全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

101話 トッモロコシ

 「いらっしゃいませ!」

 俺たちが入ると元気よく挨拶する声があった。

 「何名様ですか?」

 「六名で」 

 「かしこまりました!それではお座席へ案内させていただきます」

 そして俺たちは店員さんに付いて行き、案内された座席へと座った。

 「雰囲気のいいお店だな」

 「ですよね!」
  
 何故かウルティマがドヤ顔で俺を見つめてくる。
 ……何故にドヤ顔?
 まあここのお店を自慢したくなる気は分からんでもないけど。

 「じゃあ何頼むか決めてください」

 ウルティマは俺たちにメニューを渡してきた。
 ……何にしようかな?
 何分こういったところに来るのは初めてなもんだからどんな料理があるかさえも分からん。
 こういった時に俺がよく使う手は、

 「オススメをください」

 だ。
 これなら文句は言われないはず!

 「透は何にするか決まった?」
 
 「オススメなのを」

 「残念。ここの料理は全てオススメですからしっかり自分で考えてくださいね?」

 ウルティマが俺の退路を潰してきた。
 くっ……!
 なんてことをしやがる!これだったら選ばなくても良いやつが出てくるという手が使えないじゃないか!

 「……仕方ない。しっかり考えるか……」

 「そうですよ。何事も経験です」

 て言ってもなぁ……。
 名前を読んでいっても俺の分からないものしかない。
 ……おっ、これなんか良いんじゃないか?
 
 そこには〈トッモロコシのボイルドブトゥルム仕上げ〉と書かれていたものがあった。
 トッモロコシとはこの世界でのトウモロコシの別名だ。
 トウモロコシなら不味いものなんてない!
 そう思った俺はこれにすることを決めた。

 「俺はトッモロコシの奴で」

 「トッモロコシのボイルドブトゥルム仕上げですね。分かりました」

 ウルティマが全員のメニューを聞いていく。
 はっきり言ってこのトッモロコシのボイルドブトゥルム仕上げはメインではないと思う。
 まあその場合は別のものを頼めば良いんだけど。

 「すいません。——」

 ウルティマが次々にメニューを店員に伝えていくと店員は元へ戻っていった。

 「お待たせしました。こちら、トッモロコシのボイルドブトゥルム仕上げでございます」

 何だが気品のある老年の執事服を着ている人が料理を運んできた。
 そしてトッモロコシが俺の前に置かれる。
 ……思ったより大きいな……。
 そのトッモロコシは40㎝ぐらいの長さで厚さが20㎝ぐらいあった。
 そしてそのどれもギッシリ詰まっている。
 こんな広さとは流石に予想外だ。
 まあでもこれだけのトウモロコシを食べることができるんだから良いんだけどな!

 「みんなは何を頼んだんだ?」

 「私は海鮮系パエリアです」

 一番先に答えたのはアルスだった。
 パエリアか……やっぱり変に地球の文化が伝わってるよな。
 何でパエリアがあってカレーがないんだろうな?

 「私は海鮮丼!」

 次はエルが答えた。
 ここから少し南に行ったらもう海だからな。産地直送のを使われているはずだから美味しいだろうな。

 「私は牛丼だよ」

 ルーナは牛丼ときた。
 ……これまた意外なものがきたな……。
 今までの二人は多少は魚介類が入っているけど、今回は全く無しだな。
 
 「私は透のと同じだよ」

 よく見ると、楓の前のテーブルには俺と同じトッモロコシが置かれていた。
 ……友よ!俺は楓がトッモロコシを選んでくれたことに感激していた。

 「じゃあ食べましょう?」

 「……そうだな」

 ちなみにウルティマはスイーツ三品ぐらいだった。
 ……夜にスイーツはそんなに要らないかな……。

 「「「「「「いただきます」」」」」」

 そして俺たちは絶品だろう料理を食べ始めた。
 
 う、ウメェェェェェェェェ!!
 こんなトウモロコシ……トッモロコシは食べたことがねぇ!
 美味しすぎて心の中で奇声を発しちまったぜ!

 「どう?」
 
 「最高にうまい」

 俺は文句なしの星5評価を付けると、ウルティマは嬉しそうな顔をしていた。

 それから十分後、結構あったトッモロコシが一瞬にして消えていった。
 ……どうしよう?もう一個いっちゃう?
 そう思って周りを見てみると、ほとんど全員食べ終わりかけていた。
 ……これは少し悔しいが諦めるしかないか……。
 また明日来よ!
 そう思った俺であった。

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