覚悟の炎をもう一度

ボラオ

二話 指導者の条件

新居での朝を迎えた。そう言うと、少し誤解が生まれるが、気にしない。
昨日ここに来て、驚いた事……

・後輩の料理が神レベルで美味しい!

・料理以外の家事スキルも俺と比べるまでもなく上。

・部屋が一緒だった……

・襲われそうになった……

・ベッドがふかふかの良いやつだった。

・風呂が少し大きめで、一緒に入ろうとしてきた……

・結局、一緒に寝た……

・朝起きたら………

状況を把握するか。まず、どうやら後輩は裸らしい……この時点でアウトだな。で、何故わかるのか……俺の顔を抱きしめて白い肌の小山さんに押し付けられているからだ。小山さんといっても、そんなに小さいわけではないが、仮にも俺は男。物足りないという事だが、別にこれはこれで……一旦落ち着こう。取り敢えず、パターンとして起こそうとすると、起きた時に何か事件や厄介事になるから、二度寝しよう。幸いにも、学園からめっちゃ近いからな。

30分後……

「ふぁ〜、よく寝……はっ!?私ったら、先輩を裸で抱き……え、えっと、どうして?もしかして、昨日、私と先輩が………一旦落ち着こう!スー、ハー、スー、ハー良し!私が昨日、暑くて脱いでしまったんでした!でも先輩、見たかな?見られてたらどうしよう!!」

うん?ちょっと騒がしいな……

「ふぁ〜、おはよう。何してんだ?とっとと着替えて飯食おうぜ」

俺は、そのまま着替えを取り、脱衣所に向かった。

「えっ!?おはようございます!!あっ、行っちゃった……」


しばらくして、朝食や準備を済ませて学園に向かった。因みに、今日の昼食は後輩の手作りという……変な薬とか入ってないだろうな……

「なぁ、弁当に薬とか入れてないよな?」

「何言ってるんですか?弁当に入れるならまず、夕飯にも朝食にも入ってるはずですよ?あっ!!でも、確かに一つだけ入れましたよ!」

「なっ!?何を入れたんだ?」

満面の笑みで後輩は言った。

「愛情です♡」

俺は不覚にも、少し頬が緩んでしまった。そして、少し照れてしまったのだ。

「あっ!今、照れてましたよね?初デレですか?」

「なんだよ初デレって!しかも、人をまるでツンデレのように言いやがって!ったく、別に照れたっていいだろう。お前が可愛いんだから」

あっ、やべ。口が滑った……。どうしよう。と、思っていると……

「っ!?ひぁい、しょうでしゅか……ありがとうございましゅっ……嬉しいです」

顔を真っ赤にして照れていた……。
こう言うのも、悪くないな……

「そうか」

「はい」

そんな、リア充イベントをしていると、学園に着いていた。取り敢えず、周りから凄くジロジロ見られている。理由は簡単だ、入学そうそうの一年と腕を組んで一緒に登校しているからだ。しかし、これはまずったな……

「おい、そろそろ離れろ。他の奴らに目をつけられると、友達を作りにくくなるぞ」

俺がそう言うと、後輩は身長的に上目遣いでこちらを向いて……

「その……昨日からですが……そろそろ……名前で……ユウリって…呼んで下さい…私も柊一先輩って呼ぶので……駄目…ですか?」

恥ずかしいのか、今にでも泣きそうな顔をしている、周りの目もあるし、しょうがないな

「分かった。ユウリ、離れてくれ。他の生徒が見てるんだ」
 
余程嬉しかったのか、物凄い笑顔で幸せそうな表情になっている。が、

「嫌です。離れません。柊一先輩の教室には女子がいます!このままだと、奪われてしまいます。なので、離れません」

真顔で言われた……

「なるほど。しかし、ウチの学園の女子は誰も俺を狙ってないぞ。落ちこぼれだし。てか、お前一年だろ!クラスはどうするだよ!」

すると、顔を膨らませて

「そんな事ないです!柊一先輩はカッコイイので、女子にも人気があるんです!そこで炎を使ってしまったら、先輩は狙われてしまいます!クラスに関しては、これから学園長に呼ばれているので、先輩も来てください!」

