マギアルサーガ~うたかたの世に幕を引け~

松之丞

Chapter-05 Prologue【勇者の伝説 - 二章】

それはアルが成人した年でした 彼は一緒に冒険に出ようと アレクに持ちかけます

王侯貴族にとって冒険は 神話から受け継がれる 名誉ある修行の旅でした

そしてアルには一つの野望がありました 人々を苦しめる怪物を たくさん倒すことです

アレクのように苦しむ人々を もう見たくはなかったのです

アレクは快く承諾しました 彼もまた 自分のような人々を 救いたかったのです

冒険に出たいというアルの希望は 当時の王様により許されました

王様はアルに 一つの提案をします

それは 北の辺境に住む 命の賢者アポロを訪ねてはどうか という提案でした

賢者アポロは それはそれは賢く 二人の進むべき道を 指し示してくれるかもしれません

早速アルとアレクは 命の賢者アポロが住まう 北の辺境を目指しました

しかし 二人を待ち受けていたのは とても険しい道のり

明くる日も明くる日も 道中の二人に襲い来る怪物と戦い続けました

二人は並外れた力がありました それでも怪物と度重なる戦いで 疲れ果ててしまいます

北の辺境に差し掛かった森の中 二人が疲れを癒そうと 川で水浴びをしている時でした

気持ちよく水浴びをして 警戒を解いていたのです 茂みに潜んだ怪物に全く気が付きません

せっせと汚れを洗い落とす二人に 怪物が襲いかかります 熊よりも力強く 豹よりも素早く

不意を衝かれた二人は素っ裸のまま 剣も鎧も纏わず 抵抗には限界がありました

追い詰められたアレク 背後には身の丈を越す岩

怪物の鋭い爪が 彼の喉元に伸び あわやという その時でした

アレクは背中に熱いものを感じます 不思議とそれは 自分を守ってくれるものだと

背中に手を回して それを握りしめます そして力の限り 怪物目掛けて振り抜きました

遥かな煌めきが迸ります 怪物は閃光の軌跡に沿って 真っ二つに両断されてしまいました

窮地を脱した喜びを分かち合うアルとアレク 同時に アレクの握る輝く剣を不思議がります

その時 茂みが揺れる音が聞こえました 二人は咄嗟に身構えます

ですが茂みから現れたのは 髭を蓄えた初老の男でした

浮世離れした雰囲気を纏う隠者 一目見て理解します 彼こそが賢者アポロでした

賢者アポロは言いました

「それを抜いたか。なれば貴公こそが勇者であろうよ」

アルは言いました

「僕はアルトリウス、彼はアレキサンダー。賢者アポロとお見受けします。して、これは?」

賢者アポロは言いました

「錠があるなら鍵もある。そいつは謂わば、鍵。この世の理屈をこじ開ける代物だ」

それがどういう意味か 二人はまだわかりません

来る時に向け アポロは二人を鍛えることにしました

表題:勇者の伝説 二章……星鍵の勇者
作者:不詳
年代:不詳
取扱:禁書処分

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