全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

104話 安全保障

 オークション開始が宣言され、いろいろな品が紹介されていった。
 俺たちのところには見にくい人用の為に、司会者と品物が映されている魔導具が設置されている。
 まあ俺は見ないけどね。
 やっぱり肉眼で見る方が何かといいかもしれないし、何かあれば千里眼がある。
 
 「何か欲しい品物でもあった?」

 「うーん……」

 特に欲しいものはなかったかなぁ……。
 そうしている間にも品物が紹介されていく。
 このオークションでは、どうやら入札、競争、落札は最後にやるらしい。
 そっちの方が混乱を避けれるのだとか。

 「今はまだ無いかなぁ……」
 
 「やっぱり?私もなんだか今は微妙かなぁって思ってる」

 「だよな」

 俺たちの価値観が崩壊しているのかは分からないが、お金を出しまで欲しいと思える品物が無いんだが……。

 『では次に……え?品物がまだ届いていない?』

 どうやらアクシデント発生のようだな。
 
 『すいません、ストリッチ子爵。少しこちらへ来ていただけますか?』

 すると、典型的なポッチャリ体型の人がステージ裏へと向かった。
 気になった俺は分身体である、このアステカ君に現地へ向かってもらうことにした。
 説明しよう!アステカ君とは俺と五感を共有した新型ロボットである!小型軽量な為、持ち運び、又は隠密機動の時には便利である。
 いざという時のために作っておいて正解だったぜ!

 早速俺はアステカ君をステージ裏へ向かわせる。
 アステカ君にはステルス迷彩という高機能も搭載しているため、バレる心配はない!

 「……ん?なんだあれ?」

 アステカ君が映したものはさっきのポッチャリ子爵がフードを被った男に怒鳴っていたところだ。
 その事に疑問を持った俺は更にアステカ君を近づけた。 
 そしてようやく子爵の会話を聞き取ることができた。

 「まだスプリガンは捕まらないのか!?」

 「申し訳ございません。目下捜索中であります」

 「けっ……!せっかくスプリガンたちを追い詰めたのに……!」

 ……どういう事だ?
 コイツらが……コイツらがスプリガンの奴らを追い詰めたのかッ!!
 俺は怒りで荒れ狂いそうになっていた。
 ……あの可愛らしい小動物のようなスプリガンを追い詰めるとは……俺に喧嘩を売っていると見た!

 「すまん、ちょっと出かけてくる」

 「え?どこ行くの?」

 「すぐ戻るから」

 俺はそう言って、その場から立ち去った。

 立ち去った俺はすぐさまあのステージ裏へと向かった。
 オークション自体は進行してもらうが、俺は少し許せないことがある。

 「オラオラ!カチコミだ!」

 「な、何だね!?」

 いきなり俺が乱入した事により、相手さんはとても驚いていた。

 「だからカチコミに来たっていってんだろ?俺はスプリガンという小動物を追い詰めたことが許せねぇんだよ!」 

 本心をブチまける。
 すふと、ポッチャリ子爵は子犬のように震え、こちらは言い返そうとしていた。
 子犬の方が現実的に見て1京倍可愛いけどな!
 
 「わ、私を誰だと心得る!?あの最強とされているアルスター帝国の子爵であるぞ!」
  
 ほう……あのアルスターのねぇ……。

 「逆に聞くが、俺を誰だと思ってるんだ?」

 「——は?そんなのただの一般人に決まっておるだろう?」

 ……まあ確かに俺の服装はそう見えるかもしれないけども!
 あれぇ?俺、そちらの兵士さん100万人潰したはずなんだけどなぁ……子爵辺りには俺の顔は広まってないのか?

 「俺は金山 透だ」

 「——ぷっ……!あの悪魔がこんなところにいるわけないだろうに!」

 ムカッ!

 「それにあの悪魔はもっと凄いオーラを纏っていると聞く。お主はそれが無いではないか?」

 ほほう……コイツはそこまで俺をコケにしたいのですか……。
 ならお望み通り見せてやりますよ!
 俺は子爵の肩に触り、こう唱える。

 「〈転移〉」

 そして俺と子爵はだだっ広い平原へと飛んだ。
 ここは大体アルスター帝国付近の平原だ。
 ここなら文句は言われないだろう。

 「なら、お望み通り見せてやるよ」

 俺は自身を縛っている枷を解放する。
 すると、俺を中心にあり得ないぐらいの量の魔力が放出された。

 「ヒ、ヒィィッ!」

 子爵はなんとも情けない声を出した。
 そして子爵は俺が近づくと動くことすら出来ず、ただ俺を見ることしかできなかった。
 
 「金輪際、スプリガンに手を出すな!もし出してみろ……お前らの言っている悪魔がお前らを滅しに行くってな!!」

 「分かりました分かりましたからオタスケェェエェェェェエェェッ!!」

 そして子爵は帝国の方へ脱兎のごとく逃げ出した。
 ふぅ……これでスプリガンたちの安全は保障さレルだろうな。めでたしめでたし。
 そして俺はオークション会場へと戻った。

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