異世界でも目が腐ってるからなんですか?
特別編 ハロウィン2020
「そういやそろそろハロウィンの時期か」
「ハロー、イン?」
暑さが控え、秋の涼しさを感じ始めた頃にポツリと言葉を漏らすと、レチアが反応した。
「ハロウィンな。挨拶してどこにINする気だ?」
「知らにゃいよ。何かのお祭りかにゃ?」
「祭り……まぁ、祭りと言えば祭りか。俺の故郷だと仮装してトリックオアトリート……つまりお菓子をくれなきゃイタズラするぞって言ってお菓子を貰ったりするんだよ」
「賊が言いそうな物騒な言葉だな」
すると俺たちの会話に興味を持ったのか、ララがそう言って会話に入ってくる。
「そうでもない。別にイタズラっていうのは命を奪う奪われるの話じゃないからな。適当に甘いものをあげればいいんだ」
だがしかし。俺からしてみれば国や地域の行事の季節が訪れるたびに嫌がらせされるからいい思い出なんて一つもないがな。
小中学生の時に普段関わらない奴からトリックオアトリートと言われ、もちろんお菓子など持参してない俺は虫の死骸や蛇の抜け殻を机の上に置かれる、運動着に突然パンツを下ろされるなどトラウマになるレベルのイタズラをやられたものだ。
いい思い出どころか最悪な記憶しかねえ。
「で、なんで急にそんな話にゃ?」
「いやだからそんな季節になったな~ってだけで……もしかして今ちょっと甘いもの食べたくなってたりするのか?」
「気のせいにゃ~」
顔を逸らして下手な口笛を吹き始めるレチア。わかり易すぎる……むしろわざとやっておるな、この娘。
しかしこの世界の甘味は俺たちでは手が出せないほど高い。明治時代の高級チョコレートかよってくらい。
だがしかし。
女の子の甘いもの好きもどこの世界でも変わらないようで……今更ではあるが俺はそこまでじゃないから平気だけれども、スイーツ大好きな奴がこの世界に来たら発狂ものだよな。
「仮装と言ったな。変装とは違うのか?」
「意味的には同じだが、違うのはその目的だ。変装は誰かを騙したり目を欺くためにやるが、仮装は娯楽……つまりこの場合はハロウィンや遊ぶためのもんだ」
なるほどと言って納得するララ。
しかしまぁ……
「ここにいるメンバーは俺以外、誰も仮装しなくて良さそうな外見をしてるよな」
「なんか失礼な感じがするけど……どういう意味にゃ?」
何を思ったのかジト目で俺を睨むレチア。
「悪い意味じゃないぞ?ハロウィンの仮装ってオバケやドラキュラ、猫娘みたいなちょっと人じゃないものになろうとするんだよ。でもレチアはすでに猫耳尻尾が素で付いてるし」
「付いてるにゃ」
「ララは目が黒くて瞳も赤いから吸血鬼っぽい感じがするし」
「魔王だがな」
「イクナも肌が青いし」
「アオイヨ!」
それぞれの返事をするレチアたち。もうそのままでハロウィンの仮装としては完成してるんだよな。
もしハロウィンで仮装するとしたら俺とガカン……いや、もしかしたらガカンも素で行けるかもしれん。
俺はどうする?わかりやすく目だけ残して全身包帯を巻いてミイラにでもなろうか。
……ま、もうハロウィンのないこの世界でそんなこと考える必要ないんだけどな。
「ふむ……仮装というとこんな感じか?」
「……え?」
ララが突然そんなことを言い出し、俺が振り向くとそこには猫耳と尻尾を付けたあざと可愛い格好をしたララがいた。
えっ、どこから取り出したの、それ……というかなんで持ってるの?猫耳付けてみたくてずっと持ってたのか?何それ可愛い。
「たしかにそうだけど……なんでお前――」
「オニイチャ!オニイチャ!ミテミテ!」
すると今度はイクナがはしゃぐ声で俺を呼ぶ。
待て待て、イクナも何か用意してたのかよ?
ハロウィンを初めて聞いたって言ってたけど、実はこの世界のこの季節にも似た風習があるんじゃないのか?
