全スキル保持者の自由気ままな生活
43話 帰還
 俺たちは行きから出ていった門の近くの森に転移した。
 直接転移しても良かったんだけど、それじゃあ目立つからな。
 「到着っと」
 「もうここから出て一年になるのかー」
 「そうだな」
 ここを出た時は強くなるって言っていたけど、実際は自分はもう結構強いんじゃないか?と思っていたけど、ダンジョンでその驕りは具体的打ち砕かれた。
 ……ほんとにダンジョンには有難いの一言だよ。俺の成長になってくれたんだからな。
 「じゃあそろそろ行きますか」
 「そうだね!早く行ってみたい!」
 エルが乗り気なので早速行くことにした。
 俺は一つ歩いている時に重大なことを忘れていたのを思い出した。
 「ギルドの登録ってもう切れてるじゃん!」
 そう、当たり前のようにギルドには依頼を受けないと剥奪されるというシステムがある。
 それはAランクであったとしても変わりない。
 「……まずい。これは証明書として通じるのか……?」
 俺は期限切れの自身のカードを見る。
 ……完全にやらかしてしもうたわ。
 「ま、まあとりあえず行ってみようよ!」
 エルが俺の絶望的な表情を見て察してくれたのか、俺に声をかけてくれる。
 「……そうだな」
 ……まあ、行けるかもしれないし。そのかもに期待しよう。
 そう思い、俺たちは門のところへ歩くのだった。
 
 「次の方、どうぞ」
 そう言われたので俺は期限切れのカードを差し出す。
 「……申し訳ございません。これは切れているようなので少し検査をお願いします」
 まあ、予想通りだよな。
 俺たちは門番の方についていく。
 そこには一つの水晶があった。
 「これは犯罪歴を見る魔道具です。ここに手を当ててください」
 そう言われたので俺たちは水晶に手を置く。
 すると、水晶は何も反応しなかった。
 「大丈夫ですね。それでは入場料として銀貨1枚頂戴します」
 そう言われたので、俺はアイテムボックスから銀貨を取り出した。
 「……アイテムボックス持ちですか。ここには商業でやって来たんですか?」
 「いや、そうじゃなくて、知り合いに会いに来たんだ」
 「そうだったんですか。それじゃあようこそ、メルトリリス王国王都スラストへ」
 そう、挨拶を受けながら俺たちは門番の人が使う扉から中へ入るのだった。
 「ご主人様、これからまっすぐ王城に向かうの?」
 「いや……それもいいんだけどな。ちょっとギルドカードの再登録しておかないとなって思って」
 「なるほど」
 このままカードが使えないと不便すぎる。
 入場料としてお金を取られるのは全然問題ないんだけど、いざという時に身分を証明できるものがあれば便利だろうからな。
 「じゃあ冒険者ギルドへ出発!」
 「そうだな」
 今思うと、昔(といっても1年前だが)のエルとは喋りかたが変わってるな。
 俺に気を許してくれたからかな?
 そうだったら嬉しいな……。
 「ご主人様?冒険者ギルドってどこにあるの?」
 「仕方ねぇな。着いてこい!」
 「うん!」
 というわけで俺たちは冒険者ギルドへ向かった。
 「うわー、変わってないな」
 俺たちはギルドの門をくぐり、中に入った。
 あまり変わっていないことに驚きながらも、受付の方へ足を進める。
 「あ、トオルさん!どこに行ってたんですか!?」
 「ははっ、ちょっと修行に」
 「それより、ギルドマスターがトオルさんが来たら通してくれと言っているのでどうぞ」
 俺はギルドマスター……ガルドさんのところに通された。
 ……俺ってそんなに印象が強いことしたっけ?
 何でそんなに名前覚えられてんの?
