全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

33話 火山と新たなドラゴン

62階層への扉を開けた。

 「熱い!!」

 そこには灼熱のマグマがいたるところに存在しており、一歩でも踏み外せば即座に死亡コースに一直線する場所だった。
 これは早く行くか、一回セーフティゾーンで対策を練ってから戻る方がいいよな……。
 俺たちは一度、セーフティゾーンへ戻ることにした。

 「暑い!」

 「……だよね。こんなのよっぽどの人じゃないと耐えられないよ……」

 確かにこれはキツイ。
 さっきのパンケーキ並みにキツイ。
 というわけで、解決策を検索ツールさんに頼んでみる。

 〈スキル検索開始……合致スキル1件表示します〉

 すると、そこには〈水魔法〉ウォーターバリアというのが書き記されていた。

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<ウォーターバリア>

 水で作られるバリア。攻撃はもちろん、熱を遮断したり、火を消したりすることができる。
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 これだ!って思いついた瞬間だった。
 そのまんまだけど、性能面では俺の求めていたそれだ。

 「みんな聞いてくれ。今から魔法を付与するから」

 「?どういうこと?」

 「そのままの意味だ。ウォーターバリアという魔法を付与するだけだ。安心しろ。デメリットなどない」

 「お兄ちゃんのその安心しろは信用できないよ……」

 「確かに」
 
 こら!そこ!信用できるだろ!さらに天谷も頷くんじゃない!

 「今回はご主人様を信じよう。それしか案は無いんだし」

 「確かにエルちゃんのいう通りだね」

 「うんうん」

 「おい!」

 お前ら俺の時とエルの時で全然意見が違うじゃねぇか!何か!?差別なのか!?
 それだったらお兄ちゃん泣いちゃうぞ!
 ……今自分で言ってこれはないわー、って思った。絶対引かれる。

 「じゃあ、やるぞ。〈水魔法〉ウォーターバリア」

 俺はそう唱えると、透明の膜のようなものが俺たちの体を包み込んだ。
 これは別に歩行に影響が出るわけでもないし、結構便利だな。
 
 「じゃあ行くか」

 「そうだね」

 「「うん」」

 こうしてセーフティゾーンから出て、2度目のトライを敢行するのだった。

結論から言うと、ウォーターバリアをして72階層に戻ると、全然熱くなかった。そして暑くもなかった。
 便利な瞬間である。ほとんど中は常温でみんなも大丈夫って言っていた。
 62階層では敵も現れてくるが、全て水の魔弾で貫通していった。
 やっぱり一番便利なのは水だ。
 なので暇な時間に水の魔弾ばっかり作っていたらこの間5桁を超えた。

 「やっぱり透がいると進むスピードが異常だよね」

 「普通、この程度の相手にここまで時間をとること自体が俺はおかしいと思ってる」

 「そう思ってるのは透だけだよ」

 「マジか……」

 いや、普通そんなにかからないだろ。
 俺たちだってここまで来るのに、3日しかかかってないんだからな。
 また、俺たちは正規の攻略法じゃないんだと思うんだけれど。
 飛翔がマジで便利過ぎる。基本どの階層でも使ってるもん。逆に使わない階層の方が珍しい。

 「じゃあどんどん進むぞー」

 俺はそんな気の抜けたような声で話しかける。
 やっぱり雑魚敵しかいないのかガルバドメス1発で基本倒すことができる。

 「ねぇ、お兄ちゃん。昨日も気になってたんだけど、その武器って何?」

 奏音が突然この武器のことについて聞いて来た。

 「ああ、これは王銃ガルバドメスって言ってな、はっきり言うと、魔力の弾を撃ち出す銃だな」

 「そのアイテムどこで手に入れたの?」

 「え?そりゃもちろん自分で作ったに決まってるだろ。なんたって俺は全スキル持ちなんだからな」

 「……そうだった。お兄ちゃんの規格外の程を忘れてたよ……」

 「諦めた方がいいよ奏音。透には常識は通じないから」

 「酷い!」

 俺だってちゃんと常識の範疇の中で暮らしているんだぞ!
 確かにたまに自重しなくなることがあるけど……。
 いやだって、道具とか便利なものがあれば良いじゃん!

