全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

67話 超トレーニング

 強くする宣言をした後、俺たちはあるところに向かっていた。
 あるところはどこだって?
 皆さんもそろそろお気付きのレベル上げに効率的なあの場所ですよ。

 「じゃあ行くぞー」

 「行くってどこへ?」

 クラスの一人が俺に質問してきた。

 「みんなが強くなる第1段階のところだよ。とりあえずみんな円になってお互いに手が触れているようにして」

 俺の指示にみんなは戸惑っていたけど、指示通り円になった。

 「じゃあ行くぞ」

 俺は再度呼びかけ、誰かの手に触れながら転移を発動させる。
 転移は触れていないと発動しないからな。
 たとえそれが間接的であったとしても発動することができる。
 そして俺たちはある場所へ転移した。


 「ここは……」

 俺は薄暗いところへ転移した。

 「ここはアルスター帝国のダンジョンだよ」

 『えっ!?』

 みんなはここがアルスターのダンジョンということよりも、俺が転移魔法を使ったことに驚いていた。

 「……トオル君は転移魔法を使えるの……?」

 「ああ。ていうかこれぐらい使えないと指導者なんて出来ないからな」

 (((((普通出来ないから!!)))))

 クラスの中でセリフがピッタリと一致した。

 「まあ、それよりもそろそろ訓練するから準備しろよー」

 俺は軽く呼びかける。
 しかしみんなは俺が転移を伝えたことが驚きだったようでしばらく動くことができなかった。

 『はっ!』

 みんなほとんど同じタイミングで我に返った。

 「じゃあ始めるぞ」

 俺がそう言った時、奥から風が吹き荒れ1匹のドラゴンが姿を現した。

 「久しぶりー。て言ってもそんなに経ってないか」

 「そうか?こっちはそれなりに経ったと思うぞ」

 これがドラゴンと人間の時間の感覚のズレだった。

 「で、今日はどうしたの?」

 「訓練だ」

 「トオルの……じゃないよね。そこにいる人たちの?」

 「ああ、そうだ」

 ここはアルスター帝国ダンジョン100階層。
 つまりラスボスであったファフニールがいた場所だ。
 レベル上げはここが一番うってつけだろう。
 ていうか他のレベリング場所を俺は知らない。

 「僕はファフニール。この中には知っている人もいるんじゃないかな?」

 今更だが、ファフニールは念思を使わない。
 そもそもこれは言葉を龍の原型じゃ喋れないから使っているだけであって、ファフニールは使わなくても問題ない。

 『……』

 この黙り様。それに口が開いたまま塞がらない状況を見るからに知っているんだろうな。

 「あはは。そんなに怖がらなくてもいいよ。今はそんな事を起こす気は全く無いからね」

 (そんな事って何っ!?ものすごく気になるんだけど!)

 昔、ファフニールもやらかしたことがあるのだろうか?

 「それじゃあ早速特訓するぞ。何たって1ヶ月でSクラスぐらいまで上げたいからな」

 「「「「「え、Sクラス!?」」」」」

 今はどうなっているか知らないが、一年前のSクラス(俺と楓以外)の1.3倍は強くなってほしいからな。

 「そんなに驚く事か?心配しなくても大丈夫だ。これからみんなに積んでもらうのはレベリングと実戦経験だからな」

 実戦経験に関しては大体本番はどういう感じなのか身をもって体験する事で、いざという時も冷静に対応することができる様になるからだ。

 「じゃあ……何する?」

 「そこで私に振らないでよ!」

 それはごもっとも。
 それで何をやるかだが……。
 
 「ファフニールって今も分身……ていうか召喚で魔物を呼び出せたっけ?」

 「大丈夫だよ。この人数分の魔物をずっと召喚するのは骨が折れそうだけどね……」

 「その時は魔力を渡してやるから。……それで戦う前にみんな一人一人俺と話してもらう。どういったことが出来なくて、どれが得意なのか。
 指導するのならそういうのは把握しておかないといけないからな」

 特性は大事だ。
 相性か合わない特訓をしたとしてもはっきり言って意味がないし、やるなら効率良くやるべきだ。
 
 「じゃあ順番に入ってきてくれ」

 俺は普通の完成済みのテントを作り、中に入る。
 そして中で二人分の机と椅子をも作っていく。

 「それじゃあ入ってくれ」

 このクラスの人数は20人。
 落ちこぼれを分けたと言っていた割には綺麗な数だ。
 数が一番多いのはCかDクラスなのだそうだ。

 (Sクラスも7人しかいなかったからな……)

