全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

59話 原炎を名乗る龍

 逃げ帰った俺は、自室の部屋に閉じこもることにした。
 そして、だれの侵入も許さないように3重に結界を張る。

 (一つ目は5桁ぐらい。これなら楓たちでも壊せるだろうな。2つ目は7桁ぐらい。これは不可能だろうな。そして3つ目を俺のレベルと同じにする。つまり、余程の偶然がない限り、この結界を破壊することなど不可能なのだ!)

 この世に10桁がそうそういるとは考えづらい。
 
 「俺は引きこもるんだ~~~~!!」

 2日間。俺は外に出ない。
 それが過ぎたら冒険者ギルドに行って金をうけとってからまたひきこもる。
 そしてその次の日には同盟の使者さんがやってくるのだ!

 (ふはははは!これこそ完璧な計画!)

 というわけで寝るか。
 そして俺はこの2日間。
 ほとんど寝ているというだけの自堕落生活を送るのであった。

 
 「透……起きてる?」

 2日目が経った日、楓が俺のところにやって来た。
 ……なぜ真夜中に来る?
 朝でもよかったんじゃないのか?
 俺は朝に弱いんだし。
 そう思いながらも、結界を解除して扉を開ける俺。

 「何か用か?」

 「うん……」

 「とりあえずここで立ち話っていうのも何だし中に入れよ」

 俺は楓を部屋に招き入れた。

 
 「思ったより汚いんだね」

 「そりゃ掃除などしてないからな」

 引きこもりライフを満喫するのだったらこれぐらいの代償は払わざるを得ない。
 自分で処理出来るんだったらいいんだけど、やる気が起きなかったからな。やってない。

 「……学校行っていないって本当?」

 ……バレたか。
 いや、クラスが違うとはいえ、一度ぐらいはルーナも会いに来ているはずだから分かっていると思ってたんだけどな。

 「そうだな」

 「どうして……っ!?」

 「別に楓のせいじゃねぇよ。俺には学校に行くって柄じゃないからな」

 「アイツらのせいなの!?」

 「ん?」

 ……なんか話がずれていないか?
 アイツらって虐めていたあの男たちだろうな。
 それは分かるんだが……何故それが俺が学校に行かないという事になる!?
 確かに利用して退学になろうとしたのは事実だけどさ!

 「そうなんだね……」

 「……」

 俺は頭の中の思考を巡らせるのに夢中で楓の言葉を訂正しなかった。

 「私、ちょっと行ってくる!」

 「あ、ちょっと!?」

 俺の制止も虚しく、楓は転移を使いここから移動した。

 (ちくしょう!そういえば楓も全スキル持ちだった!しかも俺の知らない場所に転移してるんだったら捕まらないぞ!
 ……もうこれは諦めるしかないな。
 虐め連中よ!頑張れ!)

 俺はそう祈ることしか出来なかった。

 その日、とある男子寮でとある男子生徒の悲鳴が響くのであった。

 そして翌日。

 (今日は何時ぐらいに行こうかな?)

 今日はダンジョンの素材について換金してもらうのと、原炎の奴との約束があるからな。
 たとえ学校に行っていたとしても今日ばかりは休む!

 「じゃあ行くか……」

 俺はアイテムボックスから朝食を取り出して食べ、数日ぶりの外に出るのだった。

 
 (〈影〉発動!)

 心でそう思うと、俺の体が透け、他人から見られなくなるようになった。

 (じゃあ行きますか)

 俺は影の使用中は喋らない。
 そうしたら影自体が解けてしまうからだ。

 通路をスルスル進み、通路を迷うことなく王城から脱出することが出来た。

 (ここが異世界での家だからな。流石にもう迷わない)

 外に出ると、商店エリアは相変わらずの熱気だった。

 (偶にはこういう風に、のんびり歩きながら街を見て目的地に向かうというのもいいものだな)

 移動の際は飛翔or転移or霊脈移動しかほぼ使っていなかったからな。

 (お、見えてきたな)

 俺の最初の目的地である冒険者ギルドに到着した。
 俺はギルドの近くの路地裏で影を解き、存在感を一般人と同じにした。

 「行くか」

 この路地裏は幸い危ない奴らはいなさそうだ。

 俺は冒険者ギルドに出向くと、何やらとんでもないことが起きたようで、職員皆さんが慌てていた。

 (何があったんだろう?)

