全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

55話 東諸国連合

 透が帝国軍を倒したところを見ていた諸国連合の国王たちは騒然としていた。

 「……あれは一体何なのだ!?」

 「エドラス卿。彼はメルトリリス王国で召喚された勇者と思われます」

 円卓に座っているうちの一人が冷静に分析し、あの人物が透であることを教えていた。

 「まさか……あの男が帰ってきていたのか?」

 あの男とはもちろん透のことだ。
 女王様が透は修行に行ったという事を人界連合が行う定例会議で報告していたのだ。

 「しかし……あれほどの魔法が使えるとは……彼は一年間どこに行っていたのか分かるのか?」

 「何でもアルスター帝国に武者修行に出かけていたらしく、そこでダンジョンを制覇したそうなのだ」

 『……っ!?』

 メルトリリスと友好が深いシナリア王国の王がそう告げると、場が更に騒然とした。

 「あの難攻不落のダンジョンを制覇しただと!?」

 「確か最近そういう話を聞いたことがある……」

 「それは別の勇者の話でしょう。何でもその勇者と彼は一緒に行動していたらしいんですよ」

 「じゃあ、あの帝国の王が言っていた事は嘘なのか?」

 「……どういう事だ?」

 「私が聞いた話では、何でも皇帝は自分たちの勇者だけがダンジョンを制覇したと言っていたんだ」

 「……それは嘘だろうな」

 『あながち嘘ではないぞ』

 その瞬間、何処からともなく声が聞こえてきた。

 「誰だっ!?」

 『あ、これだけじゃ分からないか。水晶を見たら分かる?』

 国王たちが水晶に目を向けると、そこには手を振っている透の姿が映った。

 『初めまして。私は金山透。メルトリリス王国で勇者をしています』

 透は丁寧に挨拶をする。
 流石に見知らぬ相手にタメ語は不敬かと思ったのか、敬語で話している。

 『失礼ながら、あなたたちの魔法を逆探知させてもらいました』

 「……そんなことが可能なのか?」

 『可能ですよ。今の僕には出来ないことの方が少ないですから』

 「そうか……そういえばまだ自己紹介をこちらはしていなかったな。私たちは東諸国連合のものだ」

 『そうですか……』

 「それで一つ教えてもらいたい。ダンジョンを制覇したのは本当なのか?」

 『はい、そうですよ』

 「それがアルスター帝国の勇者と一緒に?」

 『そうですね。私の同郷でして、道すがら出会ったので一緒に行こうってなりました』

 「その時は同郷の勇者は強いと思ったのか?」

 『その時は、はっきり言ってあんまりでしたね。大体60階層を突破できるかどうかの実力でしたからね』

 「……今は?」

 『うーん……ダンジョン自体は物資が揃えばクリア出来るんじゃないんですか?5桁は超えているんだし』

 「……その5桁の内容を教えてもらっても?」

 『え?ああ、レベルですよ。実際はダンジョン自体は一週間ぐらいでクリアしたんですけど、そこから350日くらいはずっとレベル上げしてましたからね』

 この時の王たちはものすごく驚いていた。
 勇者のレベルが5桁を超えていることもそうだが、何よりあの難攻不落のダンジョンを一週間でクリアしとことの方が驚きだろう。

 「質問、もうちょっといいか?」

 『俺に応えられることなら何でもいいですよ』

 「なら君は私たちと敵対するのか?」

 『うーん……どうでしょうかね?今回の一件はあちらさんがちょっかいをかけてきたので潰しただけですけど、基本敵対する気は無いですね』

 「そうか……」

 透は何もしなかったら敵対もしないと伝える。
 
 『そんなに不安なのだったら、また今度同盟でも結びますか?』

 「それは国としてなのか?」

 『うーん……。国としては女王様と話さなければならないですし、僕個人とでもいいですよ。これでも色々融通が利きますから』

 連合諸国からはまさにまたと無い機会が透の方から提案された。

 「それはいいのか!?」

 はっきり言って透は国を一人で潰せるほどの力を持っている。
 そこに更に色々と融通が利くときた。
 これを逃す手はないだろう。

 「では、こちらから使者を送らせてもらおう」

 『それはありがたいです。はっきり言って東諸国連合って何処の国があるのか、とかよく分かっていないんです』

 「そうか……。なら今日から5日後。使者を向かわせるとしよう」

 『分かりました』

 そう言って、透の通信は切れた。

 「……とんでもないことになりましたね」

 「ああ」

 透と一人で対応していたこの男。
 名前はギルバート=タルサ。
 タルサ王国の最も有名な人物だ。
 3年前のアルスター帝国戦で単騎で1万もの兵を倒したとされるほどの猛者だ。
 
