BLACK OUT HOKKAIDO
今日、そして昨日。
『最近、北海道でもインフルエンザ、流行ってますよね』
『そうですね〜、予防接種しました?』
『しました、しました。やっぱり大事ですよ、予防接種。』
『私まだ行けてないんですよ〜』
『あらぁ〜来週ラジオお休みしちゃうかもよぉ〜』
『そうなんですよ〜、明日、行きます!それまで気をつけなきゃですよ、』
『紅茶が良いとかよく言いますよねぇ』
『え!?そうなんですかぁ〜?私紅茶好きでよく飲むんですよ〜』
『良いですね〜、はい。それでは…お便り届いています。ラジオネーム…』
私は車のエンジンを切る。ラジオもそこで止まる。
予防接種、か。風邪なんてかかるときはかかるんだ。そんなしたって意味ないだろう。それが私の考えだ。
紅茶が予防に良いというのは知らなかった。今日は帰りに紅茶でも買って帰ろうか。私は地元、北海道の市役所で働いている、ごく普通の一般人だ。今日もごく普通に過ごしている。いつも通りに、この職場に。
書類の山と向き合う毎日。時折、私は全てを投げ出し何処か遠い所へ行きたくなる。私はこんな普通に生きていく様な男じゃない筈だ、と。だがそう思った時には、こう思う。こんなことを考える私はやはり普通だなぁ、と。今こう普通に仕事して普通に生活している事に感謝をしなければいけない。私は幸せだ。安定した仕事の中に家族もいて。きっと私は幸せな筈だ。
今日もまた自分の席に座る。
「この辺は、ほんっっとなんもねぇなぁ〜。今日は落し物の1つもなかったじゃねぇか。」
「渡部さん、平和でいいじゃないですか、」
夕方。冬の北海道はもう真っ暗だった。
「そうは言ってもよぉ、俺はドラマの刑事みたいに事件の調査〜みたいなやつに憧れてこの仕事はじめたはずなのに、なにこんな小さい交番でなにしてんだか…」
「ほら、夜のパトロール、行きますよ。」
「へいへい。」
小さな町の2人の警察官はパトカーに乗りパトロールをはじめる。
警察官の1人、渡部はわざわざパトカーにラジオカセットを持ち込み、カセットテープで演歌を聴き始めた。
「渡部さん、またその曲ですかぁ?」
「いいじゃねぇか、文句あっか」
「そりゃありますよぉ〜、なんでしかもわざわざカセットテープで聴くんですか」
「わざわざシーデーを買う必要もねぇだろ。にしてもなんで今日もパトロールなんかしなきゃいけないのかね、」
「ラジオつけてもいいですかぁ?」
「俺がこいつを聴いてんだろ!お前は運転に集中しろ!」
「はいはい。」
パトカーを運転している警察官、山崎が勢いよくブレーキを踏んだ。
「おい!なんだ急に…おい、ばあさんか、道路をふらつきやがって…」
渡部はラジカセで流していた演歌を切り、外に出た。
「大丈夫ですか?ここは、危ないですから、ちゃんと、歩道を、渡って、下さいね!」
渡部がそう声をかけると、その70代後半くらいのおばあさんはゆっくりとこっちを向いた。
暗かったが、その顔色は真っ青なのがわかった。低く苦しそうに呻いている。
「お、おい、ばあさん!大丈夫か?」
ゆっくりとふらついているおばあさんの脇の下に渡部は肩を回し、おばあさんを支えた。
おばあさんが渡部に顔を近づける。体を密着させ、支えているといえど、その妙な距離感に渡部は嫌悪感を覚えたが、渡部は黙っておばあさんをとりあえず道路脇に座らせる事にしたので、ゆっくりと道路脇に誘導する。すると、おばあさんの近づいていた顔がとうとう渡部の首元まできた。だが、渡部は黙っていた。
それにはパトカーから降り見ていた山崎も違和感を覚え、山崎はおばあさんに近づく。その時だった、おばあさんが勢いよく渡部の首元に噛み付いた。
「おい!なんだ!ばあさん!噛むんじゃねぇ!」
「どうしましたか!?なにかありましたか!?」
おばあさんは苦しそうな呻き声を出し首元に噛み付いたまま何も言わない。
「くそ!痛え!ばあさんとは思えねぇ強さだぜ!おい!話せ!」
渡部がおばあさんを突き飛ばす。
強くコンクリートにおばあさんが叩きつけられる。
「やっちまった…おい!ばあさん!大丈夫か!?なんだ、急に!?」
「大丈夫ですかー?」
おばあさんは苦しそうな呻き声をあげるばかりでなにも言わない。
「くそ、話が通じねぇ。めんどくせぇ、置いてくぞ。こんなばあさん、」
「えっでも…」
「行くぞ!」
「……はい。」
パトカーはおばあさんを避け、2人はパトロールを再開した。
「なんだったんだ、あのばあさんは。」
『そうですね〜、予防接種しました?』
