全スキル保持者の自由気ままな生活
21話 帝都観光
帝都に入った俺たちは、もう夜なので宿を取りに行っていた。
 ……はぁ。異世界ナメてたわ。まさかどの宿も空いてないなんて……。
 「お兄さん、宿を探しているの?」
 俺に声をかけてきたのは栗色の髪をした、ネコミミの高校生ぐらいの女の子だった。
 「空いてるのか!?」
 最悪の場合の野宿を想定していた俺にとっては、その一言はまさに福音をもたらしたように聞こえた。
 「は、はい。空いていますよ」
 やべ。つい興奮しすぎて鬼気迫るような表情で言ってしまった。 
 ……やってしまった。これ絶対怖がられちゃったパターンだよね……。
 「じゃ、じゃあ案内しますので付いてきてください」
 そして俺たちは宿に向かって歩きだした。
 しばらくして気がついたことがある。
 それは俺に、いや違うな。前を歩いていた彼女に不愉快な視線が注がれていることだ。
 「……なんで亜人がこんな街中を堂々と歩いているんだ?」
 「穢れた血が!気持ち悪い」
 「ちょっと、聞こえちゃうでしょ!もうちょっと静かにやりなさい!」
 いや、丸聞こえだからな。
 「おい、いいのか?あんな奴らに好き勝手言わせておいて」
 「……いいんです。慣れてますから」
 こっちに乾いた笑みを浮かべるが、また宿の方へ歩き出した。
 その背中は少しばかり震えていて、今にも泣きそうなところを我慢しているように俺には見えた。
 ……ちょっとあいつらガチでぶっ飛ばしてやろうかな?
 まだ彼女が赤の他人でも、流石にこれは俺でもイラついてくる。
 これが差別ってやつか。日本ではそういう場面に出くわしたことがなかったからよく分からなかったが、実際に見てみるとすげえ酷いな。
 日本だったら差別どころかヒャッハー!っていう人は出てくるだろうな。
 ていうか亜人って差別の対象だったっけ?確か人界連合ってやつは亜人種も加入してるんだよな。
 もし、これを楓やルーナたちにやられたら俺の自我が押さえられるか俺には分からない。
 もしかしたらブチ切れて言ったやつ全員タダでは済まさないかもしれないな。
 俺は彼女とエル以外に殺気を放っておいた。
 そんな感じで、俺はイライラしながら宿へ歩くと、着いたようだ。
 「ここが私たちが経営している〈青の猫家〉です」
 彼女に紹介されたところはまんま青色をしたごく一般的な宿屋だった。
 「たちってことは、ご両親と一緒にここで働いているのか?」
 「はい……。今は体調が優れていないので店は私だけでやらせてもらっています」
 「大丈夫なのか?」
 「はい、なんとか」
 「なんならご両親を見てあげようか?」
 「ご主人様はすごい回復魔法を使えるの!」
 エル……、恥ずかしいから俺の自慢はやめてくれ。
 「大丈夫。金を取る気は無いから。まあタダより怖いものがないって言うんだったら宿屋をタダで泊まらせてよ。あ、もちろん食費は払うけど」
 「そんなものでいいんですか!?……私はもっと嫌なことされるかと……」
 「しねぇよ!」
 ……全く、俺はどこの変態だっつーの。
 そんなことする気は微塵もねえ、というかそういう言葉が返ってくることの方が予想してなかったわ!
 「……じゃあ、診たいんだけど案内してくれる?」
 「はい!」
 大喜びで彼女は俺たちを案内した。
 案内された場所には2人の夫婦が横たわっていた。
 ……顔が真っ青ってことは熱じゃないかもな。念のために鑑定しておこう。
 個人のステータスはプライバシーなので結果だけ言うが、2人はモルシーの毒というものが混ざった液体を飲んで発症したっぽいな。
 これだったら普通にパーフェクトヒールで治る。……けど、勇者ってバレたらめんどくさいしな。
 ここはリカバリーで治せるのか、2人には悪いが実験させてもらうことにしよう。
 「〈リカバリー〉」
 俺が状態異常を回復させる魔法を使うとみるみる顔色が良くなり、呼吸も安定した。
 鑑定で見てみると、無事回復していた。
 「これで大丈夫だな。あとはしばらく安静にしておけば普段通りに生活できるはずだぞ」
 「本当にありがとうございます!」
 「ところでモルシーの毒って聞いたことがある?」
 「モルシーの毒って……、まさかあの危険なモルシーって言う蜂の魔物にある毒のことですか?」
 「それってここに置いてあったりする?」
 「そんな危ないもの置きませんよ!」
 ふむ……、これ完全に事件だよな。モルシーの毒ってそんなに危険だったんだな。リカバリーでも直せたから下位の毒なんかと思ってた。
 「じゃあ、これ」
 そう言って俺は白金貨一枚を渡す。
 「これで何か滋養のある食べ物でも買ってきたらどう?……あ、外歩きたくないか」
 「いいんです。……いや、そうじゃなくてこんな大金受け取れませんよ!」
 まあ、日本でも普通に10万円ぐらいを渡す人は普通はいないだろうな……。
 あれ?俺いつの間に成金に?
