幻灯箱の紅い薔薇

きあき

キノコ雲があがった日

ぼくらの苦しみを埋めるように
緑の草原に雪が降る

遠くの国でおきた事故は
キノコ雲をあげ家々を倒し
この星を厚い雲でおおった

それは最初
大勢の人々を殺すための
武器だった
「人を便利にする道具」という
仮面をかぶり
ぼくらの星に広がっていった
楽な暮らしが当たり前の
生活の中で
ぼくたちはその道具の
本質を忘れ
安全を絶対だと思い込み
本当に
本当に小さなミスから
ぼくたちは終わりを迎えた

青い空に厚い灰色の雲が広がり
雪の降らないこの国に雪が降る
真白に広がった雪の大地の下で
ぼくらはやがて化石の生き物になる

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