そう思いつつもイクナの方へ振り向くと、そこには胸を大きく膨らませたイクナの姿があった。
「デッカクナッチャッタ!」
どっかの芸人が言いそうな言葉と共にそう言い放ったイクナの胸は、ちょうどレチアと同じくらいのサイズになっている。
……なんか思ってたのと違う。
仮装ってたしかに普段とは違う姿になるもんだけど、女性のスリーサイズの一部を変化させるのは絶対違うと思う。
「枕でも入れてるのか?下品だからやめなさい」
「チガウヨ!レチアチャンカラモラッタノ!」
何が違うのか。胸を大きくする用のジョークグッズでも貰ったのだろうか。
すでに胸の大きなレチアには不必要なもののはずだが。
「我もだ。レチアから拝借したぞ」
ララまでそう言う。
何なの、あの子は?自分の個性を集める習性でもあるのだろうか……
というか、さっきから喋らなくなったけど本人はどこ行った?
レチアの姿が見えず周囲を見渡す。
すると「ソレ」はいた。
「レ……チア……?」
彼女の特徴である耳も尻尾も、ついでに胸も無くなってしまっている見るも無惨なレチアが無気力に地面へ転がっていた。
拝借……貰ったってまさか……?
彼女らが身に付けているのはまさかレチアの一部……
――ガチャ
不意に扉が開く。
そっちに目を向けると見覚えのある幼い少女がいた。
レチアのように低い身長でありながも大きな胸を持っているメリーらしき人物。
「メリー……か?その姿は……」
「ふひっ……この身長?……レチアちゃんから貰ったんだよぉ」
ネットリとした言い方で不気味にそう言い放つメリー。
俺はもう、どんな姿になってしまってるかわからないレチアがいる後ろを振り向けなかった。
それでも彼女は声を発した。
「ヤタ――」
おかしい。見てもいないのにレチアが笑ってる気がする。
レチアだけじゃない。ララも、イクナも、メリーも……普段とは違う不気味な笑いを浮かべているように思えて仕方なかった。
「「「「トリックオアトリート」」」」
――――
「うわぁぁぁぁぁっ!?」
「何にゃぁぁぁぁっ!?」
叫びと共に勢いよく飛び起き、横にいたレチアもその悲鳴で一緒に起きてしまった。
視線をレチアに向けると、いつもの猫耳のある不自然に大きな胸を持った少女の姿を確認する。
「…………うにゃ」
レチアは寝惚けているらしく、しばらくボーッと正面を向いていたと思ったら倒れ込むように再び眠りに就く。
周囲はさっきまでいた部屋ではなく暗闇に包まれた森の中だった。
ララにも猫耳や尻尾は付いてないし、イクナの胸も大きくない。メリーだって普通の身長だ。
これはつまり……
「……えっ、夢オチ?」
酷い夢オチである。
「ハロー、イン?」
暑さが控え、秋の涼しさを感じ始めた頃にポツリと言葉を漏らすと、レチアが反応した。
「ハロウィンな。挨拶してどこにINする気だ?」
「知らにゃいよ。何かのお祭りかにゃ?」
「祭り……まぁ、祭りと言えば祭りか。俺の故郷だと仮装してトリックオアトリート……つまりお菓子をくれなきゃイタズラするぞって言ってお菓子を貰ったりするんだよ」
「賊が言いそうな物騒な言葉だな」
すると俺たちの会話に興味を持ったのか、ララがそう言って会話に入ってくる。
「そうでもない。別にイタズラっていうのは命を奪う奪われるの話じゃないからな。適当に甘いものをあげればいいんだ」
だがしかし。俺からしてみれば国や地域の行事の季節が訪れるたびに嫌がらせされるからいい思い出なんて一つもないがな。
小中学生の時に普段関わらない奴からトリックオアトリートと言われ、もちろんお菓子など持参してない俺は虫の死骸や蛇の抜け殻を机の上に置かれる、運動着に突然パンツを下ろされるなどトラウマになるレベルのイタズラをやられたものだ。
いい思い出どころか最悪な記憶しかねえ。
「で、なんで急にそんな話にゃ?」
「いやだからそんな季節になったな~ってだけで……もしかして今ちょっと甘いもの食べたくなってたりするのか?」
「気のせいにゃ~」
顔を逸らして下手な口笛を吹き始めるレチア。わかり易すぎる……むしろわざとやっておるな、この娘。
しかしこの世界の甘味は俺たちでは手が出せないほど高い。明治時代の高級チョコレートかよってくらい。
だがしかし。
女の子の甘いもの好きもどこの世界でも変わらないようで……今更ではあるが俺はそこまでじゃないから平気だけれども、スイーツ大好きな奴がこの世界に来たら発狂ものだよな。
「仮装と言ったな。変装とは違うのか?」
