全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

74話 第二種目 絶対零度耐久変則戦

 学園周回リレーが終わった後、俺は休む暇もなくすぐに移動した。
 次は……絶対零度耐久か……。
 内容はシンプルなんだろうけど、想像がつかない……。
 移動しながら俺は次の種目のことを考えていた。

 「久しぶりだな」

 そう言って話しかけてきたのはアルベルトだった。
 なるほど。絶対零度には氷の耐性を持つ奴に行ってこいということか。

 「久しぶり」

 「さっきの 試合、見ていたぞ。強くなったんだな」

 「当たり前だろ?それで、そっちは何人増えたんだ?」

 俺は聞きたかった事を聞く。

 「2人だ。クルートとマキタという名前で二人とも結構な使い手だ」

 「へぇ……」

 まあ結構な使い手じゃなければSクラスになるのは到底無理なんだろうけどな。

 「この試合は負けるわけにはいかないぞ」

 「こっちもだ」

 「トオルのいるクラスはトオルが育てたのか?」

 「よく分かったな?」

 「普通、トオル以外にあそこまで成長させるのは並みの教師では不可能だ」

 そうだろうなぁ……。
 だって俺が上げたのは主にレベルだもん。
 しかもあの場所で。 
 普通の先生なら主に演武祭のことだけを考えて練習しているように感じる。

 「とりあえず……会場に向かうか」

 「そうだな」

 そして俺たちは二人で話しながら向かった。


 「えっ!?まだ告白してなかったのか!?」

 俺はアルベルトについて驚きを感じていた。
 それは同じクラスで両想いのベネッタさんに告白していなかったことだ。
 
 え?なんで俺が二人が両想いであることを知っているって?
 スキルだよスキル。
 〈第六感〉というスキルで相手の心がなんとなく分かる感じのスキルだ。
 そして俺は二人が両想いである事を知った。

 「だって……侯爵と伯爵の違いもあるし……そういうことは学園を卒業してからにしたい……」

 「はぁ……。で、本音は?」

 「告白してもし断られるのが怖い……」

 この男は!
 まぁそう考えるのは男子だったら当然だろうと思うけど!
 幼稚園の俺が勇気を振り絞って告白したんだぞ?
 ならアルベルトは幼稚園以下だな!

 「全く……ダラシない……。ちゃんとこの大会が終わったら告白しろよ?」

 「それは……」

 「じゃあ賭けをするか。この勝負、俺が勝てば告白しろ。そして俺が負けたら何でも一度だけ命令していいぞ?」

 「……その勝負乗った」

「そうこなくっちゃ。じゃあ今からは敵同士だ。お互い頑張ろう」

 「敵に塩を送るのか?」

 「俺は敵でも礼儀はしっかりする人なんでね」

 「その傲慢さが身を滅ぼすことのないようにな」

 「そっくりそのまま返すぞ。そっちこそ足元を掬われないようにするんだな」

 俺たちは闘志をむき出しにして、言動に火花を散らせた。
  
 会場は最初に集まった闘技場で絶対零度耐久は行われるのだとか。
 だから俺はそこへ向かっていた。

 「あ!ちょっと待って!君がカネヤマ トオル君であってる?」

 何か知らない人に話しかけられた。
 ここにいるということは何かの係の先生、ということなのか?
 それならハンデについてなのだろう……。

 「理事長から、トオル君のハンデを伝えろって言われてるから言うね。〈今回のこの種目はトオル君だけは別の趣旨でやってもらう。あの永遠に溶けないとされていた永雹石の破壊だ。これが出来たら君は一位、できなかったら最下位となっている〉
 だって……本当にいいの?」

 ……これ、リレーの時も聞かれた気が……。

 「大丈夫ですよ。それで破壊すると言っても全ての魔法を使っていいんですか?」

 「全然問題ないよ。あの絶対に壊せないとされていた永雹石を破壊出来るならね……」

 何だか先生が遠い目をしている……。
 過去に挑戦して散っていったんだろうな……。
 
 「分かりました」

 「それと破壊してもらっても全然構わないよ。重要なエネルギーというよりかは輝きが少々綺麗という理由で保管されていたものですし……」

 理由が雑いっ!
 少々綺麗で残しておくか!?普通?