 それだけ、真ん中に均衡していると言えるだろう。

 「出席番号一番、アリアナ=メストです」
 
 まず最初に入ってきたのは魔法使い風の女の子だった。

 「あ、そこに座ってね」

 俺は椅子に座るよう促す。

 「それで君はどうしてEクラスに回されたの?」

 「私……魔力操作が苦手で……魔力はたくさんあるって言われるんですけど、操作がこれっぽっちもダメでいつも爆発しまうんです……」

 「なるほど……」

 魔力操作が上手くいかず、爆発するということは一つの動作に魔力を込めすぎているという事か。
 分配が苦手なんだな。

 (んー……。俺の能力で変えてやりたいんだけど……。それでいいのか?)

 俺ならこの子の問題点ぐらいなら解決はできる。
 だけど、それは反対に言うと彼女の体を俺が改造するのとほぼ同義なのだ。
 それは果たしていいことなのか?
 
 (うーん……。しばらく試してどうしても無理ならそこは俺の力を使うことにするか……)

 しばらくは問題点を伝えて、それを克服してもらうことに集中してもらうか。

 「……どうですか?」

 「魔力操作で爆発するのは、魔力の込めすぎか原因だろうね。だから意識して抑えて撃つ努力をしてみたらどう?」

 「ありがとうございます!頑張ってみます」

 「おう頑張れ!」

 そう言って彼女、アリアナはテントから出て行った。

 それから何人も相談を行なった。
 自身の魔力量が少ないとか、魔力量が多いのに魔法の威力が弱いとかなどなど。
 魔導師としては重大な欠点をみんなが持っていた。

 「出席番号二十番、ミサタ=ランペルドです」

 「じゃあ椅子に座って」

 何度も繰り返してきたセリフを用い、ミサタを座らせる。

 「じゃあ自身の欠点を聞こうか」

 「俺は生まれた時はものすごい魔力量を持っていたと言われていたんだ。それが年を重ねるごとにだんだん弱くなっていって、今ではこの有様さ……」

 (ふむ……だんだん弱くなると言うことは何だ?呪いでもかけられているのか?)

 圧倒的な才を持ったミサタに嫉妬した誰かが呪いを用いた。
 可能性的にはあるな。

 「ちょっと失礼。〈鑑定〉」

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<名前>ミサタ=ランペルド     <種族>人間
<性別>男
<年齢>17                 <状態異常>ハデスの呪い
<レベル>35
<体力>C
<物攻>D
<物防>D
<魔力>D
<魔攻>D
<魔防>D
<敏捷>C
<運>E

<スキル>
 「炎魔法」、「光魔法」、「魔力操作」、「魔力激増」、「天魔法」

<称号>
 「神の子」、「屈辱を受ける者」、「ハデスの呪いにかかりし者」
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<ハデスの呪い>

 かけられた瞬間からステータスが伸びなくなり、年々ステータスが下がり続ける。
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<天魔法>

 神とそれに準ずる者のみしかしようを許されない究極魔法。破壊力は天変地異を軽々く起こすほど強力である。
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 強っ!!
 思っていたよりもエグいほど強いと思った。
 あ、今のステータスがじゃないぞ。
 呪い解放後のステータスが気になるぅ!

 「パーフェクトヒール」

 俺は完全回復魔法をミサタに向けて使用した。

 「えっ……?」

 すると、ミサタを縛っていたものが解かれ、ミサタの全身から魔力が溢れ出した。

 (……これは予想外……)

 今のレベルだとイマイチだけど、これは将来俺と並ぶんじゃないか?

 (この魔力量……。エルや楓よりも普通に強いぞ……)

 これは魔導演武祭は俺の出番はないな。
 これだけあれば勝てるもん。何もしなくても。

 「トオル……これは?」

 「お前が長年縛られていたものが解放されたんだよ。これがお前の本来の力だ」

 「これが……」

 自我が芽生えた時には時すでに遅し。
 そういう状況でここまで頑張れたのは純粋にミサタの執念の結果だと俺は思っている。

 「それより魔力を押さえておけよ。このままだったら大迷惑だからな」

 魔力の波は魔道具全ての効果を乱す。
 このままだったら街一つの魔導具が使い物になりかねん。

 「ごめん!」

 ミサタはそう謝って瞬時に魔力を己が内に入れ込んだ。

 「じゃあ全員終わったことだし戻るとするか」

 「ああ!」

 俺とミサタは上機嫌でテントから出るのであった。

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