 「あ……、トオル……様!ギルドマスター……が…お呼びです……!」

 見知らぬ受付の人が俺に息を切らしながら話しかけた。
 ……これほどの慌てよう、絶対何かあったな。
 そう思いながら俺はガルドさんのところへ向かった。

 「おお!来た!しばらく無理だから時間を潰してきてくれない?」

 「何かあったのか?」

 「それが……何でも原炎のドラゴンというとてつもない魔力を持ったドラゴンがカナ森というここから案外近い場所に現れてね……。依頼が殺到するわけで猫の手でも借りたい気分なんだよ」

 (おいおい……何でこんな人里まで降りてきてるんだよ!?)

 待ち合わせはあの火山でしたはずだ。

 「ちょっと見に行ってくる」

 「今S級の冒険者が食い止めているけど、数が数だしそこまで持たないと思う!」

 ガルドさんが俺が出る前にそのことを伝えてくれた。

 「分かった!」

 俺は走りながら探知と索敵を同時に発動した。

 (……あれか!)

 デカイ魔力を持った大きな生物と、小さい人のようなのが探知に引っかかった。
 幸い、ここからなら行ったことがあるためすぐさま転移で飛んだ。

 その頃、カナ森では。

 「くっ……!」

 一人の女性が8匹のドラゴンに勇敢に立ち向かっている。
 この女性はウルティマ=アスタルテ。
 現S級冒険者であり、女性最強とも言われ、『殲滅の戦乙女』のあだ名が付いている。
 そのあだ名の通り、彼女が滅ぼしたものは幾度としれず、自身の嫌うもの全てを滅ぼしたと言われている。

 「はぁっ!」

 現在、300・・・匹のドラゴンを屠って残りの8体を倒すために彼女は剣を振るっていた。

 「はぁ……はぁ……」

 既に殆どの魔力は尽き、己の肉体と剣の腕だけでドラゴンの猛攻を凌いでいた。

 (もう……ダメですか……)

 あれから5匹を倒したが、流石に肉体的にも精神的にも限界が訪れていた。
 彼女が諦めて、ドラゴンが自身の猛威を振るおうとしたその時、

 ガキンッ!

 爪による攻撃を難なく防いだ男が彼女の前に立っていた。


 (ふぅ……)

 何とか間に合ったようだな。
 ていうか彼女がS級冒険者なのか?
 ……あ、察し。
 今は魔力が殆ど枯渇しているからよく見えなかったけれど、詳しく見ればレオン程……いや、それ以上かな?
 とりあえずそれぐらいの魔力量はある。

 「これを一人でやったのか?」

 「……うん」

 S級冒険者ってはっきり言って、ゴツゴツの男なのかと思ってたけどとても美人?いや、これは美少女の部類だな。
 透き通るような金髪に緑色の瞳。
 年齢的には俺より少し年下な感じを醸し出しているけど、実際はどうか分からない。

 「やるか!」

 俺はトルリオンを取り出し、ドラゴンに切りかかる。

 (やっぱり弱いな……)

 こいつらのレベルはせいぜい言って3桁ぐらいと言ったところだ。
 原炎の龍とは文字通り格が違う。

 「はぁっ!」

 俺がトルリオンを一閃するだけで、斬撃が飛び、ドラゴンを切り裂いていく。

 (こいつら一体何匹いるんだ!?)

 5匹ぐらいと思われていたドラゴンが今では100匹ぐらいに増えていた。

 (……これは一度に消すしかないな)

 「ちょっと失礼!〈飛翔〉!」

 「きゃあっ!?」

 突然抱えられたことに驚いていたのか可愛い声を出す彼女。
 俺はドラゴン達の正面から上空に上ったところにいる。

 「〈我は願いし。太陽の極光が我が敵を焼き滅ぼすことを。〈神なる太陽の光はここにあり。この全ての光を集め、ここに顕現せよ!〉」

 詠唱が完了し、ドラゴンの真上から必殺の魔法が放たれる。

 「超極大魔法!アトムディストラクション!!」

 俺の魔力をごっそり持っていき、天から万物を消滅させる光が放たれた。
 ドラゴンは痛みを感じる暇さえなく、地理すらも残さず消えていった。
 こうして原炎のドラゴン(部下)との戦いは終了した。

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