全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

132話 天拳vs滅闘拳

  「それでは……始め!」

 理事長の宣言で奏音は杖を構えた。

 「お願い、みんな!」
  
 奏音がそう言うと、少なくても百以上のモンスターの大群が一瞬で召喚された。

 「出せる数、増やせるようになったんだな」

 「私だってただ遊んでたわけじゃないよ!」

 奏音の回復以外のスキル、〈魔物支配〉。
 倒した魔物全てを己の意思のままに動かせる便利なスキルだ。
 これは固有スキルな為か、俺が使うことは出来なかった。
 ……だけど、これ魔族とかにも効くんだったら便利だよなぁ。
 まあ、条件は自分一人で戦わなければいけないから、強くないと強い魔物を支配できないのが欠点だ。

 「「「「「グルォォォオオ!」」」」」
 
 魔物たちが奏音の意思に従い俺へと突進してくる。

 「だが甘いな。“動くな”」
 
 俺は魔物支配を上回る言霊で魔物たちの動きを封じる。
 俺が普通に戦ったら殺してしまうかもしれないから、そこで大人しく待っといてほしいものだ。

 「みんな戻って!」

 そして魔物たちは奏音の魔法陣の中に強制送還された。

 「メルフォース!!」
  
 奏音が何かを唱えたと思ったその瞬間、赤い鎧が奏音に纏わりつき、急激な魔力の上昇を感じた。

 「……すごいな。それは合体なのか?」

 「うーん……ちょっと違うね。これは支配に置いているみんなの力を身に纏ってる感じかな?」
 
 「成る程」

 これならそれほどの魔力上昇も頷ける。
 ……今はネーミングセンスは放って置くとしよう。俺が言えた事じゃないし。

 「じゃあ行くよ!」

 その瞬間、奏音の姿がかき消えた。

 「なっ!?」

 そして俺は急いで振り向き、思わずトルリオンを取り出して奏音の拳とぶつかった。
 流石に俺もこれは予想外だった。
 少し油断はしたとしても、完全に不意を突かれた。

 「くぅ……。やっぱり今のは防がれちゃうか」

 「いや、まさかここまで強くなってるとは本当に予想外だな」

 「ふふっ!勇者としてお兄ちゃんに負けるわけにはいかないからね!」

 「……俺も一応勇者なんだが?」

 「まあまあ。細かいことは置いといて……行くよ!」

 そこからは苛烈な攻撃が繰り広げられた。
 奏音のメイン武器は杖だが、拳でも十分戦えていた。今は肘から指の先まで真っ赤なガントレットの様なものを装着している。
 しかし、俺が防御に回っているのか、一度もカスってすらいない。

 「流石にトルリオンはやり過ぎか?」

 「いや、このままでいいよ。今から全力で行くから!!」

 すると超スピードで俺の懐まで迫って来ていた。
 よし。今度は見える。
 じゃあここは礼儀に則って俺も拳で行こう。
 そして俺はトルリオンを装着した状態のまま鞘にしまい、俺が編み出した奥義の構えをとった。

 「天拳:ブラストッ!!」

 「滅闘拳奥義、拳気死龍!」
 
 この技の意味は拳と気を以ってして龍をも殺すと言う意味だ。簡単に言うと魔力を拳に集中させまくって遠距離でも近距離の敵をも殺すことが出来ると言うことだ。
 溜めた魔力を一斉に開放し、敵を貫通する必殺の技だ。
 もちろん死なないようには手加減してるけど。

 お互いの拳が激突し、場が荒れる。

 「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 拮抗はすぐに崩れた。
 やはり俺の拳の方が強かったらしく、奏音の拳を弾き、奏音がいる真下の空間を撃ち抜いた。
 この空間は非常に頑丈で、俺が全力で攻撃しないと砕けることはない。
 そして拳は地面を打ち、溜まっていた魔力が一斉に放出される。

 「きゃぁぁぁっ!」

 軽い奏音は為す術なく吹き飛ばされた。

 「よっと」
 
 俺は奏音の前に先回りしてしっかり受け止める。

 「あ、ありがとうお兄ちゃん……」

 「今回は俺の勝ちだな」

 「あ〜あ。今回はお兄ちゃんに勝つ自身はあったのに!」

 「フハハハッ!俺に勝ちたいんだったら後十年は修行してこい!」

 「むっ!」

 だけど強くなっていたのは事実。
 そこは褒めるけどな。

 「じゃあ降りるか。……って言うか理事長たち大丈夫なのか?」

 「もう!お兄ちゃんがやり過ぎなんだよ!」

 「えぇ……。一々気絶させるの面倒臭いじゃん」

 「出たよ……お兄ちゃんのめんどくさがり屋」

 「俺は楽を追求する男だからな」

 「……そうは見えないけど?」

 「そうか?」

 そんな会話をしながら俺たちは下へ降りていくのだった。
 
 
 

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