最後の方には、膨れっ面から、笑顔になっていると言う……何か、嫌な予感がするなぁ。



取り敢えず、学園長室に着いた。一体、何の話をするのやら……

「早速だが、本題に入ろう。ラグレス君、君の指導者の件とクラス変更の件だがな、条件がある。その条件をクリアすれば認めよう」

と、学園長が言った。見た目は、40代くらいの女性だ。髪型はロングで、色は赤茶に近い。

「その条件というのは、どのようなものですか?柊一先輩の体を売るというのは無しですよ?」

真剣な空気だったのに……何言ってんだ。

「お、おい。学園長にそれはないだろう」

「流石に、そんな気はないが。それに近いな。」

「「えっ!?」」

「まあ、一旦落ち着け。」

「は、はぁ」

「で、条件ってのは?」

「緋乃、お前が実技で炎を使うことだ。」

「「な!?」」

「学園長、アンタ知ってるだろ!何でそうなるんだ!」

「そうですよ!柊一先輩が他の女に取られてしまいます!」

「取り敢えず落ち着け。まず、ラグレス君、その点は安心しろ。存分にイチャイチャして、近づけなくさせればいい。」

「なっ!?」

「ああ!確かにそうですね!」

「緋乃…いい加減、前に進んだらどうだ?現実逃避の言い訳は、高校からは通じない。それに、そろそろ追いつてるはずだ」

その場は静寂に包まれた。しかし、それを破ったのはユウリだった……

「あの……柊一先輩は只、飽きたから炎を使わないって言ってましたけど、違うんですか?」

その問いに答えたのは、俺ではない。

「いや、少し違う。緋乃は、そいつの体はな、自分の炎の成長スピードに追いついていないんだ。当時、確か中二の夏の大会からは2割の力でしか、戦ってなかったな。まぁ、そろそろ体が追いついてきているはずだからな、気兼ねなくできるはずなんだがな……」



その言葉にユウリは……

「柊一先輩……覚悟して下さい」

次の瞬間…『パチン』という乾いた音が響いて、俺の右頬は赤くなり物凄い傷みが残っていたそして……

「じゅういぢ……ぜんばい……ぐすん……どうじで、言ってぐれながっだんでずがぁぁ!!」

泣いていた…

「ごめん、話したくなかったんだ」

「ぐすん…うわぁぁん…ぜんぱいのぉばがぁー…うわぁぁん」

俺はユウリの涙を見て、自分の心がどれだけ弱いのかが分かった。俺は学園長が言ってた通り、逃げていた。自覚はした。できたんだ。ユウリのおかげで。なら……

「ユウリ、ごめんな。もう、二度とこういう事はしないって約束するから、泣き止んでくれ。」

俺はそう言いながら、優しく抱きしめて頭を撫でた。

「ふぇぇ!?…ぐすん…うん…わがっだ…それと…もう一つ…私以外の女の人とは関わっちゃダメ…約束ね?」

「ああ、分かった。でも、最低限は許してよ?」

そう言いながら、頭を撫で続ける。

「それじゃあ…うん」

彼女は目を瞑り唇を上に上げた。

そして、俺もその行動の意味を理解して、唇を重ねた。

「うん……」

時間は3秒……しかし、体感は一時間より長く、けれど心地よい時間だった。

「ぷはっ……これでいいか?」

「うん!柊一先輩大好き!」

そう言って今度はユウリが俺を抱きしめた。そして、唇がまた重なろうとしたとき……

「ゴホン」

「「・・・・」」

学園長の存在を忘れて、熱くなった思いは突然の咳によって静まり、その存在を思い出した。今は、気不味い空気が漂っているだけ………

「私の存在を忘れてイチャイチャするのはいいが………緋乃、答えはどうなんだ?」

俺は今、今まで一番いい笑顔になっているだろう。ユウリの指を絡めるようにして手を繋いで

「逃げずに、進みます。俺の足だけじゃなくて、ユウリの足と……ユウリと一緒に前に進んでみます!」

俺の答えを聞いた学園長は嬉しいそうに喜んでくれていた。

「そうか、何かアレば教師に頼るといい。皆んな生徒の仲間だからな。」

「「はい!(分かりました)」」

「あ、そうそう。緋乃、お前さっきの言葉は、捉え方を間違えれば、彼氏が彼女の家族に『娘さんをください』って言ってるのとほとんど変わらないからな。気をつけろよ」

最後に爆弾を投げ込んでいた。

「柊一先輩!?それって……」

「違うからな!」

「それじゃあ、緋乃、お前をラグレス君の指導者として許可する。ラグレス君、君を緋乃のクラスに変更する事を認めよう。近々、トーナメント戦がある。今年はタッグ戦だ。いい結果になるように期待しておくよ。」


