異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第10話──

ライアと俺は深淵の森に来ていた。

ライアに拾われてから一度も入った事が無かったな。

深淵しんえんの森はの、他の森等に比べて強い魔物が多くいる場所なのだ。』

俺をかかえながら、声を潜めている。

俺……まだレベル1なんだけど……
そんな強い魔物の所に行かなくても良くない?
初心者用の所もあると思うんだけど……

『理由としては、魔素……魔物が好むエネルギーじゃな。それが多い事や、魔物にとって過ごしやすい環境がある等、諸説は色々とあるが、理由はさっぱり分からぬのだ。』

分からんのかーい。
まあ、何で人間が生きてる?って聞かれたら分からんから、そんなものか。

『ここで、するの……?』

本気でここで狩りをするつもりなんですか。

『……うむ。ここが一番レベルが上がりやすいからの。ルディにはここがツラい場所かもしれぬが……』

悲しそうで苦しそうな表情をするライアだが、俺には何故ツラい場所なのか理解出来ない。

特に思い入れもないし……
ツラいと言ったら、今この狩りをしなければならない現状がツラいです。

まあ、そんな事は言える訳もなく。

『だいじょうぶ。』

『!!……ルディは強い子だの。さすが、妾達の子じゃ。』

優しく頭を撫でられているが……

強いのはライアとカインだと思うんだけど。
レベル差がありすぎるし。

『ルディ、静かに。彼処あそこにいる魔物は分かるかの?』

『……うん。』

目の前にとても大きな赤い爬虫類がいる。

俺を丸飲み出来そうな位大きい。

『ルディ、あの魔物に向けて【鑑定】を使ってみるのだ。』

俺は頷き、【鑑定】をしてみる。
名前は[サラマンダー]レベルが325。

うん、俺には倒せない事は分かった。

『まずは、あの魔物から狩るとしようかの。』

いや、無理でしょ!
俺、レベル1!!

『な、なんで?』

『?あぁ、妾の役目の事を心配してくれておるのか。心配する事ないぞ。そうだのぉ……次は妾を【鑑定】してみるのだ。』

役目の心配……言われて思い出したわ。

〈闇落〉している狂った魔物か、自分に敵意を向けてくる魔物しか倒せないんだっけ。
ちらっと聞いただけだし、あんまり覚えてないわ。
なんか、ごめん。

言われるまま、ライアを【鑑定】する。

やっぱレベル高ぇ……

『……?』

『ふふ、気付いたかの。狂っている魔物のステータスは赤く表示されるのだ。それと、話す言葉じゃな。これはその内分かると思うぞ。』

うん、なるほど。
それで判別が出来るのか。

『敵意を向けてくる相手に関しては、感覚で分かるのだが、【索敵サーチ】を使うと遠い敵意にも気付けるのだぞ?』

『さーち……まほう?』

そういう魔法があるなら是非とも習得したい。

命の危険から逃れる為に必要だと思う。

『そう、魔法の一種じゃな。だがの、妾はあまり魔法を上手く使えぬのだ……練習して人並みには使える様になったんじゃが、攻撃魔法はてんで駄目なのだ。』

今までも色々と生活の中で魔法を使っていたから、普通に使える物だと思っていたが、習得は難しいのかな。

『なんで?』

疑問に思ったのでライアに聞くと、照れ臭そうに鼻をかく。

『その……。妾はほぼ全属性が使えるのだが…………力加減が出来ぬのだ。』

思ってた答えと違った。

ライアは思い通りに魔法を操る事が出来ないのか。

『何度か攻撃魔法を練習でやったのだがの。…………山が無くなったり、周りが砂漠になってしもうてな。皆から止められたのだ。』

『そ、そう……』

それ、本気で使っちゃ駄目じゃん!
天変地異てんぺんちいだよ!
そら、止められるわ。
攻撃魔法使えなくても生活に支障はないから、何かあっても使わないで。
止めた人、本当によく止めてくれたよ。

『そろそろ、サラマンダーを狩る事にするかの。』

あ、本気だったんですね。
ライアの意識を反らしたら忘れてくれるかなーなんて淡い期待があったんだけど。

ライアはライアで
ちょっとそこのコンビニ行ってくる。
みたいな軽いノリだし。
こっちにコンビニ無いけど。

『ほれ、ルディ。短剣を両手でしっかりと握るのだぞ。』

促されるまま、短剣をぎゅっと握る。
ライアは俺を抱いたままだ。

あれ?降ろさないの?

『しっかりと握っておくのだぞ。』

そう言うと、ライアとかかえられた俺は草むらからサラマンダーに向けて一気に距離を詰める。

待って待って待って!
心の準備がぁ!!

俺を左手で抱いたライアは右手を俺の両手に添え、サラマンダーに短剣で一撃を加える。

『ギャァァアアアァァァオッ!…………コロス。…………コロス。』

サラマンダーは叫び声を上げると全身に冷や汗が出る程の殺意を向けてくる。

怖いっ!
逃げたいっ!

ライアに抱えられている俺は逃げられる訳もなく、サラマンダーは俺達に向かって火を放つ。
それを右に避け、直ぐに距離を詰めるが、サラマンダーが反転し尻尾で攻撃を仕掛けてくる。
ライアは上に避け、そのままサラマンダーの上に着地する。

『サラマンダーの攻撃は主に火を吹くか尻尾での打撃、後は突進してくる場合もあるの。』

説明は嬉しいんですけどね!?
今ここでする話かな!?

上に乗られているのが嫌みたいで、身体を大きく揺らしてくる。

『一番有効な攻撃は水魔法じゃな。後は……』

ライアは右手の爪を伸ばし、サラマンダーの首を切り裂いた。

『この様に首を切り落とすと良いのだ。な?簡単じゃろ?』

いや!
簡単じゃないから!
ライアが強いだけだから!

『む、むり……かも。』

『ルディならその内出来る様になるぞ。レベルもちゃんと上がっている様だしの。』

言われて自分のステータスを確認すると、レベルが28になっていた。

『……なんで?』

『?レベルが上がった事かの?』

『うん。』

『最初にルディが攻撃を入れたであろう?魔物を倒せば攻撃を入れた割合だけ経験値が入るのだ。……じゃが、この魔物は弱かったからの。ルディに一撃しか与えさせられなかったの。首を切り落とさず、もっとルディにさせれば良かったかの。』

ぶつぶつと今回の反省を呟き出した。

サラマンダーは決して弱く無いと思うよ?
ライアが強すぎるだけ。

『もう少し強い奴を探しに行こうかの。』

『え、いやだ。』

反射的に拒否してしまった。

『大丈夫じゃ。ルディなら出来るぞ。』

出来る出来ないじゃなくて、怖いからやりたくないんです。
分かってください。

文字通りおんぶに抱っこ状態のレベル上げなんだけど、怖いもんは怖いっ!

何を言ってもライアは狩りを続ける気満々で次の獲物を探し始める。

─────帰りたいなぁ。

こうなったライアは止められないので、俺は諦める事にした。












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