ブラックストーリー

ー出会いー

「……ココはどこ?」
私は目を覚まし、独り言を呟いた。でもそれに対する答えはなく、独り言が異様に大きく聞こえるだけだった。ここはどこだろう。それまでの記憶が全く思い出せない。何故ここに来たのか、ここがどこなのか。何もかもが謎だ。でもここにずっと座っていたら飢えて死んでしまうかもしれない。そう思い私は立ち上がる。そろそろ目も慣れてくるだろう。歩けるのを確認して目を凝らしながら歩き始める。コンクリートの床のようだ。歩く度にヒールのコツコツという音が辺りに響く。目が慣れてきた。周りには何もない。上を見上げるとそこには天井がない。ただ、そこにあるのは空じゃなく、永遠に続いていそうな暗闇だった。もっと上に天井があるのだろうか。再び前を向いて歩く。しばらく何もない暗闇が続いた。その時靴の先に何かが当たってコツンという音がした。扉…のようだ。割と大きめの扉がそこにはあった。凝った装飾が施されていて、重そうだった。そっと手をかけ、静かに扉を開ける。なんの音もせずにすんなり開いた。少しだけ開けてするりと中に入る。人の声がする。少し安心して先に進む。するとそこにはまたもや扉があった。どうやらその奥に人がいるらしい。扉にそっと耳を当て、息を殺して中の様子を伺う。あまり聞こえない。しょうがない。扉を少し開ける。中を見るとそこには衝撃の光景があった。


そこにはたくさんの女性がいた。青く、キラキラしたドレスを身にまとった女性。黄色いドレスがよく似合っている女性。ピンクのドレスを着た女性。原色が詰まったドレスを着ている女性。髪が物凄く長い女性。さらには赤いずきんを被った少女までいた。その人達は何かを争うように話していた。
「なんなの?この世界は。早くアタシがヒロインの世界に帰して欲しいわ!こんな所、ヒロインのアタシが居るべき場所じゃないわ!!」
青いドレスの女性が叫ぶように言う。
「ちょ、ちょっと落ち着きなさいよ。私だって早くここを出たいわ。」
黄色いドレスの女性がなだめる。
「そうよぉ。私だってこんな所、早く出たいわぁ。」
ピンクのドレスの女性がのんびりと言う。
「そうね。まずは落ち着くことが大事ね。」
原色のドレスの女性が冷静に言う。
「そうよそうよ!一旦落ち着いて?」
髪の長い女性が明るく問いかける。
「落ち着くって言ってもねぇ。こんな状況じゃ落ち着けないよ〜。ボクだって早くここを出たいんだから。」
赤いずきんの少女は青いドレスの女性と同じ意見のようだ。あまり仲が良いとは言えなさそうな人達だ。去ろうとして後ずさりした瞬間、コツンッと大きな音を立ててしまった。その女性達が一斉にこちらを向く。
「誰っ?!」
やってしまった。立ち上がり服の汚れを払う。扉を開いて中に入り、
「ごめんなさいっ!!!!」
と謝った。すると女性達は驚いたように目を丸くし、私をジロジロと見た。
「今まで見ていない顔ね?」
「貴女もどうやって来たのか分からないの?」
「他に誰かいたの?」
質問を畳み掛けられ、困惑してしまう。すると黄色いドレスの女性が
「ちょっと!そんなに問いただしたら可哀想じゃない!」
と周りを落ち着かせてくれた。
「ごめんなさいね。えっと何から話せばいいのか……」
すると赤いずきんの少女が
「まずは座ろうよ!!ボクと同じくらいの歳の子が来てくれて良かった!!お茶でも飲もうよ!!」
明るく言ってくれた。確かに私とこの子意外は皆年上そうだ。
「あ、ありがとう。」
そう言って席に着く。ピンクのドレスの女性が
「はぁい。これ、私がブレンドした紅茶。美味しくないわけが無いから飲んでごらんなさぁい。」
と紅茶を出してくれた。真っ赤だが、ほのかにバラの香りがした。1口飲むと口1杯に甘い味が広がった。
「美味しい…」
そう呟くと、
「そうでしょう?私がいれるお茶は世界一なのぉ。」
と自慢げに話してくれた。それを見ていた赤いずきんの少女は
「ボクも美味しい紅茶、飲みたいなぁ?」
とアピールをした。するとピンクのドレスの女性は
「あらぁ。あなたは自分でいれればぁ?」
と言った。この2人は仲が悪そうだ。
「そこまでにして、まずは自己紹介をしましょう。」
と黄色いドレスの女性が仕切った。
「まず、私はベル。よろしくね。」
「次に、この青いドレスの人はシンデレラ。ちょっとキツい言い方をするけど本当はいい人よ。」
「あぁ?ベル、あんまり調子に乗ってると大変なことになるからね?」
なるほど、確かにキツそうだ。
「はいはい。次はこの赤と黄色と青のドレスの人。この人は白雪姫。」
「よろしくね。」
「次はこの凄く髪の長い人。この人はラプンツェル。」
「よろしくね!」
「で、このおっとりした人はオーロラ。」
「あらぁ。おっとりって褒め言葉なのかしらぁ。よろしくねぇ。」
「そういう喋り方がおっとりなのよ。」
「最後に、この赤いずきんの子はそのまま赤ずきん。本名は教えてくれないのよ。」
「ここでは本名なんて大事な事じゃないでしょ?よろしくねん。」
「これで全員よ。あなたの名前は?」




                    「私は……アリス。」




              ーここから全てが始まったー

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