幻灯箱の紅い薔薇

きあき

カメリア

赤い椿の花が咲く道に
冬の風が吹き
君の黒いレースのスカートを揺らした
緑色の光沢のある葉がゆれ
真っ赤な花が落ちる
道行く誰もが
心動かせることなく過ぎてゆく
そんな日常の中
ちいさな出来事に涙する君
雑誌の中の流行に左右されるボクを
君はそっと見つめ優しくほほえんでいた

君はいつも
君自身が気に入る物しか
着なかったね
街の声に流されず
君は自分で考え
自分で決めて生きていた

原宿まで2時間半かかる
この町の人々は君を奇異の目で見
君がすることの意味も考えず
両親さえも君に冷たくあたった
それでも君は人に流されることなく
自分自身で考え生きていた

ボクは君にあこがれるだけで
自分自身で考えることなく
時を過ごしていく

ある日
君はボクたちの目の前から
天に還った
山の中の町から
電車で40分の小さな都市で
君は大好きな
黒いレースのスカートに包まれて
この都市で出会った仲間たちに
看取みとられて天に還った
アスファルトに真っ赤な花を残して

天は何も考えずに河を流れる
人々のために
君をこの地に降ろしてくれたのに
人々は君を否定することしかできなかった
自分たちが何も考えてないと
認めることができなかった

やがて降りゆく雪が
アスファルトに残された君の花を
消していっても
永遠の時が流れようとも
ボクは君を忘れることができない

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