 「ではあなたの健闘をお祈りしておきます」

 「ありがとうございます」

 俺はそう言って闘技場の方へと向かった。

 闘技場付近に着くと既に一年生の戦いは始まっていた。

 「やはりここはSクラス!微動だにもしません!このまま勝つのはやはりSクラスか~!」

 やはりSが優勢か……。
 他のクラスも頑張ってはいるんだろうけど、あの巨漢相手だとなぁ……。

 「決着っ!!勝者はSクラス!この試合の結果発表!三位Cクラス3!二位 Aクラス1!一位はSクラスとなりました!」

 突然の結果となった。
  Bクラスが三位には入れなかったものの、Cクラスが入っている。
 ……やっぱりC以降は上位に上がってくるのは難しいかな……。
 今回の俺たちがどんでん返しを起こしすぎているだけだ。

 「次は二年生です!どうぞ!」

 アナウンスとともに俺はみんなも入っているであろう闘技場へと入った。……かと思えばまさかの俺一人で、目の前には巨大な氷が存在している。
 
 あれ?みんなはどこに行ったんだ?
 ……俺だけ別の会場へと飛ばされたか……。
 魔法の発動を見抜けない俺ではない。
 ……あらかじめ言ってくれてたら行っていたのに……。
 それよりも……。

 「まずはトオル選手からの挑戦です!」

 理事長ぉぉぉぉお!ハメやがったな!
 これ石じゃないじゃん!?
 このデカさのどこが石なの!?

 「トオル選手では情報によると絶対零度は耐えられるという情報を手にしました!故に今まで誰も壊すことが出来なかった永雹石の破壊に変更しました!」

 マジか……。
 いつそんな情報を……まさか!
 多分エルが二人に言って、それが理事長に伝わったんだろうな……。
 エルと楓とルーナはもう仲良しだからな。

 「これで壊すことが出来たのなら一位、出来なかったのなら最下位ということになります!大変不利な条件ですが勇者なら成し遂げてくれるでしょう!」

 その一言でギャラリーは大いに盛り上がる。
 ……俺にはその声しか聞こえないんだけどな。
 周りは無人。文字通り誰もいない。
 ……よくこんなんで俺が不正をしないって断言できたもんだな……。

 「ではレディー……ゴー!」
 
 きっと統一されているであろう開始の合図で俺は永雹石に触れ、鑑定を使った。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<永雹石>

 自然の魔力が極限までに圧縮された石。 
 普段は冷たく感じるが、それは魔力による現象。
 これを壊せるものは今のところ存在していない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 これが永雹石か……。
 なるほど。魔力が濃縮したのだったらそれこそ、その魔力を分散するか、魔力ごと消滅させるしかないだろうな。

 「手始めに……〈炎魔法〉インフェルノ」

 俺の指先から圧縮された煉獄の炎が出た。
 その炎は螺旋状に進み、永雹石にぶち当たった。
 
 ものすごい音を立てるが、永雹石は傷一つ付いていない。
 やっぱり消滅させるしかないか……。
 出来れば秘匿しておきたかったが、ここで負けたら勝負にも負けそうだ。
 それにこの魔法だけが俺の全てじゃないしな。

 「〈我は願いし。太陽の極光が我が敵を焼き滅ぼすことを。神なる太陽の光はここにあり!この全ての光を集め、ここに顕現せよ!〉」

 詠唱というのはすればするほど威力は上がる。
 例外もあるが、殆どそうだろう。
 そして今使ったのは初期の方の詠唱だ。
 こっちの方が短縮形よりも威力が出るし、別に急ぎでもない。

 「超極大魔法!アトムディストラクション!」

 ちょうど永雹石のところにだけ天空からの極光が覆った。
 そして光が収まると、そこには永雹石の姿はなく、クレーターが残っているだけだった。

 「ふぅ……」

 やっぱり原子消滅魔法は流石に効いたか……。
 もうこれで無理だったら攻撃(物理)だったぜ!

 「こ、こ、これはっ!?何ということでしょう!何かの詠唱を唱えたと思えば空から光が降り注ぎ、永雹石を消滅させた~~っ!!」

 「これは彼が前に言っていた超極大魔法というものですね」

 「そ、それはどのようなものなんでしょうか、陛下!?」

 「その光は全てを消滅させる光。この魔法により帝国兵100万近くを一度で葬ったと聞いております」

 その瞬間にざわめきが広がった。
 あーあ。だから使いたくなかったのに……。
 これだけ強大な力を個人で持っていると知れば快く思わない連中もたくさんいるだろう。

 「……それは本当のことなんでしょうか?」

 「当たり前ですよ。これでも私、嘘はつかない性分ですので」

 「なるほど……。結果!絶対零度耐久変則戦、トオル選手の勝ち〜〜〜っ!!」

 アナウンスで俺の勝ちが発表された時、まるで世界の時が戻ったように歓声が鳴り響いた。
 ……機械を通してだけど……。

 こうして俺は第一第二種目ともに一番を掻っ攫っていったのだった。

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