『しました、しました。やっぱり大事ですよ、予防接種。』
『私まだ行けてないんですよ〜』
『あらぁ〜来週ラジオお休みしちゃうかもよぉ〜』
『そうなんですよ〜、明日、行きます!それまで気をつけなきゃですよ、』
『紅茶が良いとかよく言いますよねぇ』
『え!?そうなんですかぁ〜?私紅茶好きでよく飲むんですよ〜』
『良いですね〜、はい。それでは…お便り届いています。ラジオネーム…』
私は車のエンジンを切る。ラジオもそこで止まる。
予防接種、か。風邪なんてかかるときはかかるんだ。そんなしたって意味ないだろう。それが私の考えだ。
紅茶が予防に良いというのは知らなかった。今日は帰りに紅茶でも買って帰ろうか。私は地元、北海道の市役所で働いている、ごく普通の一般人だ。今日もごく普通に過ごしている。いつも通りに、この職場に。
書類の山と向き合う毎日。時折、私は全てを投げ出し何処か遠い所へ行きたくなる。私はこんな普通に生きていく様な男じゃない筈だ、と。だがそう思った時には、こう思う。こんなことを考える私はやはり普通だなぁ、と。今こう普通に仕事して普通に生活している事に感謝をしなければいけない。私は幸せだ。安定した仕事の中に家族もいて。きっと私は幸せな筈だ。
今日もまた自分の席に座る。
「この辺は、ほんっっとなんもねぇなぁ〜。今日は落し物の1つもなかったじゃねぇか。」
「渡部さん、平和でいいじゃないですか、」
夕方。冬の北海道はもう真っ暗だった。
「そうは言ってもよぉ、俺はドラマの刑事みたいに事件の調査〜みたいなやつに憧れてこの仕事はじめたはずなのに、なにこんな小さい交番でなにしてんだか…」
「ほら、夜のパトロール、行きますよ。」
「へいへい。」
小さな町の2人の警察官はパトカーに乗りパトロールをはじめる。
警察官の1人、渡部はわざわざパトカーにラジオカセットを持ち込み、カセットテープで演歌を聴き始めた。
「渡部さん、またその曲ですかぁ?」
「いいじゃねぇか、文句あっか」
「そりゃありますよぉ〜、なんでしかもわざわざカセットテープで聴くんですか」
「わざわざシーデーを買う必要もねぇだろ。にしてもなんで今日もパトロールなんかしなきゃいけないのかね、」
「ラジオつけてもいいですかぁ?」
「俺がこいつを聴いてんだろ!お前は運転に集中しろ!」
「はいはい。」
パトカーを運転している警察官、山崎が勢いよくブレーキを踏んだ。
「おい!なんだ急に…おい、ばあさんか、道路をふらつきやがって…」
渡部はラジカセで流していた演歌を切り、外に出た。
「大丈夫ですか?ここは、危ないですから、ちゃんと、歩道を、渡って、下さいね!」
渡部がそう声をかけると、その70代後半くらいのおばあさんはゆっくりとこっちを向いた。
暗かったが、その顔色は真っ青なのがわかった。低く苦しそうに呻いている。
「お、おい、ばあさん!大丈夫か?」
ゆっくりとふらついているおばあさんの脇の下に渡部は肩を回し、おばあさんを支えた。
おばあさんが渡部に顔を近づける。体を密着させ、支えているといえど、その妙な距離感に渡部は嫌悪感を覚えたが、渡部は黙っておばあさんをとりあえず道路脇に座らせる事にしたので、ゆっくりと道路脇に誘導する。すると、おばあさんの近づいていた顔がとうとう渡部の首元まできた。だが、渡部は黙っていた。
それにはパトカーから降り見ていた山崎も違和感を覚え、山崎はおばあさんに近づく。その時だった、おばあさんが勢いよく渡部の首元に噛み付いた。
「おい!なんだ!ばあさん!噛むんじゃねぇ!」
「どうしましたか!?なにかありましたか!?」
おばあさんは苦しそうな呻き声を出し首元に噛み付いたまま何も言わない。
「くそ!痛え!ばあさんとは思えねぇ強さだぜ!おい!話せ!」
渡部がおばあさんを突き飛ばす。
強くコンクリートにおばあさんが叩きつけられる。
「やっちまった…おい!ばあさん!大丈夫か!?なんだ、急に!?」
「大丈夫ですかー?」
おばあさんは苦しそうな呻き声をあげるばかりでなにも言わない。
「くそ、話が通じねぇ。めんどくせぇ、置いてくぞ。こんなばあさん、」
「えっでも…」
「行くぞ!」
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パトカーはおばあさんを避け、2人はパトロールを再開した。
「なんだったんだ、あのばあさんは。」
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