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世界再生記

高木礼六

謎の島にいた

波の音が聞こえる。穏やかな波だ。岸に打ち上げる小さな波の音がぴちゃぴちゃと心地よい音を奏でて心が安らぐ。

どうやらここは浜のようだ。波の音が近いし、背中には砂の感触がある。

重たい瞼を上げ、体を起こし、動きの鈍い脳みそで今ここがどこなのかを確認する。


「えーっと、目の前には海、左を見ても海、右を見ても海、後ろを見てみても海、下には不自然にここだけ浜ができている、上に広がっているのは青く澄み渡る空、つまりここ以外にはなにもない、ここは無人島、いや無島って、なんじゃこりゃあ~ーーー!!」


何もない障害物の無いだだっ広い空間に叫喚が響き渡った。


ーーおかしい、おかしい、何で俺はこんなところで寝てたんだ?つーかここどこだよ!?訳わっかんねえよ!俺はさっきまで学校に居たはずだ、もしかして漂流?いや普通に高校生活を送ってりゃそんなこと起きるはずがない。あぁ頭が痛くなってきた。


統はこの目覚めて起きた突然の出来事に頭を抱えてしまった。今までなったこともない偏頭痛的痛みもするし、身に覚えの無い漂流、この先どうなるのだろうか、不安と絶望感がどっと押し寄せてくる。

この状況、どう考えても普通ではない、ならば、もう一度冷静になって現状を把握しなければ、


「そ、そうだ統、落ち着け、落ち着くんだ、落ち着かないと弓道精神に反するってもんだ、だから、落ち着いてこんな馬鹿げた展開に至るまでの顛末を辿るんだ。」


統は肺一杯に空気をためて呼吸を整え、小指と小指を絡めた。
これは弓道の大事な試合なんかがあるときにいつもやるリラックスするための習慣みたいなもんだ。

漸く頭が落ち着き、状況を理解するだけの容量は得ることができた。


ーーふう、まずは今日の目覚め、はいつもと何ら変わらなかったな、そこから学校に行っていつも通りに弓道の朝練を終わらせてから下駄箱に向かったら、そうだ、生まれて初めてのラブレターが入ってたんだ。


そう、可愛らしいピンクの模様にウサギの絵が描いてあったあれだ。今思い出すだけでも統はにやつきが止まらなくなる。


ーーそれから部活をほったらかして真っ先に屋上に向かっだけど誰も居なかったんだよな、仕方なく差出人が来るまで待ってても誰も来なくて、そしたらいきなり、


「そうだ!声がしたんだ!周りには誰も居なかったのに後ろに光があって、なんか光に呼ばれたみたいだったから、手を伸ばしたら、そのまま、落ち、て、」


統は自分が持っていた最新の情報まで思い出すことができた。

これで何で自分がここに居たのかが分かる、なんて、そんな上手くいくわけがない。
寧ろ更なる混乱を招いてしまった。

不可解だ、統は屋上から落ちてしまった、その事実は鮮明に覚えている、あれが嘘だったとも思えない、校舎は四階建てで屋上から落ちてしまえばただの怪我じゃすまなかったはずだ。

なのに、なのに何故、今彼の体は傷一つ無く、健康そのものでいるのだろうか。

あ、分かった。


「そうだ、これはきっと夢だ、夢を見た夢なんだ。なんだそうだったのか、じゃ、寝てればまた元の世界に戻れるよな、こんなになにもない世界は嫌だ、おやすみ~。」


統は、鼻に漂う潮の香り、小さく囁く波の音、背中に伝わる砂の感触をバッチリ感じながら眠りについた。

これほど五感がはっきりしていたのだ、頬っぺたをつままなくても分かる、再び統が目覚めたときには同じような光景が広がっていた。

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