あの日から私の人生はもう詰んでいたんだ。

きおたぬき。

絶望と夢の狭間 ~Episode1~

「お母…さん…?」

そのとき自分は何を思っていたのだろうか。
1つだけ分かる。それは、これが『死』だということだ。母の目はうつろでいつもとは雰囲気が違う。血の気がひいていて体温も冷めていた。

「なんか、臭い。」

異臭のするリビングに入る。そこには、真っ赤に染まったカーペット、壁全体には飛び散った血がついていた。そして、死体の首元には赤い宝石と歯型のようなものがついている。気持ち悪い。

「…っ。嘘だ、こんなの夢に決まってる。」

足元に父の血が滴っていた。
ガタッ。

「なんの音?」

人だ。あれはきっとそうだ。

「あんたが殺したの?」

「……。私が見えるのか?」

何を言ってるんだ。見えるもなにも正真正銘人間なのに。

「くそっ。小娘ごときのせいで…。」

もう口答えをするには遅かった。一瞬、感電したかのような痛みが走った。見るとちょうど心臓のところに赤黒い宝石がついていた。頭がくらくらする。もう死ぬのだろうか。いや、自分が何をしたっていうんだ。落ち着け。きっとこれは夢なんだ。

「あず!」
「蒼斗…。なんかリアルな夢…で…。」
「あず、警察を呼ぼう。これは夢なんかじゃない、目を覚ますんだ!」

声が遠のいていく。きっと目が覚めるんだ、こんなくだらない夢が終わるんだ。

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