 しかもガルドさんに至っては来たら来いって名前で指名されてるし。
 そんなことを考えながら俺たちはギルドマスターの部屋にたどり着いた。
 コンコンとノックする。
 「入っていいぞ」
 俺はそう言われたので遠慮なく扉を開ける。
 「……お!!勇者君じゃん!やっと来てくれたの?」
 「そうですね。修行も終わったことだし、約束を果たすために帰ってきました」
 「そうか……、修行に行ってたんだね、もう急にこの国にいなくなるって連絡を受けた時はどうしたのかと思ったよ」
 「それで、カードの再発行をお願いしたいんですけど?」
 「はいはい。再発行ね。それならわざわざ血を引き抜かなくても大丈夫だよ」
 そう言って俺のカードを受け取り、ある機械に俺のカードを先に入れて、その後に何もないカードを入れると、そこには新しいカードが出来ていた。
 「はい。これが新しいやつだよ」
 「ランクは変わらないんですか?」
 「病気とかで一年以上寝込んだ冒険者にとっては一からのやり直しは辛いからね。こういう処置が取られているんだ」
 たしかに……。
 もし切れて、Aランクぐらいだったのに一からやり直しとかどんな鬼畜プレイだよ。
 「ありがとうございます。それでまた今度素材の提出をしたいんですけど……」
 「どこに……、あ、そうか。君アイテムボックス持ってたんだね」
 「そういうことです」
 俺はそう言って自分の腰あたりを叩く。
 「それはどこで手に入れたのかい?」
 「アルスター帝国のダンジョンですけど?」
 「……一応聞いておくけど、何階層まで行ったの?」
 「え?最終階層までですけど?」
 「それって57階層のこと?」
 「?100階層ですが?」
 「ひゃ、100ッッ!!」
 あれ?まずかったかな?別に報告とかしてなかったけど、仕方ないよね。
 転移で直接来たんだから。
 「……つまり、それはダンジョンをクリアしたということかい?」
 「そうですけど何か?」
 「……はぁ、ますます君の規格外さを知ったよ」
 「そうですか?」
 まあ、たしかに自分でもそういう自覚はあったんだけどな。
 だけど、一番無力さを味わったのもダンジョンなんだよなぁ。
 「じゃあ珍しい素材とか入ってるのかな?」
 「まあ、ドラゴンぐらいなら普通に入ってますよ」
 80階層代でドラゴンを狩りまくったからな。素材だけは余ってる。
 「……そのことはまた今度ということで。それで、そこの女の子登録するのか?」
 「奴隷って登録出来るんですか?」
 「いや、無理だね。そういうのは法律で取り締まられているんだよ。いくらギルマスだからといって、これを破るのはダメなんだよ」
 「そうですか……」
 ふむ。エルにも一人で討伐とか行ってもらってても良かったんだけどなぁ。
 まあ、奴隷の首輪を解除すればエルも冒険者になれるというわけか。
 なら解放という面の視野も入れた方がいいかもしれないな。
 「じゃあお邪魔しました」
 「また来てね」
 俺たちはギルドを出た。
 「ご主人様、これからもう行くの?」
 「うーん、どうしようか?」
 もうすぐお昼も近い。
 
 「途中で腹が減ったとか嫌だから、そこらへんにある出店とかで何か食べるか?」
 「うん!いいよ!」
 そうと決まれば。
 俺は走り出し、あのホロの串焼きを売ってある店に走った。
 「ご主人様、待ってえええ!」
 エルがどんどん遅れている……と思いきや、俺に並走してついてきた。
 まあ、俺全然本気出してないんだけどな。逆に本気出したら大惨事になる。
 そして俺はついに、あの串焼きの出店にたどり着いた。
 「串焼き2本くれ!」
 「お、おうまいど」
 おっちゃんは驚いていたが、すぐさま作り始めた。
 「はい、串焼き2本だよ。合わせて銅貨2枚だよ」
 「はい」
 俺は 手に持っていた銅貨をすぐさま渡し、受け取る。
 
 (うめぇ!)
 久しぶりの串焼きに興奮している俺はテンションが上がっていた。
 「エルも食え!」
 俺は2本のうち1本をエルに渡す。
 「美味しい!」
 「だろ!」
 そして俺たちは串焼きを堪能したのだった。
 今度は絶対に向かうから。
 俺はそう決心し、王城の門の前にいた。
 俺が中に入ろうとしたとき、
 「そこの者、止まれ!」
 衛兵に止められた。
 ……えぇ?俺1年前までここ顔パスで通れたよ?
 「お前たち何やって……もしかして勇者様ですか?」
 「あれ?レオンか?久しぶりだな」
 「……ようやくお帰りになってくださいましたか。それではこちらへ」
 「騎士団長!この方は?」
 「勇者様だ。お前も知っているだろう」
 「し、失礼しましたァァァァ!」
 思いっきり土下座されてしまった。
 「いいよ、別に気にしてないから」
 「ありがとうございます!」
 「勇者様、こちらへ」
 そしてレオンに案内されて俺たちはついていった。
 すると、レオンはある部屋のところで止まった。
 (あれ?ここって確か……、楓の部屋……だよな?)
