青いボンボン帽子

蜂ノコ

第2話 標的

 今日も私は鼻歌を歌う。
あれから夕涼と優樹の噂ちらほらと流れていた。
「あの子、あんな奴と仲良くしてるみたいよ。優樹と!」
「え~ありえない。あの子がそんな人だとは思わなかったわ。」
教室に行くとこんな会話が聞きたくなくても耳がキャッチしてしまう。
教室を出て、廊下に立つだけでほかの人が夕涼のヒソヒソ話をしている。
「あの子、優樹君の本当の姿を知らないから仲良くしてるのよ。」
「そうかもね…。あんな怖い人と仲良くできるなんて凄いわね…。」
夕涼はこうなることはわかっていた。自分でその道に行くことを覚悟で選んだんだから今更文句は言えない。
(くっだらない。ただ、いじめていたところを助けただけじゃない。)
夕涼はため息をつきながらそう思った。
「夕涼!」
背後から誰かが声をかけてきた。紫苑だ。声を聞いただけでわかる。
「紫苑…。」
「どうしたの?夕涼。」
夕涼は紫苑の顔を見て優しく微笑む。だが、紫苑から見ると悲しい顔をしているように見えた。
「あんたさ、誰かを助けようとするのはいいけど自分を犠牲にしすぎるなよ?助けようとするといつも犠牲になるからさ。」
優しい口調で言う。
夕涼は紫苑を見つめる。そして、安心した顔を見せた。
「ありがとう。」
夕涼は心のこもった感謝の言葉を紫苑に言った。
「いえいえ!友達として当然のことです!」
腰に手を当て、胸を張る紫苑。
その姿を見ると、クスッと笑ってしまう。
「な、何笑ってるんだよ!」
紫苑は少し驚いて夕涼に言う。
「いやいや。そのポーズ、面白いなーって。」
そう言われて紫苑は徐々に顔を赤くなっていく。照れているみたいだ。
「アハハハハ!」
「そ、そんな大笑いしなくてもいいじゃないか!」
紫苑は顔を横に逸らしながら、そういった。
「いや、ごめんごめん!紫苑が照れてるところが可愛いなって思って。」
夕涼がそう言うと、紫苑が小さな声で
「可愛くなんか、ないもん…。」
と言った。
紫苑と夕涼は自分のクラスへ戻り、朝読書の準備をする。
この学校は何故か読書に力を入れているのか朝読書の時間が30分ある。夕涼はあまり読書は好きでないため正直言って少々きつい。
紫苑は読書好きなため夕涼とは正反対である。
朝読書が終わり、授業が進んでいった。
 昼休みになった。皆は弁当を持って好きな教室へ移動したり非常口で食べたりする。
夕涼は大図書館に移動して弁当を開く。
優樹のボンボン帽子について知りたくてここに来ればまた会えるかも知れないと思った。
夕涼は一人ポツンと座っていた。
紫苑からの誘いを適当な理由で断っておいた。
流石にいきなり友達を連れてくるのも話しづらくなってしまうだろうと思った。
お弁当を突いていると、青いボンボン帽子をかぶった優樹がいた。
その後ろに誰かが何かをしようとしている。
(なんだ、友達いるじゃない。)
夕涼はそう思った。
優樹の後ろにいる人は青いボンボン帽子を掴み、思いっきり引っ張る。だが、その青いボンボン帽子は簡単には取れなかった。
「や、やめてよ!」
必死に抵抗する優樹。
「お前の頭ってどうなってるのか見たくてよ…あ。もしかしてお前の頭ってハゲてるのか!!だから帽子をしているんだよな!」
その言葉を聞いた夕涼は優樹の友達なんかじゃない、あれはいじめっ子だと確信した。
夕涼は地面を蹴って優樹のところへスタスタと早歩きで向かう。
「やめな!嫌がってるじゃない!」
その声を聞いて優樹はこちらに振り向くと安心したような顔をする。
「あァ?」
いじめっ子はジーっとこちらを見ていた。
