スズメな私とニンゲンな君

くも

人間って

大空を飛べる私たちが羨ましい、と。
自由に生きている私たちが羨ましい、と。
人間たちは口を揃えてそう言う。
…何も分かっていない。
なにも分かっていないからそう言えるのだ。
小さい鳥である私は大きな鳥に狙われ、毎日ビクビクしながら過ごしている。
更に苦労尽くしのエサ探し。
自由なんて、そんなものはない。
もうしんどい。なんで私は鳥に…スズメに生まれてきたんだろう。
人間ってのは本当に楽だと思う。
雨が降ったら家の中に過ごせる。誰かに殺されないかとビクビクして生きる必要もない。食べ物だって普通に手に入る。
そんなに十分に豊かなんだ。空なんか飛べなくてもいいだろう。
「欲張りすぎなんだよ、人間サンたちは」
なんてことを、お気に入りの木に止まって人間たちを見下ろしながら考える。
「お洒落なお洋服を着て、美味しそうな食べ物を食べれて、あったかい水浴び…じゃない、お風呂だっけ?に入れて。羨ましいよ」
と言ってみるが、しょせん私はスズメだ。人間からしたらただちゅんちゅん言っているように聞こえているだろう。
そんな私のちゅんちゅんといった鳴き声を人間たちは気がつくはずもなく、普通に私の前を素通りしていく。
「…羨ましい。ほんとに羨ましいよ」
目の前を行き交う人間たちに妬んだ視線を向け、ついでに羽毛をブワッと膨らませる。
私は本当に人間が羨ましかった。人間が好きだった。
私たちよりうんと楽しそうで自由な人間が。
いわば、憧れだ。
もし私が人の言葉を話せたら…と考えたことは何回もある。
人の言葉を話せたら、憧れの的である人間と話せることができるのだ。
なんて楽しそうなんだろう。考えただけでわくわくする。
「…逆に人間が鳥の言葉を理解してほしいんだけどね」
はぁ、とため息をつく。
いつか人の言葉を話せるようになって…あわよくば私自身が人間になって…
「無理無理。あー、私なに考えてるんだろ。あはは。
さて、お腹すいたし、エサでも見つけにいこーっと」
絶対に本当にならない自分の考えがバカバカしくなり、軽く笑い飛ばして木を飛び立とうとした。
__その瞬間。

「俺がお前を人間にしてやるよ」

「…!!?」

ふと、どこからか声が聞こえてきた。
私を…人間に…?
私が理解できる言葉ということは、声の主は私と同じ鳥なのだろう。
驚きのあまり、広げた羽をぐちゃぐちゃにしたまま折りたたんでしまった。

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