 「この状況を逃すわけにはいかない」

 「……そうですな」

 皆が、うんうんと頷く。
 
 「彼が暴れたら、私など一息で吹き飛ばされてしまうだろう」

 「それほのものなのですか……?」

 「当たり前だ。しかもアルスター帝国の勇者も黙っているとは思えない。今は言いなりになっているようだが、いつかきっと抜け出してくる」

 天谷と奏音はメルトリリスに喧嘩を売ったことを知り、すぐさま帝国から出て行っていたのは本人たちはまだ知る由も無い。

 「使者は私が行こう」

 ギルバートが候補を上げ、皆もそれに賛同した。
 そして、次回の会議の開催日は未定のまま解散となり、ギルバートは早速メルトリリス王国へ向かうことにした。

 
 「ふぅ」

 なんか監視されているなぁって思って、逆探知してみたら偉い所に繋がったな……。
 まあ、その結果諸国と同盟を結べそうになったからいいか!

 「戻るか」

 使者が5日後には来るって言っていたし、それを女王様に伝えておきたいしな。
 俺が同盟を結ぶことには異は唱えないだろう。
 そして、俺はみんなのところに戻った。


 「ねぇ、あの魔法ってなんなの!?」

 何故か戻ってきたらアルスが俺のアトムディストラクションのことについて尋ねてきた。

 「……俺ことはいいのか?」

 「もう諦めた。今帰っても負けた私に居場所なんてないし」

 ……冷たいやつだな。魔王って。
 俺は負けても生きて帰ってくるだけでいい。
 ていうか身内を負かした奴は大抵ボコボコにする。
 身内を大事にする。それが俺のモットーたがらな!

 「じゃあ、もういいか」

 奴隷紋も無事に発動しているし、もう味方と見なして大丈夫だろう。
 慰めるのに楓たちも頑張ったみたいだしな。

 「あ、それと俺、同盟結ぶことになったから」

 「……何処と?」

 聞きたいことを楓が代表して聞いてきた。

 「東諸国連合ってところと」

 「あのギルバートがいるところ!?」

 これに反応したのはまさかのアルスだった。

 「知っているのか?」

 「知ってるも何も……ギルバートっていったら今代の英雄よ。武力だけでなく、知力も秀でていて、単騎で帝国軍1万を壊滅させたり色々な伝説を残しているのよ」

 「マジか……」

 そんなに強い奴が所属しているとは……。知らなかった。
 ……そんなに強いのに、なんで諸国連合に所属しているんだろう?
 そういうことはまた今度聞くことにしよう。

 「ルーナさんは知っているよね?」

 「そのルーナさんって言うのやめようよ」

 「じゃあ何て呼べばいいの?」

 「普通に呼び捨てで構わないよ」

 「じゃあルーナ。知ってる?」

 「もちろん。この世界で一般教養がある人なら知らないことがない人だもん」

 みんなうんうんと、頷いている。
 ……なんで楓まで知っているんだ?
 気になって聞いてみると、

 「それは私だって勉強しているからね」

 ……そうだった。
 俺が行っていない学校に楓は行ってたんだな……。
 ならなんで今ここにいるんだ?今日平日だろ?

 「サボっちゃった」

 「……マジか」

 「うん」

 学校休んで来ていたのか……。
 ルーナの方も見ていると、冷や汗を流していた。

 「はぁ……学校には行けよ」

 「「透(トオル)が言うな!!」」

 「……ごもっとも」

 正論すぎて言い返す言葉もない。
 
 「じゃあ転移するぞー」

 俺は手を繋ぎ、転移を発動させた。

「全スキル保持者の自由気ままな生活」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く