 「失礼します」
 レオンが中に入ると、そこは何も明かりがついていなかった。
 「……おい、どういうことだ?」
 「それは彼女を見てからお話しします」
 レオンがそう言って、俺に見せたのは永遠に眠っているかのように気絶している楓の姿だった。
 直接転移しても良かったんだけど、それじゃあ目立つからな。
 「到着っと」
 「もうここから出て一年になるのかー」
 「そうだな」
 ここを出た時は強くなるって言っていたけど、実際は自分はもう結構強いんじゃないか?と思っていたけど、ダンジョンでその驕りは具体的打ち砕かれた。
 ……ほんとにダンジョンには有難いの一言だよ。俺の成長になってくれたんだからな。
 「じゃあそろそろ行きますか」
 「そうだね!早く行ってみたい!」
 エルが乗り気なので早速行くことにした。
 俺は一つ歩いている時に重大なことを忘れていたのを思い出した。
 「ギルドの登録ってもう切れてるじゃん!」
 そう、当たり前のようにギルドには依頼を受けないと剥奪されるというシステムがある。
 それはAランクであったとしても変わりない。
 「……まずい。これは証明書として通じるのか……?」
 俺は期限切れの自身のカードを見る。
 ……完全にやらかしてしもうたわ。
 「ま、まあとりあえず行ってみようよ!」
 エルが俺の絶望的な表情を見て察してくれたのか、俺に声をかけてくれる。
 「……そうだな」
 ……まあ、行けるかもしれないし。そのかもに期待しよう。
 そう思い、俺たちは門のところへ歩くのだった。
 
 「次の方、どうぞ」
 そう言われたので俺は期限切れのカードを差し出す。
 「……申し訳ございません。これは切れているようなので少し検査をお願いします」
 まあ、予想通りだよな。
 俺たちは門番の方についていく。
 そこには一つの水晶があった。
 「これは犯罪歴を見る魔道具です。ここに手を当ててください」
 そう言われたので俺たちは水晶に手を置く。
 すると、水晶は何も反応しなかった。
 「大丈夫ですね。それでは入場料として銀貨1枚頂戴します」
 そう言われたので、俺はアイテムボックスから銀貨を取り出した。
 「……アイテムボックス持ちですか。ここには商業でやって来たんですか?」
 「いや、そうじゃなくて、知り合いに会いに来たんだ」
 「そうだったんですか。それじゃあようこそ、メルトリリス王国王都スラストへ」
 そう、挨拶を受けながら俺たちは門番の人が使う扉から中へ入るのだった。
 「ご主人様、これからまっすぐ王城に向かうの?」
 「いや……それもいいんだけどな。ちょっとギルドカードの再登録しておかないとなって思って」
 「なるほど」
 このままカードが使えないと不便すぎる。
 入場料としてお金を取られるのは全然問題ないんだけど、いざという時に身分を証明できるものがあれば便利だろうからな。
 「じゃあ冒険者ギルドへ出発!」
 「そうだな」
 今思うと、昔(といっても1年前だが)のエルとは喋りかたが変わってるな。
 俺に気を許してくれたからかな?
 そうだったら嬉しいな……。
 「ご主人様?冒険者ギルドってどこにあるの?」
 「仕方ねぇな。着いてこい!」
 「うん!」
 というわけで俺たちは冒険者ギルドへ向かった。
 「うわー、変わってないな」
 俺たちはギルドの門をくぐり、中に入った。
 あまり変わっていないことに驚きながらも、受付の方へ足を進める。
 「あ、トオルさん!どこに行ってたんですか!?」
 「ははっ、ちょっと修行に」
 「それより、ギルドマスターがトオルさんが来たら通してくれと言っているのでどうぞ」
 俺はギルドマスター……ガルドさんのところに通された。
 ……俺ってそんなに印象が強いことしたっけ?
 何でそんなに名前覚えられてんの?