「はい!頑張ります!」

「ブランクがあるので、あまりプレッシャーをかけないでください。学園長。」

「ほれ!とっとと、行った!授業に遅れるのは良くないぞ!」


俺たちは、自分たちの教室へと向かった。





『ガラガラガラガラ』

俺は二年Aクラスの教室の扉を開けた。
そして、周りから視線を集めていた。

理由その1

まず、懲りずに今日も学校に来たから。

理由その2

一年生のトップの成績を持つユウリと腕も組んで教室に入ってきたため。
因みに、何故腕を組んでいるのかはクラスの女子に見せつけたいかららしい。

取り敢えず、俺は自分の席に着いて、ユウリも俺の隣の席に着いた。元々、隣はいなかったから丁度良かった。このまま、担任を待っているのも暇だから何をしようかと考えていると……

「よお、落ちこぼれ。今日も懲りずに来たかと思えば、なんだ?そこの一年は!」

「そうだぞ!落ちこぼれのクセに何で彼女とイチャイチャしてる!」

「どうせ、何も知らない一年生を騙して彼女にしたんだろ!この落ちこぼれ!」

などと、男子が一々余計な一言を言って突っかかってくる。案の定、ユウリは……

「えっ!?彼女!?えへへ、柊一先輩!聞きまたしか!!いま、彼女って言ってましたよ!私と柊一先輩は誰がどう見ても認めるカップルなんですよ!」

はぁー、どうすっかなぁ

「ユウリ、取り敢えず落ち着け。で、お前らは俺に何か用か?いっつも、俺に話かけて、何かと思えば「落ちこぼれ」、一体何がしたいんだよ」

俺の言葉に、男子が黙った。まぁ、結局、用はなかっただけ。単なる暇つぶし。それだけだ。まぁ、どうでもいいけどな。そう考えていると、隣人が

「もう!柊一先輩、メッ!ですよ!柊一先輩が怖い顔になって言うから皆んなが怖がってるじゃないですか!皆んな、柊一先輩と仲良くなりたくて、話しかけているんですよ!もっと優しく、笑顔で話さないと友達ができませんよ?」

何故か、隣人ユウリに怒られた。しかも、幼稚園児を叱るように………

「お前ら、俺と仲良くなりたいのか?」

「「そんなわけない!」」

と、男子が答えた。

すると、さっきから黙っていた女子からは

「ねーねー、緋乃君は、その子と付き合ってるの?」

「そこの一年ちゃん、緋乃君とはどういう関係?」

などと、聞かれた…もちろん、返事は

「いや、付き合ってない」

「結婚前提でお付き合いしています!なので、わ・た・し・の・柊一先輩に手を出さない下さい!!!あと、話しかけないで下さい!目も合わせてないで下さい!同じ息を吸わないで下さい!柊一先輩も、さっき私以外の女には関わっちゃダメって言ったじゃないですか!」

「おいおい、結婚前提なんて聞いてないし、そもそもいつから付き合ったんだよ!それに、さっき、最低限なら許してくれるって言ったじゃんか!」

「もう同棲もして、昨日は私からでしたが、今日はさっき柊一先輩からキスをしてくれたじゃないですか!それに、最低限と言っても、明確なルールを決めてない柊一先輩が悪いんですからね!」

「なっ!?それは昨日、無理矢理ユウリがしたんじゃないか!しかも、同棲だってそれで脅してきただろうが!今日のだってキスしたら、最低限は許すって言ったからしたのに!」

「「ぐぬぬ」」

「柊一先輩の嘘つき!」

「はぁ!?ユウリが嘘をついたんだろうが!」

「なら、私と付き合って下さいよ。結婚前提で」

突然の告白に驚いて迷う!?と言うことはなく、ただ驚きわしたが……

「………流石に、重いから無理だ」

「えー!柊一先輩のケチ〜!!」

「そうだぞ!何告白を断ってんだよ!」

「そうだ!そうだ!」

「そうよ!後輩ちゃんが可哀想じゃない!」

「乙女の唇に二回もキスして、その上、一緒の屋根の下で暮らしてるクセに!」

「うるさい!ユウリの将来に関わってくるんだぞ!そんな重いもん簡単に背負えるわけねーだろ!」

「お前ら、静かにしろよー、朝SHRの時間にとっくになってるぞ」

そう言って入ってきたのは担任の時雨 みき歳は33歳・独身だ。なんでも密かに合コンや街コンに行ってるらしいが、どうも相性が良くない人ばっかりなのだとか……頑張って!

で、ユウリの事を担任のみき先生が説明し終えると、朝SHR が終わった。そして、一時間目から実技の授業がある。というわけで、久々の俺の炎がどこまで使えるか、楽しみだ!





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