全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

16話 初めての食堂

魔剣 ダーインスレイブを作り終わると、空は茜色に染まり、夕方を示しいた。

 「あ、やべえ」

 そう言って外へ出ようとすると、メイド服に着替えたルーナがいた。

 「……いつから見てた?」
  
 「トオルが部屋で何作ろうかなって言って禍々しいものを作り始めた時から」

 恥ずかしい!ちょっと、いやだいぶニヤニヤしていたところを見られた!

 「ところで何の剣を作ってたの?」

 「あ、ああ。魔剣 ダーインスレイブっていうやつで。……まあ、間違いなくハイスペック……、いやこれは凶スペックと言うべきかな?」

 「いや、私に聞かれても……」

 そりゃそうだな。相手にも分からないのに、自分に答えられる訳がない。

 「まあ、とにかくそれだけぶっ壊れ武器だよ。……まあ、魔剣だから、多少の代償は必要だけどな」

 「何の代償なの!?」

 あまりの迫力に驚いてしまった。

 「お、おう。抜いてからは生き血を吸うまで鞘には戻らないって言う代償なんだが……」

  「それって人間の血だけじゃないとダメっていう決まりはあるの?」

 「いや、それに関してはまた今度実験するから今のところは分からないよ。まあ、生き物のって書かれてあったから生き物ならなんでもありだと思う」

 ホッとルーナは息をついた。
 ……何でそんなに他人のことなのに自分がホッとするんだ?だけど、これを聞いたらなんか怒られそうな予感がするからやめておこう。

 「じゃあ、もうそろそろご飯の時間だから出来たら呼ぶね。また、空飛んで何処かに行かないでよ。ご主人様」

 「おい!」

 「あはっ!じゃあまた後で」

 そう言って俺から逃れるように颯爽と部屋を出て行った。
 ったく、そんなにすぐに俺は飛ばねえよ。
 ……やばい。これフラグか?フラグなのか!?だとしたらまずい!今度は怒られるだけじゃ済まないかも!
 俺が何処か行った時に帰ってきたルーナの顔を想像すると、冷や汗が止まらない。
 よし!俺は引きこもろう!そう俺はベッドに包まった
 その決意も虚しく、すぐに楓とルーナが来てしまった。

 「透ー、晩御飯出来たみたいだから行こう」

 「起きてくださいよ!」
  
 ルーナは俺の布団を思いっきり俺ごとぶん投げた。

 「ナイスシュート!」

 「イェエイ!」
  
 「イェエイ!」

 そこ!人をぶん投げておいて、ハイタッチするなし!

 「痛て……。ったく、怪我したらどうするんだ?」

 「「え?透(トオル)が怪我なんてするはずないじゃん」」

 おー!見事なまでのハモリ具合。
 ……っていうか俺ってどんなに頑丈な人間設定なの?俺、日本人では脆い人間の代表だったんだけど……。
 まあ、いいや。それより飯だ!飯!昼も外で食べたけど、依頼をこなすのに疲れたし、魔剣を作るのにも疲れたし、流石に腹が減ったぜ。

 「飯行くんだろ?なら行こうぜ」

 「そうだね」

 俺たちは飯のために王城の食堂に行くことになった。
 ここの食堂はメイドや執事、騎士団の面々も利用している食堂だ。ここに来るのはこれが初めてだ。
 俺の都合でここに来れなかった時もあったからな。その点は詫びるしかないだろうな。
 実際、王城の食堂はどんな感じなのかレオンに聞いた時に気になっていたんだけど、なかなか行く気になれなかった。
 だって、ルーナが一緒に食べるとか言ってるし、メイドさんたちのところに俺たちが行ったら緊張して食べられなくなりそうだからな。
 だから、特別に貸切状態にしてもらうことになった。夕方のこの時間は誰も使わないからと、食堂のおばちゃんにOKされた。と、楓が言っていた。
 楓はここの食堂をよく利用していたらしい。

 「着いたよ。ここが食堂だよ」

 食堂は、街でやっているような昔風な食堂じゃなく、豪華でまさにモダン的な食堂だった。席も沢山あり、全部で何と250席もあるらしい。
 ……そんなに必要なのか?
 楓に案内してもらって席に着いた。
  
 「メニューはどれがいいか好きなの選んでね」

 楓はそう言った。
 ……ここで俺は重大なことに気がついてしまった。
 俺、この世界の文字読めねぇじゃねぇか!!
 メニュー欄には俺の知らない文字がズラーっと書かれていた。
 楓はどうやったの!?言語チート持ってるの?

