マギアルサーガ~うたかたの世に幕を引け~

松之丞

Chapter-07 Prologue【勇者の伝説 - 四章】

女王ツバキナが導いたのは 不可侵の孤島でした
そこでは 賢者アポロや 女王ツバキナに 叡智を分け与えた
孤独な女神が 住んでいるというのです

アルとアレクは最初 御伽噺じゃあるまいし と高を括っていました
しかし孤島に一歩踏み入ると そこはまるで 御伽噺の世界でした
ピクシーが羽で舞い ノームが草陰に潜み
毛むくじゃらなトロールが 悪戯なシルフと戯れていました

目の前を 不思議そうな表情で ピクシーが通り過ぎます
二人は呆気にとられていました
それもそのはず 絵本でしか見たことのない世界が 広がっているのですから

見慣れているからか 賢者と女王は 気にも留めず 前を歩いていきます
草花が生い茂る 道の脇で 興味津々な 妖精たちが まじまじと見つめてきました

アレクは言いました
「これは……? この子たちは……妖精ですか? まさか、こんな世界があるなんて……」
賢者アポロは言いました
「ここは世界の界層が揺らぐ地。幻想が現実に割り込んだ世界だ。伝説上の生物もいるさ」
女王ツバキナは言いました
「幻想だけが、神様の目を欺けるのです。彼らこそ、世界の悲劇を救い得る証左なのです」

二人には にわかに信じることも にわかに理解することも できませんでした

歩を進めていくと 島の中心には 天にまで届く大樹が そびえ立っていました
大樹の幹の太さは アルの住んでいた 立派な邸宅が すっぽりと収まってしまうほど

大樹に近づくと 大人三人分ほどの 大きな虚が空いていました
その虚を塞ぐように 木の扉が設けられています 誰かが住んでいる 証拠でした
賢者アポロは 躊躇なく 扉に手を掛けます
その先には 大きく開けた 広間が広がっていました

テーブルに並べられた器に注がれる 木の実のスープが 鼻をくすぐります
壁には大小様々な穴が開き 扉で塞がれていました
香ばしい匂いにつられてか 眠気まなこの妖精たちが その扉を開けて出ていきます

そこは 島に生きる妖精たちの 住処となっていました
外で遊んでいた 妖精たちも 続々と 中に入ってきました
アルとアレクは 忙しない妖精たちに道を譲りながら 先を進む賢者の後を追います
広間の奥には 少しくたびれたローブを纏った 一人の女性がいました

賢者アポロは言いました
「彼女が、創造主の末裔だ」

表題:勇者の伝説 四章 ~神の統べる島~
作者:不詳
年代:不詳
取扱:禁書処分

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