オーバーウェルミング
プロローグ3
本来、五大皇種は、争いを好まない。
悪魔族は別としてそれ以外の種族は、主に傍観、監視、などに重きを置き自ら手を下すことがないからだ。
まぁ、一体一体が強すぎるためこの世界を滅ぼすということを自覚しているのだろうか。
それに対抗するにはそれなりの戦力をぶつけないといけないという理屈もあるが。
しかし、今は、各々が怒りに任せて破壊の限りを尽くしていた。
「何故だ、なぜ儂わこれほどまでに怒っているのだ。」
孤島カルデアでまさに戦闘真っ最中ら一体の最強種、神族の彼は戦いながらもこのようなことを考えていた。
神族。この世界の創造主。この世界最強の種族と言われている、一体
しかしなぜ、この争いが始まったのかも分からず。
ただただ怒りに任せて戦闘を続けていた。
すると突然、自分の魔力が急激減っていくのを感じる。
急激に減って魔力の向かう先を見ると、2人の人間が自分の魔力を吸収しているのに気づいた。
これと同様周りの4体からも魔力を吸収しているのを感じる。
この状況で魔力の減少はまずいと考え、その2人に向かって攻撃を行おうとした。
しかし、どうしてもあの人間たちが敵意を向けているようには見えず、本気の攻撃を発動することをためらってしまう。
何故だ?なにかがおかしい。
何かに対する違和感、それを感じてはいるのだが、神族はなにがどうなっているのか認識できずにいた。
リゲルとミーティアは今もまだ窮地から打破できずにいた、絶え間なく来る攻撃と神珠を扱うことから来る疲労感すでに2人はガス欠寸前の状態まで来ていた。
「まじで、やばいな、」
「えぇ、そうね。」
「何か打開策を考えないとまじでやばいわ。」
「そうね。能力では、圧倒的に向こうが上。」
「しかし、こっちの魔力は残りわずか、こりゃ詰んでるな。やけ酒かっ喰らいたくなるわ。」
「うるさい、そういうのは言わなくて良いわよ。」
しばらくの沈黙が続いたあと、
ここでミーティアの表情が変わった。
「ひとつだけ思いついた方法があるわよ。」
「いったい何なんだよ。」
「神珠に吸収した魔力を二人の体に取り込むの。」
「頭がついにいっちまったか。」
「うるさいわね。さっき本当に置いて逃げればよかった。」
「わりぃ、冗談だよ。」
「わかってるわよ。そんなこと。」
「てかほんとにそんなことができんのかよ。」
「さぁ誰もやったことないですもの。」
「それに、お前が取り込んで万が一、俺らの子供に影響あったらどうすんだよ。」
「それは大丈夫よ。」
「何で言いきれるんだよ。」
「だって私たちの子供よ。」
リゲルはこの時、何故かうまく行きそうな気がしてしまった。
「たくっ、本当に強気な王女様だよ、お前は」
「それに惚れたのは、あんたでしょ」
「ふっ、わかったよ。お前のプランに俺は乗る。必ず二人でこの島を出よう。」
「当然!!」
二人は一度魔力の吸収をやめ、
少し呼吸を整え、神珠イモートリティーに両手をかざす。
「「大いなる力よ我らの身に宿りたまえ。」」
すると、イモートリティーは、金色の輝きを放ち、二人の身体を包み込んだ。
「やべっーなんつー魔力だ。」
「ほんとに、さすが最強種達の魔力。これならいけるかもしれない。」
そう言って二人は上空の5体の最強種を視界にとらえた。
「行くわよ。」
「おう、」
そして、そちらに飛び込んでいく、
5体の最強種は、それに目を奪われていた。
体内から魔力が吸収されていたと思えば、それがやみ、地上から突如、金色の光が現れ、そこに自身並、又はそれ以上の魔力を持った2人の人間が現れたのだ。
しかし、5体はそれにまた怒りを覚えそちらに矛先を向けるのだった。
あれからどれくらい、時間が経っただろう、
戦闘を続けるもなかなか倒れる気配がない、
むしろ、魔力だけが減っていき、苦しい状況が続いていた。
「全然、埒があかねぇーじゃねぇーか。」
「そうね。まぁ、もともと、バケモノ達を相手にする時点で、バカ極まりない行動なんだけどね。」
「お前が言うなよ。」
辛い状況で、こういう会話をするというのが、二人の間で日常になっていた。
熱くなる前に、一旦間をおいて、冷静に考える。そして互いの状態の確認。
いくつもの苦難を二人で乗り越えてきたからこそできることである。
「やっぱり変ね。明らかに様子がおかしい。」
「あぁ、5体とも、怒りで我を忘れてやがる」
「もしかして、操られてる?」
「馬鹿か、あんな化け物をそれも5体、一気に操れる魔法があってたまるか。」
「でも、それ以外、考えられないじゃない。それに見て、神族は、怒りを抑える種族と聞いているのに今のあの表情。」
「ああ、ありゃえげつねぇわ。切れてる時のお前みてぇだ。」
「あっ?なんか言ったか?」
「いや、別に。」
「とにかく、多分あの5体は、感情か精神かわからないけど、操られてるいるわ。」
「あぁ、そういう考え方が妥当だな。」
「となると、倒すじゃなくて魔法を解く方に切り替えてましょう。」
「そうだなぁ、ってなるとあれしかないか、」
「そうよ。もうあれしかない。」
「覚悟を決めるか。」
「とっくに決めてるわよ。」
二人は、防御魔法を展開する。そして、手と手を取り合う。
「これが最後になるかもしんねぇな。」
「えぇ、こればっかりわ、なんとも言えないわ。でも、この子を産むまでは、死ねない。」
「あぁ、俺もこいつにあいてぇ。」
「「必ず生きる。」」
二人は抱き合い、額同士をつなぐ。
すると今度は虹色の光が放たれ始めた。
それは、
如何なる魔法をも無効にすることができる最高の魔法、それからずっと語り継がれることになる祝福の輝き」
「「リヤン」」
すると孤島カルデアに虹色の輝きが広がる。
大地な燃え盛る炎が消え、緑が元に戻る、
ただ建造物などは瓦礫から砂に帰る。
そして、5体の最強種もそれぞれその光に包まれ、我を取り戻した。
「我々は一体!?」
最上位種族達は、周りの状況を未だに掴めずにいた。
「何ということを」
神族は落胆とともに己のやったことを悔いていた。
「あのもの達は!?」
神族は、リゲル、ミーティアの方に向かって飛び込んでいった。
孤島カルデアのど真ん中でリゲルとミーティアは寝転んでいた。
「はっはっ、もう体もボロボロだわ。」
「そうね、もう動けない。」
すると空から一つの影が飛んで向かってきているのに気がついた。
「いや、もう戦闘は無理だぞ。」
リゲルがそういっていると、飛んで来た影は二人のすぐそばまで来た。
「礼をいう。人間の者たちよ。」
神族はまず頭を下げた。
「我は神族の主神ジェフである。」
「「えっ?」」
二人はこの状況についていけなかった。
本来、神族が人間に頭を下げるなどないからだ。
主神とは、神族の最高位である。そんな大物が簡単に頭を下げたのだ。
「はっはっ、なんかどっと疲れちまった。」
リゲルは寝転びながら笑い出した。
そのあと続々と残りの4体もこちらに向かって降りてきた。
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