異世界の親が過保護過ぎて最強
──第11話──
家に帰って来た俺は疲れきっていた。
だってさ、ライアが色々な魔物の所に飛び込んでいくんだもん。
その魔物を倒しながら解説もしてくれるんだけど。
覚えられん。
殺意溢れる魔物を目の前にして説明されても、頭に入らないよ。
それに、逃げようとしても、深淵の森にいる間ずっと抱えられてて離れる事も逃げる事も出来なかったし。
疲れきった身体をベットに投げ出す。
『ルディ、疲れているな。』
にこやかに笑いながらカインが俺の頭に手を乗せる。
『うん……かあさんのテンションがあがりすぎて。』
あの日から俺は『父さん』『母さん』と呼ぶようになった。
呼ばなかったら悲しそうな顔をするからさ。
そんな顔をさせる位なら呼ぶよ、そりゃ。
深淵の森でのライアは丁寧に解説してくれるし、素直に凄いなーって最初は思ってた。
それを言葉にしたのが間違いだったんだと思う。
俺が『かあさん、つよい……』と言うと嬉々として魔物を狩りだした。
移動スピードを上げて、俺に一撃入れさすのも忘れて……
もう、目の前に出てきた魔物に対して悲鳴を上げる間もなく倒された時は呆然とするしかなかった。
最後の方は、俺はいなくても良くね?
て、感じで、目の前で倒されていく魔物をずっと見ているだけだった。
さながら、体験型スプラッター映画。
蒸せ返る血の匂いと暖かい液体が身体につく感触を味わえるのって凄い技術だよなー。
もはや、ライアは戦闘狂になってたと思う。
現実味がなくて現実逃避をずっとしていたが、精神的に凄く疲れた。
その事を掻い摘んでカインに説明する。
『それは大変だったな。』
笑いながら労ってくれる。
本当に大変だったよ。
途中から慣れてきてる自分が嫌になるくらいに。
『そうだ、ルディ。4日後、短剣の使い方を教えてやろう。とは言っても父さんの我流だけどな。』
自衛の為に確かに使える方が良いよな。
いきなり魔物に襲われて、ただの餌になるのは嫌だし。
『うん、おねがい。』
満足気にカインは頷くと、『おやすみ』と言って出ていった。
死にたくはないけど、あんな魔物を前にして冷静に対処出来るか不安に思いながら眠りについた。
☆
四日後、カインと俺は里の広間にいた。
一番広い場所がここらしい。
ほとんどの家は木の上にあるので、庭は無いからだ。
『さて、ルディ。ルディはいつも、どの様に短剣を握っている?』
『こう、かな。』
ライアと一緒に深淵の森に行く以外に持っていないので、両手で握り締め前に突き出す。
『ふむ。長剣等であれば、その様な構え方になるだろうな。なぜ、父さんが短剣を選んだか分かるか?』
カインがお揃いの武器を持たせたかったとか?
でも、この聞き方だとそれだけじゃ無い様な気がするな……
考えても分からなかったので、首を横に振る。
『まず、今のルディでは筋力が無く、長剣を扱うには不向きだと思ったからだ。短剣であればルディも片手で持てるし、小回りが効く。致命傷は与えられぬかもしれんが、目を潰したり腱を切る事により動きを鈍らす事が出来るぞ。』
えーと……。
あのね?
簡単そうに言うけど結構難易度高くない?
攻撃を避けられ無かったらどうすんの!
カインが言ってるのは近距離戦だよね!?
『あ、あの。とうさん……』
『では、始めるか!』
駄目だ。
もう俺の声は届かない。
『……オネガイシマス。』
俺の返事を聞き、満足そうに頷くと木で出来た短剣を渡される。
安全面を考慮したんだろう。
いつの間に用意してたのか……。
『まずは持ち方だな。持ちやすい方の手で握ってみろ。』
俺は一度頷き、右手に短剣を持ち、刃をカインの方へ向ける。
『それが、順手だ。基本的な持ち方でもある。次は逆に持ってみろ。』
逆?
逆ってなると……
右手に持った短剣を左手に持ってみる。
『あ~……そうではなく、右手に持ったまま、刃を自分の方にむけるのだ。』
なるほど。
今度は右手に持ち、刃を自分の方に向ける。
『それが、逆手だ。順手だと、短剣の可動域が少なく、逆手だと可動域が順手に比べ大きくなる。』
可動域……?
