので以前に比べ、接近されても避けたり、避けられたり。

レベルが上がったお陰か体力も付き、息切れもあまりしにくくなった。

ラルフは体力バカだから付き合ってる内に息切れするんだけどな。

その内、絶対にラルフが息切れするまでやってやる。

その為には自分の体力もつけないとな。

レベルが上がれば体力もつくが、日々鍛練をする事によっても上がるらしい。
体力以外のものでも。
と、カインからも聞いている。

『ルディ!よけるのだめー!!』

『よけてもいいルールだろ!』

ラルフが狼の姿になって突進してきたのでそれを避けたら怒られた。

なぜだ。

『まてー!!』

『ちょ!それは、なしだろ!!』

大きく口を開き噛みつこうとしてきた。

遊びに夢中になりすぎると怪我をする様な攻撃を仕掛けてくるのはどうにかしてほしい。

『だって、ルディがにげるからっ!!』

『そういう、あそびだろ!つめをだすな!』

冗談抜きでやめてほしい。

遊びの範疇を越えてるから!

『とりゃーー!!』

トグォッと鈍い音を出しながらラルフと正面衝突した。

『つかまえたー!』

『つかまった。』

最後の攻撃は見えなかった。

残像が見えたぞ。
速すぎだろ。

俺が短剣や体術を練習しているのを見て、ラルフも一緒になってやる事もあるからな……

それなりにラルフも強くなってるんだと思う。

負けてられないな。

俺が仰向けになり、その上に狼ラルフが乗って尻尾を機嫌良く振っている。

重い。

『はっ。人間が神狼族に勝てる訳無いだろ。さっさと人間の所に帰りな。』

頭の上から声が聞こえる。

視線を上に向けると、十五歳位のケモミミ少年が木の上に座っていた。













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