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小料理屋『ハレノヒ』の常連客始めます

花波真珠

Part3 朝6:00の定食②


白米と焼き鮭を一緒に口に運ぶと、お米の甘みとまろやかさに鮭の塩味が丁度良く合って、幸せな気分になった。
程よい鮭の油が口に広がり、食欲をそそる。

「美味しい…。」

私はその勢いでお味噌汁を飲んだ。
昆布のコクのあるダシがよく効いていて、味により深みがある。
私は手を止めることなく食べ続けた。


「ふぅ…。ご馳走様でした…!」
「うん。いい食べっぷり。」

「またすぐにでも来ます!明日でも……あ。明日学校だ……」


「学校?あんたまだ高校生?」
「いやいやまさか!大学生です。薬学部で」

将来の夢、薬剤師に向けて大学に入ったものの、忙しくて最近貧血になったり喘息が出てきたり、そのせいで食事もまともに取れなかったし、うまくいっていなかった。

しかも人見知りで地味な私は、いじめにあったり、先生に極端に強く当たられたり、もちろん友達はできなくて、学校が
憂鬱ゆううつで仕方がなかった。


「嫌だなぁ……」

「学校好きじゃないのか?」
「はい…、まぁ色々悩んでて」

すると店長さんは小さいメモ紙にボールペンで何か書くと、私に渡してきた。


ハレノヒ  たまき創真そうま   
電話番号  ○*□◇-▽◎△○


名前と携帯の電話番号が書かれていた。
私は首を傾げた。

「なんかあったらこの番号にかけていいぞ。実際何かできなくても、相談にのるくらいはしてやれるから」

私は嬉しい気持ちが込み上げて、胸がきゅうっと苦しくなった。

「LINEでもいいけど、文字より声の方が楽でしょ?」

涙が出てきそうなくらい、感謝しかなかった。

「ありがとうございますっ、嬉しいです!」


店長さんはにこっと笑った。
「どういたしまして」と言うと、花柄のお盆を空っぽのお皿と一緒にキッチンに持って行ってくれた。

なんで私なんかに優しくしてくれるんだろうなんて疑問に思ったけど、とりあえずもらった紙を肩に下げたポシェットに入れた。


キッチンからお皿を洗う音が響いてきた。
明日朝、また定食が食べられないのは残念だったけど、夕方でも絶対に来ようと思った。

キッチンから店長さんが出てきた。

「まだ時間ある?」

「は、はい。今日は予定ないので……」

キッチンの中から手招きをしている店長さんを見て、私はそっちに入っていった。
狭いキッチンの奥には無地の暖簾がかかっていて、奥の広い部屋は見覚えがあった。


「あ、昨日私が休憩させてもらった部屋」
「ここ、キッチンは繋がってるし、あそこのドアはトイレとお風呂があるし、ベットもあるでしょ?一応ここに住んでる」

「え、え!私店長さんの家にお邪魔してたんですか!?ご迷惑でしたよね」

「いいのいいの。店が休みの日にご飯食べたい時にこっちの部屋の入り口から来て。一人暮らしでどうせちゃんとご飯食べてないだろうから、たまに作ってやるよ」

店長さんの作るご飯がお店が休みの日にも食べられるなんて…
本当に迷惑じゃないかなぁ。
なんか邪魔になる気もするけど……


「あの、店長さんっておいくつですか?」
「ん?今年で28」

「え!?お若いですね…!私より8つ年上だ。意外と年近いですね」

「ふふっ、全然俺の方がおじさんだよ」


「じゃあ、私これで失礼しますね。明日また来ます」
「あぁ。待ってるよ」

私は店の入り口から出て、振り返らずに家に向かった。

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