 「すまん。俺この世界の文字読めない……」

 「「……」」

 お願い!そこで沈黙を流さないで!

 「ま、まあ仕方ないと思うよ!みんなわからないと思うし」

 「じゃあなんで楓は文字読めるんだよ」

 「え?そりゃ覚えたからだよ」

 まあ、そりゃそうしょうね!俺にはそんなことは出来ないの!俺は話せるの1ヶ国語だけだから!……自慢していうことじゃないけど。

 「まあ、トオルは読めないから、メニュー読んであげよう」

 「そうだね」

 グサッ!俺に大ダメージがくらった。

 「じゃあ、ホロ肉の照り焼き、カツ丼定食、サナマグロの刺身の三つの中で選んで」

 「……一応聞いておくが、なんでその3つなんだ?」

 「私が食べたことがあるのがこの3つだから」

 まあ、たしかに。
 早く文字読めるようになりてぇーーーーーーーー!!

 〈スキル検索開始……合致スキル1件。表示します〉

 それで出てきたのが、〈言語学〉というスキルだった。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<言語学>

 常時発動型スキル。全ての言語が手に取るように分かる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あるんかい!!俺の痛められた心の傷の賠償を請求する!
 
 「〈言語学〉」

 俺がそう唱え、メニューを見てみると、あれだけ難解複雑なあの文字が一目で分かるようになった。

 「……読めたわ」

 「「え?」」

 「だから、メニュー読めた」

 「……えっと、じゃあこの文字分かる?」

 ルーナが指をさしてそう聞いてきた。

 「えっと、サマの煮焼きだろ?」

 「……合ってる」

 「えーー!どうやってやったの?」

 「スキルの力だな。まじスキル便利!それより、何にするか決めたか?」

 「私はカツ丼定食!」

 「私は、このボリの蒸し焼きというものをもらおうかな」

 「じゃあ俺は、間をとって刺身定食で」

 「「……なんの間をとったの?」」

 「それは俺も思った」

 特に何も考えずに言ったからな。

 「じゃあ、行くか。……そういえばここってお金いるのか?」

 「いや、いらないよ。ここは国がお金を支払っているそうだよ」

 「そうなんだ」

 よかった。俺金は持ってるけど、出来たら残しておきたいからな。必要経費以外。

 「おばちゃん。カツ丼定食一つで」

 「はいよ。ちょっと待っててね。他の2人も注文聞こうか」

 「私はボリの蒸し焼き一つ」

 「俺は刺身定食一つ」

 「ボリに刺身ね。ちょっと待っててね」

 そう言われて10分後、みんなのご飯が完成した。
 今気づいたんだけど、カツ丼っていう風習がこの世界に広まってることに驚いた。
 ルーナのボリの蒸し焼きはすごくブリに見えた。ていうかもうブリだろ!
 俺の刺身定食は白ご飯、味噌汁、刺身(地球の刺身で例えるなら、サーモン、マグロ、カンパチ、タイ、イクラ、ウニ)があった。
 地球のもので例えるのは名前が分からないからであって、決して、そういう味ではないだろう……多分。

 「「「いただきます」」」

 俺は醤油を取り皿に入れ、マグロもどきを食べた。
 
 (うまい!)

 普通に刺身として美味しいんだけど、新鮮度が桁が違う。
 スーパーとかで売っているマグロとは雲泥の差がある。……この鮮度、どうやって維持しているんだろう。
 ていうかマグロやん!
 俺は海鮮丼にしたら美味そうと思って、刺身(ウニもどき以外)をご飯に盛り付けた。
 上から醤油をかけ、一口食べる。

  「うまい!」

 おっと、楓とルーナから心配そうな視線が飛んできた。
 やっぱり魚といえば刺身だな!ご飯が進むぜ!あっという間にばくばく食べ気がついたらもう食べ終わっていた。
 そして味噌汁も飲み干した。

 「ふうっ、ご馳走さま」

 「「早っ!」」

 お腹が空いていたことと、海鮮丼の旨さが掛け合わさって、いつもの俺とは比べ物にならないほど早く食べ終わることが出来たのだろう。

 「……すまん。ちょっと腹一杯やから部屋に戻っといていい?」

 「うん、いいよ」

 「ありがとうな」

 俺は食器をおばちゃんに出し、お腹を押さえてMy roomへと戻るのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品