 「あの金色の剣も自分で作ったの?」

 トルリオンのことだろうな。金色の剣ってあれ以外にあるはずないもん。

 「ああ、あればヒヒイロカネで作った自分専用の剣だな」

 「へぇー。自分専用ってどうやるの?」

 「限界まで魔力突っ込めばなんとかなると思うけど……(俺の魔力量で)」

 「ちょっとその間なに?もしかしてお兄ちゃんの魔力量でって話?」

 「げっ!」

「バレたかみたいな顔をしないで!」

 「悪い悪い、だけど嘘は言ってないからな」

 「そうだけど……」

 「それより行くぞ。早く行きたい」

 「はいはい。楓さんのために、でしょ」

 「ば、バカ!そんなんじゃねぇよ!」

 「照れなくても良いよー。お兄ちゃんはそういう性格だもん」

 「違うからな!」

 「はいはい」

 俺たちのやり取りを遠目に眺めていた二人はというと。

 「すごいね……、カノンちゃん、ご主人様をあんなに理解して」

 「そりゃ二人は兄妹なんだから。家族っていうのは俺たちの国では一番一緒にいた時間が長い人だからな。例外っていうのは何事にもあるけど」

 「私は姉妹とか持ったことないから、たまにご主人様が羨ましい」

 「それは普通の考えだと思うよ。僕もたまに二人を見てるとそう思うからね」

 「そうなんですか……」

 お互いになんか慰め合っていた?
 まあ、とりあえず先に進むとしようか。
 いつウォーターバリアの効果が切れるのか分からないし。
 そして歩行速度を少し早める俺だった。

 そして75階層。
 マグマの階層も簡単に抜け、すぐにここにはたどり着けた。

 「グアアアアアッッ!!」

 「うるせぇぇぇぇ!」

 俺は全力投擲をする。
 もちろんダーインスレイブで、さらにトルリオンを腰に装着していた。
 これで物攻EX×4倍だね。
 とんでもない速度が出たダーインスレイブは柔らかいドラゴンの腹を貫通させた。
 俺の全力投擲はドラゴンを貫通させ、その奥の壁に根元ぐらいからめり込んだ。

 「ふぅ」

 「ちょっと!そこなに「一汗かいたな」的な雰囲気醸し出してんの!全然、ていうかやりすぎだから!」

 「そうか?」

 ていうか俺的にはようやくこの仕草についてツッコミを入れてくれたことに嬉しく思っている。
 
 「それより、さっさとアイテム集めて行くぞ」

 「あ!無視しないの!」

 「奏音。もう、諦めた方がいいと思うよ」

 「でも……」

 「天谷のいう通りだ。誰に言われようと俺の行動は止めることができない」

 「うわー、現実世界だったらボコれるのに、ここだったら強すぎるからその言葉が現実になるのが私は嫌だ!」

 「まあそういうな。妹よ」

 「うわー」

 お願い!そんなにガチ引きしないで!
 結構俺の心にダメージが入ってくるから!

 「それより、次に行くんじゃないの?早く行こう」
 
 一部奏音に指示されながらも俺たちは65階層から出て行った。

 そしてこの火山層の最終回、70層に到達した。

 「結局お兄ちゃんがいると、とても安定するよね。オールラウンダーだから」

 おいおい、褒めるな妹よ。

 「奏音。あんまり透を褒めちゃダメだぞ。ほら。今だって、顔が緩みきっている」

 「あ、ホントだ。気をつけるね」

 「うん」

 「おいこらちょっと待て」

 褒めてくれないと俺だって悲しいんだからな!

 「大丈夫。私はちゃんとご主人様を褒めるから」

 エルさん!励ましありがとうございます!

 「この中で俺の味方はエルだけだよ」

 「はい。私はいつでもご主人様の味方ですから」 

 「はいそこまで。それより早く行かないの?」

 おっとそうだった。
 すっかり目的を忘れてしまうところだったぜ。
 俺は扉を開ける。

 「「グアアアアアッッ!」」

 さっきの赤いドラゴンともう一体は青いドラゴンが現れた。

 「上等ッ!」

 俺はとりあえずさっきの戦法で投擲した。
 それで赤いドラゴンは貫通し、絶命する。
 それを俺は投げた瞬間から走り、ダーインスレイブがちょうど貫通した瞬間を掴み、青いドラゴンに投げた。
 そして赤い方と同じように青い方も絶命した。
 この間にかかった時間、わずか1秒未満。
 安定の周回速度ですね。

 「……やっば」

 「……お兄ちゃんはもう人外だわ」

 心外な。
 ……あ、実際に人じゃなくなってたわ、俺。

 「じゃあさっさと集めるとするか」

 今回も苦戦することはなかったな。瞬殺だったし。
 ということで、火山層の70階層は攻略することができた。(秒で)

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