 しかもガルドさんに至っては来たら来いって名前で指名されてるし。
 そんなことを考えながら俺たちはギルドマスターの部屋にたどり着いた。
 コンコンとノックする。
 「入っていいぞ」
 俺はそう言われたので遠慮なく扉を開ける。
 「……お!!勇者君じゃん!やっと来てくれたの?」
 「そうですね。修行も終わったことだし、約束を果たすために帰ってきました」
 「そうか……、修行に行ってたんだね、もう急にこの国にいなくなるって連絡を受けた時はどうしたのかと思ったよ」
 「それで、カードの再発行をお願いしたいんですけど?」
 「はいはい。再発行ね。それならわざわざ血を引き抜かなくても大丈夫だよ」
 そう言って俺のカードを受け取り、ある機械に俺のカードを先に入れて、その後に何もないカードを入れると、そこには新しいカードが出来ていた。
 「はい。これが新しいやつだよ」
 「ランクは変わらないんですか?」
 「病気とかで一年以上寝込んだ冒険者にとっては一からのやり直しは辛いからね。こういう処置が取られているんだ」
 たしかに……。
 もし切れて、Aランクぐらいだったのに一からやり直しとかどんな鬼畜プレイだよ。
 「ありがとうございます。それでまた今度素材の提出をしたいんですけど……」
 「どこに……、あ、そうか。君アイテムボックス持ってたんだね」
 「そういうことです」
 俺はそう言って自分の腰あたりを叩く。
 「それはどこで手に入れたのかい?」
 「アルスター帝国のダンジョンですけど?」
 「……一応聞いておくけど、何階層まで行ったの?」
 「え?最終階層までですけど?」
 「それって57階層のこと?」
 「?100階層ですが?」
 「ひゃ、100ッッ!!」
 あれ?まずかったかな?別に報告とかしてなかったけど、仕方ないよね。
 転移で直接来たんだから。
 「……つまり、それはダンジョンをクリアしたということかい?」
 「そうですけど何か?」
 「……はぁ、ますます君の規格外さを知ったよ」
 「そうですか?」
 まあ、たしかに自分でもそういう自覚はあったんだけどな。
 だけど、一番無力さを味わったのもダンジョンなんだよなぁ。
 「じゃあ珍しい素材とか入ってるのかな?」
 「まあ、ドラゴンぐらいなら普通に入ってますよ」
 80階層代でドラゴンを狩りまくったからな。素材だけは余ってる。
 「……そのことはまた今度ということで。それで、そこの女の子登録するのか?」
 「奴隷って登録出来るんですか?」
 「いや、無理だね。そういうのは法律で取り締まられているんだよ。いくらギルマスだからといって、これを破るのはダメなんだよ」
 「そうですか……」
 ふむ。エルにも一人で討伐とか行ってもらってても良かったんだけどなぁ。
 まあ、奴隷の首輪を解除すればエルも冒険者になれるというわけか。
 なら解放という面の視野も入れた方がいいかもしれないな。
 「じゃあお邪魔しました」
 「また来てね」
 俺たちはギルドを出た。
 「ご主人様、これからもう行くの?」
 「うーん、どうしようか?」
 もうすぐお昼も近い。
 
 「途中で腹が減ったとか嫌だから、そこらへんにある出店とかで何か食べるか?」
 「うん!いいよ!」
 そうと決まれば。
 俺は走り出し、あのホロの串焼きを売ってある店に走った。
 「ご主人様、待ってえええ!」
 エルがどんどん遅れている……と思いきや、俺に並走してついてきた。
 まあ、俺全然本気出してないんだけどな。逆に本気出したら大惨事になる。
 そして俺はついに、あの串焼きの出店にたどり着いた。
 「串焼き2本くれ!」
 「お、おうまいど」
 おっちゃんは驚いていたが、すぐさま作り始めた。
 「はい、串焼き2本だよ。合わせて銅貨2枚だよ」
 「はい」
 俺は 手に持っていた銅貨をすぐさま渡し、受け取る。
 
 (うめぇ!)
 久しぶりの串焼きに興奮している俺はテンションが上がっていた。
 「エルも食え!」
 俺は2本のうち1本をエルに渡す。
 「美味しい!」
 「だろ!」
 そして俺たちは串焼きを堪能したのだった。
 今度は絶対に向かうから。
 俺はそう決心し、王城の門の前にいた。
 俺が中に入ろうとしたとき、
 「そこの者、止まれ!」
 衛兵に止められた。
 ……えぇ?俺1年前までここ顔パスで通れたよ?
 「お前たち何やって……もしかして勇者様ですか?」
 「あれ?レオンか?久しぶりだな」
 「……ようやくお帰りになってくださいましたか。それではこちらへ」
 「騎士団長!この方は?」
 「勇者様だ。お前も知っているだろう」
 「し、失礼しましたァァァァ!」
 思いっきり土下座されてしまった。
 「いいよ、別に気にしてないから」
 「ありがとうございます!」
 「勇者様、こちらへ」
 そしてレオンに案内されて俺たちはついていった。
 すると、レオンはある部屋のところで止まった。
 (あれ?ここって確か……、楓の部屋……だよな?)
 「失礼します」
 レオンが中に入ると、そこは何も明かりがついていなかった。
 「……おい、どういうことだ?」
 「それは彼女を見てからお話しします」
 レオンがそう言って、俺に見せたのは永遠に眠っているかのように気絶している楓の姿だった。
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