『どういうこと?』
『そうだな……。見本を見せるか。』
そう言うと、カインは俺と似ている短剣を持ち、順手で手首だけを動かす。
それから短剣を逆手に持ち、手首を動かす。
『……?』
『まぁ、多少の違いしかないがな。この少しの違いを理解しているだけでも戦いの中では重要になる。』
戦いかー。
戦いねー。
……避けられないかなー。
『それと、2つの持ち方に慣れておけば……』
ヒュンヒュンと風を切り裂く音が聞こえる。
『こういう使い方も出来る。』
うん、全然見えませんでした。
何したんだ。
『……?』
困惑している俺を見て、『今度はゆっくりとする』と苦笑を浮かべながらカインはもう一度構える。
順手で持った短剣を大きく下から上へと振り上げ、その勢いのまま逆手に持ち替え横一直線に振ったかと思うと、また順手に持ち替え上へと振り上げ逆手に持ち替え突き刺す様にしてカインの動きは止まった。
すげー。
流れる動きで短剣が宙を舞っている様に見えていた。
その光景に思わず拍手する。
『すごい!』
『ま、まぁルディも出来る様になるぞ。』
照れ臭そうに頬を染めていた。
俺には出来る気がしねぇ。
『むり、だよ。できない。』
『最初から諦めていては駄目だぞ。ちゃんと父さんが教えるから大丈夫だ。』
大きな手を俺の頭に乗せ、笑顔をくれる。
うーん。
カインがそう言うなら、やるだけやってみるか。
『次は、短剣の扱いにも慣れないといけないから、日常的にも出来る方法を教えてやろう。』
え、なに、日常的に短剣を振り回すの?
『こうして、短剣を回したり……』
順手、逆手と持ち直すが、時計回りに回したり反時計回りにしたり。
次は上に投げては柄を握る様にしたりと、短剣を玩具の様に扱っていた。
それを見よう見まねでしてみるが、思う様に手が動かず、すぐに落としてしまう。
ペン回しを練習した時の感覚に似てるな。
初めてペン回しが出来た時は嬉しかったな。
そう思いながら、短剣を落とし続けた。
だってさ、ライアが色々な魔物の所に飛び込んでいくんだもん。
その魔物を倒しながら解説もしてくれるんだけど。
覚えられん。
殺意溢れる魔物を目の前にして説明されても、頭に入らないよ。
それに、逃げようとしても、深淵の森にいる間ずっと抱えられてて離れる事も逃げる事も出来なかったし。
疲れきった身体をベットに投げ出す。
『ルディ、疲れているな。』
にこやかに笑いながらカインが俺の頭に手を乗せる。
『うん……かあさんのテンションがあがりすぎて。』
あの日から俺は『父さん』『母さん』と呼ぶようになった。
呼ばなかったら悲しそうな顔をするからさ。
そんな顔をさせる位なら呼ぶよ、そりゃ。
深淵の森でのライアは丁寧に解説してくれるし、素直に凄いなーって最初は思ってた。
それを言葉にしたのが間違いだったんだと思う。
俺が『かあさん、つよい……』と言うと嬉々として魔物を狩りだした。
移動スピードを上げて、俺に一撃入れさすのも忘れて……
もう、目の前に出てきた魔物に対して悲鳴を上げる間もなく倒された時は呆然とするしかなかった。
最後の方は、俺はいなくても良くね?
て、感じで、目の前で倒されていく魔物をずっと見ているだけだった。
さながら、体験型スプラッター映画。
蒸せ返る血の匂いと暖かい液体が身体につく感触を味わえるのって凄い技術だよなー。
もはや、ライアは戦闘狂になってたと思う。
現実味がなくて現実逃避をずっとしていたが、精神的に凄く疲れた。
その事を掻い摘んでカインに説明する。
『それは大変だったな。』
笑いながら労ってくれる。
本当に大変だったよ。
途中から慣れてきてる自分が嫌になるくらいに。
『そうだ、ルディ。4日後、短剣の使い方を教えてやろう。とは言っても父さんの我流だけどな。』
自衛の為に確かに使える方が良いよな。
いきなり魔物に襲われて、ただの餌になるのは嫌だし。
『うん、おねがい。』
満足気にカインは頷くと、『おやすみ』と言って出ていった。
死にたくはないけど、あんな魔物を前にして冷静に対処出来るか不安に思いながら眠りについた。
☆
四日後、カインと俺は里の広間にいた。
一番広い場所がここらしい。
ほとんどの家は木の上にあるので、庭は無いからだ。
『さて、ルディ。ルディはいつも、どの様に短剣を握っている?』
『こう、かな。』
ライアと一緒に深淵の森に行く以外に持っていないので、両手で握り締め前に突き出す。
『ふむ。長剣等であれば、その様な構え方になるだろうな。なぜ、父さんが短剣を選んだか分かるか?』
カインがお揃いの武器を持たせたかったとか?