「意味的には同じだが、違うのはその目的だ。変装は誰かを騙したり目を欺くためにやるが、仮装は娯楽……つまりこの場合はハロウィンや遊ぶためのもんだ」
なるほどと言って納得するララ。
しかしまぁ……
「ここにいるメンバーは俺以外、誰も仮装しなくて良さそうな外見をしてるよな」
「なんか失礼な感じがするけど……どういう意味にゃ?」
何を思ったのかジト目で俺を睨むレチア。
「悪い意味じゃないぞ?ハロウィンの仮装ってオバケやドラキュラ、猫娘みたいなちょっと人じゃないものになろうとするんだよ。でもレチアはすでに猫耳尻尾が素で付いてるし」
「付いてるにゃ」
「ララは目が黒くて瞳も赤いから吸血鬼っぽい感じがするし」
「魔王だがな」
「イクナも肌が青いし」
「アオイヨ!」
それぞれの返事をするレチアたち。もうそのままでハロウィンの仮装としては完成してるんだよな。
もしハロウィンで仮装するとしたら俺とガカン……いや、もしかしたらガカンも素で行けるかもしれん。
俺はどうする?わかりやすく目だけ残して全身包帯を巻いてミイラにでもなろうか。
……ま、もうハロウィンのないこの世界でそんなこと考える必要ないんだけどな。
「ふむ……仮装というとこんな感じか?」
「……え?」
ララが突然そんなことを言い出し、俺が振り向くとそこには猫耳と尻尾を付けたあざと可愛い格好をしたララがいた。
えっ、どこから取り出したの、それ……というかなんで持ってるの?猫耳付けてみたくてずっと持ってたのか?何それ可愛い。
「たしかにそうだけど……なんでお前――」
「オニイチャ!オニイチャ!ミテミテ!」
すると今度はイクナがはしゃぐ声で俺を呼ぶ。
待て待て、イクナも何か用意してたのかよ?
ハロウィンを初めて聞いたって言ってたけど、実はこの世界のこの季節にも似た風習があるんじゃないのか?
そう思いつつもイクナの方へ振り向くと、そこには胸を大きく膨らませたイクナの姿があった。
「デッカクナッチャッタ!」
どっかの芸人が言いそうな言葉と共にそう言い放ったイクナの胸は、ちょうどレチアと同じくらいのサイズになっている。
……なんか思ってたのと違う。
仮装ってたしかに普段とは違う姿になるもんだけど、女性のスリーサイズの一部を変化させるのは絶対違うと思う。
「枕でも入れてるのか?下品だからやめなさい」
「チガウヨ!レチアチャンカラモラッタノ!」
何が違うのか。胸を大きくする用のジョークグッズでも貰ったのだろうか。
すでに胸の大きなレチアには不必要なもののはずだが。
「我もだ。レチアから拝借したぞ」
ララまでそう言う。
何なの、あの子は?自分の個性を集める習性でもあるのだろうか……
というか、さっきから喋らなくなったけど本人はどこ行った?
レチアの姿が見えず周囲を見渡す。
すると「ソレ」はいた。
「レ……チア……?」
彼女の特徴である耳も尻尾も、ついでに胸も無くなってしまっている見るも無惨なレチアが無気力に地面へ転がっていた。
拝借……貰ったってまさか……?
彼女らが身に付けているのはまさかレチアの一部……
――ガチャ
不意に扉が開く。
そっちに目を向けると見覚えのある幼い少女がいた。
レチアのように低い身長でありながも大きな胸を持っているメリーらしき人物。
「メリー……か?その姿は……」
「ふひっ……この身長?……レチアちゃんから貰ったんだよぉ」
ネットリとした言い方で不気味にそう言い放つメリー。
俺はもう、どんな姿になってしまってるかわからないレチアがいる後ろを振り向けなかった。
それでも彼女は声を発した。
「ヤタ――」
おかしい。見てもいないのにレチアが笑ってる気がする。
レチアだけじゃない。ララも、イクナも、メリーも……普段とは違う不気味な笑いを浮かべているように思えて仕方なかった。
「「「「トリックオアトリート」」」」
――――
「うわぁぁぁぁぁっ!?」
「何にゃぁぁぁぁっ!?」
叫びと共に勢いよく飛び起き、横にいたレチアもその悲鳴で一緒に起きてしまった。
視線をレチアに向けると、いつもの猫耳のある不自然に大きな胸を持った少女の姿を確認する。
「…………うにゃ」
レチアは寝惚けているらしく、しばらくボーッと正面を向いていたと思ったら倒れ込むように再び眠りに就く。
周囲はさっきまでいた部屋ではなく暗闇に包まれた森の中だった。
ララにも猫耳や尻尾は付いてないし、イクナの胸も大きくない。メリーだって普通の身長だ。
これはつまり……
「……えっ、夢オチ?」
酷い夢オチである。
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