コミュ障陰キャは2度笑う

ケッキング祖父

第8話

瞳持ちの男による確認が済んだ僕は、他の人たちと同様、別室への移動を命じられた。先導する兵士は兜のお陰で顔がみえず、僕に対してどんな印象を持っているかはわからない。何も語らず前に進む兵士に、一抹の不安と同時にちょっとした安堵を感じた。

僕が通された部屋には既に祝福の確認を済ませた生徒たちが集まっていた。
僕の姿を目ざとく見つけた上田が話しかけてくる。
「おっ、平家くんの確認もおわったみたいだねぇ。」
先程バイトに噛みついていた男とは思えないほど不快な猫撫で声で話しかけてくる。
「それで、どうだった?君の祝福は?」
クソッ。早速嫌なところを突かれた。
しかもよりによって上田にだ。僕の祝福が分からなかったことを聞けば、今までとは比にならない位の態度をとるだろう。
その場しのぎにしかならないだろうが、隠
さなければ。今さえ誤魔化せれたら今後彼に近付かなければいいだけだから。
「いや、それが「なぁ~んてっ」」
「しってるんだよねぇ、実は。」
上田が口元を歪ませながら言う。
なぜばれているんだ。今この部屋にぼくの祝福が存在しないことを知っているのは僕自身だけのはずだ。

「いやぁ、本当に祝福っていうのは色んな種類があるみたいでねぇ、
中には『小型の感覚器を生み出しそれに準ずる感覚を自分と同期させる』なんてものもあるみたいで、
まあ、分かりやすく言うと小さな目玉や耳を生み出してそれと自分の視力や聴力を同期させるってことかなぁ。」

ここは自分の住んでいた世界とは違う。だから、向こうの常識はつうようしない。そんなことは分かりきっていたのに。

「それで後藤がさっきの部屋にこっそりと耳を設置しておいたというわけだよ。」

後藤省吾。前の世界では殆ど交流のなかった相手だ。眼鏡をかけた小太りな男であり、いつも理由をつけて体育を休んでいた記憶しかない。
そんな彼は、他の生徒と同じように遠巻きからこちらを見ていた。

そこに思考が至ってようやく気が付いた。
この部屋にいるすべての生徒がこちらを見ている。鹿場も、月森も、彼等が僕に向けている感情は何だろうか。
上田のような侮蔑か。鹿場が僕に向けているような憐れみか。
はたまた、自分じゃなくて良かった。という安堵なのか、
人とのコミュニケーションを今まで避けてきた僕には分からなかった。

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  • オナ禁マッスル

    理由(深爪による陥入爪)

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