「なんだ?テメェは。この帽子外したらどんな姿なのか見たいとは思わないのか!!」
夕涼はいじめっ子を睨みつけてこう言った。
「そんなことをしてまで見たいとは思わない!この子がどれほど苦しんでんのかわかってんのか?」
夕涼がそう言うといじめっ子はこちらを睨みつけてきた。
とても恐ろしい顔をしていた。
「苦しんでる?ハハハ!こいつは楽しんでると思っていたよ。」
夕涼は拳を握る。
「優樹君は全然楽しいとは思ってないよ!もし、それ以上優樹君をいじめるって言うなら…」
夕涼は一息間をあけてもう一度口を開く。
「お前を、ぶちのめしてやるよ。」
声を低めて言うと、いじめっ子はゾクッとしたような顔をしていた。
「お、覚えてろよ!」
捨て台詞を吐いてその場を去っていった。
いじめっ子が見えなくなると、一気に肩の力が抜けて手に汗を握っていた。
「怖かった…。」
夕涼が一言そういった。
「だ、大丈夫?」
優樹がそういうと夕涼はニコッと作り笑いをする。
「大丈夫大丈夫!優樹君こそ怪我とかない?」
「大丈夫。あのさ…また、助けてくれてあ、ありがとう…。」
優樹は少し照れくさそうに言う。
「うん!」
と夕涼は満面の笑みを浮かべながら一言発した。
「私は優樹君の見方だからね~。助けるのは当然でしょ?」
優樹はそう言われてとても胸が熱くなった。
「ありがとう!」
ハニカミ笑顔を見せる優樹。
夕涼は自分の弁当があるところに優樹を連れて、そこの椅子に座らせた。
弁当箱を再び突こうとすると、彼はゴクリと唾を飲む。
夕涼がご飯を口にしたあと、優樹の方を見るとこちらをジッと見ていた。
「どうかした?」
夕涼はピンク色の箸を口にくわえながら優樹を見る。
「い、いや…お弁当美味しそうだな…って思っただけだよ。」
そう言われて、彼が弁当を持っていないことに気づいた。
「あ、弁当ないの!?」
夕涼がそう言うとこくりと頷いた。
「実は、お弁当を持っていくといつもお弁当を奪われて捨てられるんだ…。」
それを聞いて夕涼はいじめられっ子の特徴だなと思った。
夕涼はお弁当の中にあった春巻きを箸で取ると、優樹の前に差し出した。
「ほら、これあげるよ。」
そう言われて、優樹は驚いた顔をするが何故か首を振る。
「いらないの?欲しいんじゃないの?」
「い、いや…欲しいっちゃあ欲しいけど、ゆ…清盛さんってあまり気にしないんだね…。」
優樹がそう言うと彼女は首をかしげ頭にはてなを浮かべていた。
(今時の女子って気にしないのかな…。)
「食べるなら、食べなよ…?」
優樹は顔を赤くしながらも、ピンクの箸と春巻きに食いつく。
(間接キスだ…でもこれは仕方ない。どうやっても箸が口の中に入っちゃうんだもん…。)
「お、美味しぃ…。」
優樹は小さくなる声でぎこちなく言った。
「ありがとう…?ところでなんでそんなに顔赤くしてるの?」
夕涼は思い切って聞いてみた。
優樹は戸惑いながらも声を発する。
「え…。だって、その、その箸って口にくわえてたじゃん…。その…その箸で僕、春巻き食べたじゃん…。」
なんとか言葉にしながら言う。
ここまで言って優樹が何を言いたいのかわかると彼女は赤面した。とても恥ずかしいことをした。
「い、いやぁ、こ…これは全く気にしていなかったっていうわけじゃないのよ!…まあ、あれよ、あれ!今流行りの食べ物交換ってやつよ!」
夕涼は適当に思い浮かんだことを言う。
「いや…僕、交換するもの持ってないって。」
そう言われればそうだ。
彼女は返す言い訳を思い浮かばず、正直に無意識だったと言うと彼はクスッと笑った。