 「いいんだよ。関わったからには最後まで関わっておきたいから。それにまだまだ俺にはお金があるしな。それに貰えるものは貰っておくべきだぞ」
 事実まだ俺の手元には3000万以上の大金がある。
 「……では、お言葉に甘えさせてもらいます」
 「よろしい。それよりも買い物俺が行こうか?」
 「お願いできますか?なら、買ってきてほしいものをここに書いておくので少し待っていてください」
 そう言われてから5分後。
 「これがメモです。お願いします」
 「そう気にしなくていいから。じゃあ行ってきます」
 そう言って俺はエルを連れて買い物に行くのだった。
 「えーっと?どこに買いに行けばいいんだったっけ?」
 「私もよくわからないから商店街の方へ行こう。ご主人様」
 「ああ、わかった」
 そして商店街へ行ってみると、必要なものはすぐに揃った。
 ……ここって品数が多いんだな。基本なんでも揃ってる。ショッピングモールみたいなところなのか?
 「じゃあ何か食べていくか?せっかく帝都に来たんだし、明日からダンジョンに行くから今のうちに行きたいところあったら言えよ」
 「うん!わかった、ご主人様!」
 元気でよろしい。明日から当分外に出られないと思うからな。今の内に楽しんできたらいいって思ってる。
 「じゃああっちに行こう!」
 そう行って俺の手を取って走った。
 そこから食べ物屋はもちろん、服屋、鍛冶屋などいろいろなところを見て回った。
 ……はっきり言うと、帝国よりも王国の方が治安も良さそうだし、何より質がいい。
 そして回っている途中に事件は起こった。
 「おい、嬢ちゃんよ。ツラ貸せや」
 「そんなゴミはほっとこうぜ!」
 「俺たちといいことしようぜ」
 少し路地裏に入ったところをチンピラ3人組に絡まれた。
 そこ!小さい子供になんてこと教えるんだ!
 「行くぞ」
 「……おい、ちょっと待てや!」
 そう言うと、チンピラ1が俺に殴りかかってきた。
 ……うわー、おっそ。こいつら弱!レオンの5分の1以下だな。
 拳には拳で対応するのが俺の流儀だ。ということで、俺はがら空きの顎にアッパーを繰り出した。
 そいつは一撃で失神し、吹っ飛んだのち、ゴミ箱に衝突した。
 これ、俺がこの世界に来る前でも勝てたと思うぞ?
 「お前!よくもアニキを!」
 そうしてチンピラ2が殴りかかってくる。
 ……君たち経験を生かそうよ。なんでやられたのに同じことしてくるわけ?