でも、この聞き方だとそれだけじゃ無い様な気がするな……
考えても分からなかったので、首を横に振る。
『まず、今のルディでは筋力が無く、長剣を扱うには不向きだと思ったからだ。短剣であればルディも片手で持てるし、小回りが効く。致命傷は与えられぬかもしれんが、目を潰したり腱を切る事により動きを鈍らす事が出来るぞ。』
えーと……。
あのね?
簡単そうに言うけど結構難易度高くない?
攻撃を避けられ無かったらどうすんの!
カインが言ってるのは近距離戦だよね!?
『あ、あの。とうさん……』
『では、始めるか!』
駄目だ。
もう俺の声は届かない。
『……オネガイシマス。』
俺の返事を聞き、満足そうに頷くと木で出来た短剣を渡される。
安全面を考慮したんだろう。
いつの間に用意してたのか……。
『まずは持ち方だな。持ちやすい方の手で握ってみろ。』
俺は一度頷き、右手に短剣を持ち、刃をカインの方へ向ける。
『それが、順手だ。基本的な持ち方でもある。次は逆に持ってみろ。』
逆?
逆ってなると……
右手に持った短剣を左手に持ってみる。
『あ~……そうではなく、右手に持ったまま、刃を自分の方にむけるのだ。』
なるほど。
今度は右手に持ち、刃を自分の方に向ける。
『それが、逆手だ。順手だと、短剣の可動域が少なく、逆手だと可動域が順手に比べ大きくなる。』
可動域……?
『どういうこと?』
『そうだな……。見本を見せるか。』
そう言うと、カインは俺と似ている短剣を持ち、順手で手首だけを動かす。
それから短剣を逆手に持ち、手首を動かす。
『……?』
『まぁ、多少の違いしかないがな。この少しの違いを理解しているだけでも戦いの中では重要になる。』
戦いかー。
戦いねー。
……避けられないかなー。
『それと、2つの持ち方に慣れておけば……』
ヒュンヒュンと風を切り裂く音が聞こえる。
『こういう使い方も出来る。』
うん、全然見えませんでした。
何したんだ。
『……?』
困惑している俺を見て、『今度はゆっくりとする』と苦笑を浮かべながらカインはもう一度構える。
順手で持った短剣を大きく下から上へと振り上げ、その勢いのまま逆手に持ち替え横一直線に振ったかと思うと、また順手に持ち替え上へと振り上げ逆手に持ち替え突き刺す様にしてカインの動きは止まった。
すげー。
流れる動きで短剣が宙を舞っている様に見えていた。
その光景に思わず拍手する。
『すごい!』
『ま、まぁルディも出来る様になるぞ。』
照れ臭そうに頬を染めていた。
俺には出来る気がしねぇ。
『むり、だよ。できない。』
『最初から諦めていては駄目だぞ。ちゃんと父さんが教えるから大丈夫だ。』
大きな手を俺の頭に乗せ、笑顔をくれる。
うーん。
カインがそう言うなら、やるだけやってみるか。
『次は、短剣の扱いにも慣れないといけないから、日常的にも出来る方法を教えてやろう。』
え、なに、日常的に短剣を振り回すの?
『こうして、短剣を回したり……』
順手、逆手と持ち直すが、時計回りに回したり反時計回りにしたり。
次は上に投げては柄を握る様にしたりと、短剣を玩具の様に扱っていた。
それを見よう見まねでしてみるが、思う様に手が動かず、すぐに落としてしまう。
ペン回しを練習した時の感覚に似てるな。
初めてペン回しが出来た時は嬉しかったな。
そう思いながら、短剣を落とし続けた。
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