「いやぁ、面白いね!清盛さんは。」
「何笑ってんだよ!」
そう言いながらも顔が笑っていた。
彼がもしいじめられていなかったら、きっともっと明るい人なんだろうなと夕涼は思った。
笑いが収まると夕涼は本題へ入る。
「そういえばさ、なんで帽子かぶってるの?」
これは前にも聞いたが、やはりどうしても気になってしまう。
だが、彼の目を見ると死んだ目をしていて、自分が聞いてしまったことに後悔した。
「…やっぱり清盛さんも気になるんだね。でも、僕の本当の姿を見たらきっと清盛さんは僕を嫌うと思う。だから、教えられない。」
その言葉を聞いて、彼女は静かに分かった、と答えた。
(優樹君は多分、私を必要としている。初めての、仲間として…。)
夕涼はそう感じた。
弁当を食べ終わり、少し雑談をして教室へ戻ろうと椅子を引いた。まだ時間はたっぷりある。ゆっくり教室に戻ろうと思った。
「おい!」
その声が大図書館に響く。少し低い声を発する女子生徒が大図書館の入口に立っていた。
「お前、そんなやつを相手にして何してんの?」
不良っぽい言い方をする。
「まさか、そんなゴミクズと話してたとかそういう感じか?はん!お前、アタイの獲物を奪ってんじゃあねぇよ!!」
不良女子がそう言うと、こちらに向かって走ってくる。
赤いロングの髪がバサバサとして、手に持っている竹刀で肩を叩きながら走ってくる。
「逃げてください!あいつは、ここの学校一の最強のてっぺんってい言われてるんです!」
そう言われて、恐怖が増した。
優樹を連れて逃げようとしたが、遅かった。
顔に竹刀が思いっきり当たった。
パチーンという鋭い音を立てながら。
夕涼は床に倒れる。
「優樹ぃ!てめぇを処理するのはアタイだっていったじゃねぇか!他の奴らに関わってんじゃねぇよ!」
思いっきり竹刀を振る。
「やめて!」
パチーーン!!
またしても鋭い音が大図書館内に響く。
「邪魔だ!」
夕涼を押し倒して、彼女の腹部に竹刀を立てる。
「お前は大人しくしてろ!」
夕涼は抵抗する。
不良女子は腹部を蹴る。
「うねうね動いてんじゃねぇ!気持ちわるいんだよ!」
そしてまた腹部を蹴る。
優樹がそれを止めようとするが竹刀で思いっきり叩かれて床に倒れてしまった。
不良女子が馬乗りになって制服を掴む。
「お前に制服なんて似合わねぇ!」
そう言って制服を破こうとしたとき。
「うちの友達に何をしてんじゃぁ!!」
不良生徒がその声に反応して振り返ると思いっきりスカートの中を見せながらドロップキックをした。
(た、体操服…)
不良女子はスカートの中を目に焼き付けた。
ドロップキックをされて動かなくなっている隙に3人は逃げ出す。
 「あ、ありがと!死ぬかと思った。」
夕涼がそういうと助けに来てくれた紫苑が
「だから自分を犠牲にしすぎるなよって言ったのに…。」
と言った。
「ごめんごめん!」
頭を掻きながら謝る。
「貴方は?」
紫苑が優樹の方へ向いて言った。
「彼は神取優樹君だよ。」
夕涼がそう言うと、紫苑はへぇーっと呟いた。
「よろしくね!神取くん!」
握手を求め、手を伸ばす紫苑。
それに答えて優樹も手を伸ばして握手をした。
「よ、よろしく…。」
紫苑は優樹と手を離し、くるりと夕涼の方へ向いた。
「貴方は今後、神取くんを狙っていた人の標的になると思う。だから、気をつけて!」
彼女がそう言うと夕涼は分かったと言った。
そして、彼女らは教室へ戻りいつもどおり授業を行った。

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