 そしてチンピラ2をストレートで顔面をぶち抜き、顔を押さえながら悶絶していた。
 「うおおおおおおぉぉ!!」
 蛮勇はいいが、無闇に突ってくるなよ。何も考えないことが一番ダメだぞ。
 そして最後のチンピラ3の顔面に擬似ドロップキックを打ち込んだ。
 いやー、綺麗にぶっ飛んだね。路地裏の壁にめり込んじまったよ。
 昔は出来なかったのに今はもう軽々とできる。勇者ステータス万歳だな。
 「……大丈夫?ご主人様」
 「あんな奴らに俺は負けない。それよりもう終わりか?」
 「うん!もう満足したよ」
 「ならよ 良かった。もう帰るぞ」
 「うん!」
 こうして帝都観光はチンピラに絡まれるというアクシデントがあったものの、買い物も無事済ませたし、エルも喜んでくれた結果となった。
 ……はぁ。異世界ナメてたわ。まさかどの宿も空いてないなんて……。
 「お兄さん、宿を探しているの?」
 俺に声をかけてきたのは栗色の髪をした、ネコミミの高校生ぐらいの女の子だった。
 「空いてるのか!?」
 最悪の場合の野宿を想定していた俺にとっては、その一言はまさに福音をもたらしたように聞こえた。
 「は、はい。空いていますよ」
 やべ。つい興奮しすぎて鬼気迫るような表情で言ってしまった。 
 ……やってしまった。これ絶対怖がられちゃったパターンだよね……。
 「じゃ、じゃあ案内しますので付いてきてください」
 そして俺たちは宿に向かって歩きだした。
 しばらくして気がついたことがある。
 それは俺に、いや違うな。前を歩いていた彼女に不愉快な視線が注がれていることだ。
 「……なんで亜人がこんな街中を堂々と歩いているんだ?」
 「穢れた血が!気持ち悪い」
 「ちょっと、聞こえちゃうでしょ!もうちょっと静かにやりなさい!」
 いや、丸聞こえだからな。
 「おい、いいのか?あんな奴らに好き勝手言わせておいて」
 「……いいんです。慣れてますから」
 こっちに乾いた笑みを浮かべるが、また宿の方へ歩き出した。
 その背中は少しばかり震えていて、今にも泣きそうなところを我慢しているように俺には見えた。
 ……ちょっとあいつらガチでぶっ飛ばしてやろうかな?
 まだ彼女が赤の他人でも、流石にこれは俺でもイラついてくる。
 これが差別ってやつか。日本ではそういう場面に出くわしたことがなかったからよく分からなかったが、実際に見てみるとすげえ酷いな。
 日本だったら差別どころかヒャッハー!っていう人は出てくるだろうな。
 ていうか亜人って差別の対象だったっけ?確か人界連合ってやつは亜人種も加入してるんだよな。
 もし、これを楓やルーナたちにやられたら俺の自我が押さえられるか俺には分からない。
 もしかしたらブチ切れて言ったやつ全員タダでは済まさないかもしれないな。
 俺は彼女とエル以外に殺気を放っておいた。
 そんな感じで、俺はイライラしながら宿へ歩くと、着いたようだ。
 「ここが私たちが経営している〈青の猫家〉です」
 彼女に紹介されたところはまんま青色をしたごく一般的な宿屋だった。
 「たちってことは、ご両親と一緒にここで働いているのか?」
 「はい……。今は体調が優れていないので店は私だけでやらせてもらっています」
 「大丈夫なのか?」
 「はい、なんとか」
 「なんならご両親を見てあげようか?」
 「ご主人様はすごい回復魔法を使えるの!」
 エル……、恥ずかしいから俺の自慢はやめてくれ。
 「大丈夫。金を取る気は無いから。まあタダより怖いものがないって言うんだったら宿屋をタダで泊まらせてよ。あ、もちろん食費は払うけど」
 「そんなものでいいんですか!?……私はもっと嫌なことされるかと……」
 「しねぇよ!」
 ……全く、俺はどこの変態だっつーの。
 そんなことする気は微塵もねえ、というかそういう言葉が返ってくることの方が予想してなかったわ!
 「……じゃあ、診たいんだけど案内してくれる?」
 「はい!」
 大喜びで彼女は俺たちを案内した。
 案内された場所には2人の夫婦が横たわっていた。
 ……顔が真っ青ってことは熱じゃないかもな。念のために鑑定しておこう。
 個人のステータスはプライバシーなので結果だけ言うが、2人はモルシーの毒というものが混ざった液体を飲んで発症したっぽいな。
 これだったら普通にパーフェクトヒールで治る。……けど、勇者ってバレたらめんどくさいしな。
 ここはリカバリーで治せるのか、2人には悪いが実験させてもらうことにしよう。
 「〈リカバリー〉」
 俺が状態異常を回復させる魔法を使うとみるみる顔色が良くなり、呼吸も安定した。
 鑑定で見てみると、無事回復していた。
 「これで大丈夫だな。あとはしばらく安静にしておけば普段通りに生活できるはずだぞ」
 「本当にありがとうございます!」
 「ところでモルシーの毒って聞いたことがある?」
 「モルシーの毒って……、まさかあの危険なモルシーって言う蜂の魔物にある毒のことですか?」
 「それってここに置いてあったりする?」
 「そんな危ないもの置きませんよ!」
 ふむ……、これ完全に事件だよな。モルシーの毒ってそんなに危険だったんだな。リカバリーでも直せたから下位の毒なんかと思ってた。
 「じゃあ、これ」
 そう言って俺は白金貨一枚を渡す。
 「これで何か滋養のある食べ物でも買ってきたらどう?……あ、外歩きたくないか」
 「いいんです。……いや、そうじゃなくてこんな大金受け取れませんよ!」
 まあ、日本でも普通に10万円ぐらいを渡す人は普通はいないだろうな……。
 あれ?俺いつの間に成金に?
 「いいんだよ。関わったからには最後まで関わっておきたいから。それにまだまだ俺にはお金があるしな。それに貰えるものは貰っておくべきだぞ」
 事実まだ俺の手元には3000万以上の大金がある。
 「……では、お言葉に甘えさせてもらいます」
 「よろしい。それよりも買い物俺が行こうか?」
 「お願いできますか?なら、買ってきてほしいものをここに書いておくので少し待っていてください」
 そう言われてから5分後。
 「これがメモです。お願いします」
 「そう気にしなくていいから。じゃあ行ってきます」
 そう言って俺はエルを連れて買い物に行くのだった。
 「えーっと?どこに買いに行けばいいんだったっけ?」
 「私もよくわからないから商店街の方へ行こう。ご主人様」
 「ああ、わかった」
 そして商店街へ行ってみると、必要なものはすぐに揃った。
 ……ここって品数が多いんだな。基本なんでも揃ってる。ショッピングモールみたいなところなのか?
 「じゃあ何か食べていくか?せっかく帝都に来たんだし、明日からダンジョンに行くから今のうちに行きたいところあったら言えよ」
 「うん!わかった、ご主人様!」
 元気でよろしい。明日から当分外に出られないと思うからな。今の内に楽しんできたらいいって思ってる。
 「じゃああっちに行こう!」
 そう行って俺の手を取って走った。
 そこから食べ物屋はもちろん、服屋、鍛冶屋などいろいろなところを見て回った。
 ……はっきり言うと、帝国よりも王国の方が治安も良さそうだし、何より質がいい。
 そして回っている途中に事件は起こった。
 「おい、嬢ちゃんよ。ツラ貸せや」
 「そんなゴミはほっとこうぜ!」
 「俺たちといいことしようぜ」
 少し路地裏に入ったところをチンピラ3人組に絡まれた。
 そこ!小さい子供になんてこと教えるんだ!
 「行くぞ」
 「……おい、ちょっと待てや!」
 そう言うと、チンピラ1が俺に殴りかかってきた。
 ……うわー、おっそ。こいつら弱!レオンの5分の1以下だな。
 拳には拳で対応するのが俺の流儀だ。ということで、俺はがら空きの顎にアッパーを繰り出した。
 そいつは一撃で失神し、吹っ飛んだのち、ゴミ箱に衝突した。
 これ、俺がこの世界に来る前でも勝てたと思うぞ?
 「お前!よくもアニキを!」
 そうしてチンピラ2が殴りかかってくる。
 ……君たち経験を生かそうよ。なんでやられたのに同じことしてくるわけ?
 そしてチンピラ2をストレートで顔面をぶち抜き、顔を押さえながら悶絶していた。
 「うおおおおおおぉぉ!!」
 蛮勇はいいが、無闇に突ってくるなよ。何も考えないことが一番ダメだぞ。
 そして最後のチンピラ3の顔面に擬似ドロップキックを打ち込んだ。
 いやー、綺麗にぶっ飛んだね。路地裏の壁にめり込んじまったよ。
 昔は出来なかったのに今はもう軽々とできる。勇者ステータス万歳だな。
 「……大丈夫?ご主人様」
 「あんな奴らに俺は負けない。それよりもう終わりか?」
 「うん!もう満足したよ」
 「ならよ 良かった。もう帰るぞ」
 「うん!」
 こうして帝都観光はチンピラに絡まれるというアクシデントがあったものの、買い物も無事済ませたし、エルも喜んでくれた結果となった。
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