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魔人に就職しました。

ミネラル・ウィンター

第46話 来客


「ここか」

「そのようです」

 再び平穏な日常をおくっている魔物の村に見知らぬ魔物の影が二つあった。
 一つは魔王軍の4幹部の一人である"剛炎のオラクガ"。もう一つはオラクガの優秀な部下である"ワイシング"だ。

「俺たちが想像していたものよりは大きい所だな」

「確かにそうですな。それに村の周りに一定間隔で"アンデッド・ナイト"を配置している所を見ると、これを指示した者は魔物の特徴をしっかりと理解しているようですな」

 アンデッドは疲労しない上に視野が広いため警備を任せるにはうってつけの魔物だ。
 しかも中位アンデッドの中でも近接戦闘能力が高いアンデッド・ナイトを配置しているところもよく考えられている。
 さらに警備を任されているアンデッド・ナイト達は、どうも普通のアンデッド・ナイトよりも強い力を感じるのだ。見た目は確かに中位アンデッドであるアンデッド・ナイト。これは間違いない。
 しかしそのアンデッド・ナイト達から感じる力は上位アンデッドクラスなのだ。

「ワイシング、この事をどう思う?」

「そうですなぁ・・・。ワタクシ彼らを見たときは特に変わった様子は見られませんでした。と、言う事はワタクシが彼らと遭遇した日から今日のこの日までの間で力を付けたのでしょう」

「この短気間でか?信じられんな・・・」

「見た目の変わらない進化をしたとか・・・?。もしくはこれも魔人という存在の力なのかもかもしれませんな」

「・・・だとしたら恐ろしいものだな。魔王様に報告しなければならない事がまた一つ増える」

 彼らがここに来た目的は魔人に会うため。
 この魔物の村に魔人がいるとの情報を得たので、魔王の命によって彼らはこの村を訪れていた。

「話も一旦ここまでにして、そろそろ入るとしよう」

「そうですな。行きましょう」

 村を外から見ても得られる情報は山ほどある。しかしそれらは今、考える事ではない。
 今回二人が来た一番の目的は魔人に会う事。まだ村の中に入ってもいないのにごちゃごちゃ考えた所で、結果によっては無意味になってしまう事もある。
 まずは魔人と会う。色々と考えなければいけないのはその後からだ。

 オラクガ達は村へと向かった。
 村は周りを囲いで囲われているという訳ではないのでどこからでも入れるようになっていた。
 強いて言うならアンデッド・ナイトが村の囲い代わりだろうか。
 村に入るときはアンデッド・ナイトの隣を通らなくてはいけない。
 急に襲われるという事を考えている訳ではないが二人は少しだけ緊張してアンデッド・ナイトの隣を横切った。

「外からでもわかったが立派に村として機能しているようだな」

「ええ。それに村全体に活気があるようですな」

 特に何か言われる訳でもなく、無事に村の中に入れた二人は直ぐに目に入ってきた光景に感心した。
 この村では様々種類の魔物が暮らしている事がわかった。
 何やらせっせと物を運んだりしている魔物もいれば、その辺で立ち話をしている魔物もいる。
 そして全ての魔物がとても活き活きしているのだ。
 2人も同じ魔物だからこそ分かった。ここは素晴らしい場所だ。

「さて入ったはいいが・・・魔人は何処にいるのだ?」

「特別な気配などは感じませんな。・・・近くにいる住人に尋ねてみましょう」

 オラクガはてっきり魔人の住まいは魔王城の様な特別に頑丈で大きい建物だと勝手にイメージしていた。
 しかしパッと辺りを見渡してもその様な建物は一切見当たらない。
 多少大きい建物はちらほら存在するが、見た感じ住居というよりは物置ものおきの様な作りの建物ばかりだ。
 このまま何もせずぼーっと突っ立ってる訳にはいかないのでワイシングは村の魔物に魔人の事について聞く事にした。
 すぐそこで近くで立ち話をしていたアンデッドに声を掛けようとする、その時―――

「ソノ必要ハナイ」

 突如上から声が聞こえた。

「おお。久しぶりで・・・いえ、そこまで言うほど日にちは経っていませんな。とりあえず、なんともなさそうでよかったですな」

「アア、ハ助カッタ。改メテ礼ヲ言オウ」
 
「いえいえ。魔物同士、困ったときはお互い様ですぞ。"リック"殿」

 そこには魔法で宙に浮いているリックがいた。
 ワイシングとリックはこれで"二度目"の再会となる。
 一度目は二週間ほど前になるので、確かに二週間ほどでは久しぶりと言うには短いかもしれない。
 二週間前と言えばこの村に住む魔物達には記憶に新しい出来事があった日だ。そしてその時に彼らは一度目の再会を果たしていた。




 それは魔物の村が襲撃された日の事だ。
 魔物達はカケルの指示で通りに避難ひなんしていた。
 その場所はリックと初めて出会った場所だ。緑がほとんどなく大地の部分が所々砂漠化している。
 そんな大地が広がるこの場所。
 ここなら人間は滅多に来ない。ここは大陸のかなり南方の場所で魔界と呼ばれる範囲の中だ。
 ここからだと一番近い人間の国はクセルセス宗教国になるが、馬でも数日は掛かる。万が一にも奴らに魔物達がここに避難した事を知られる事はないだろう。
 そんな事を考えてこの場所を選んだ魔人様は流石だと、魔物達は感心をした。

 魔物達が転移してきた後、カケルの具現化した殺気を与えられて動けるようになったアンデッド達が怪我けがをしている魔物達をゆっくりと寝かせていく。
 ほとんどの者達が怪我をしていて動けない。だが幸いなことに回復魔法の使えるトロル達はほぼ無傷の状態だった。
 これはトロル達を誰一人も最後まで戦いに参加させなかったマサムネの采配のおかげと言えるだろう。

 転移魔法を展開していたため、トロル達が一番最後に転移してくる。トロル達が全員転移し終わると、彼らはその惨状を改めて認識した。
 多くの仲間達を失い、生き残った仲間達も怪我をして傷ついているこの状況に思わず絶句ぜっくしてしまう。
 それでもトロル達の代表であるパブルは急いで回復魔法で傷ついた魔物達を癒す様に適切な指示を出した。
 パブルの指示を受けトロル達は我に返り、彼らは迅速じんそくに行動に移す。
 しかし回復魔法はあくまで魔法。使用できる回数は魔力に依存しているのでトロル達の魔力がある分だけしか使うことが出来ない。
 これではどうしても傷ついている全ての魔物を癒す事は叶わないだろう。
 パブルはその事を理解していたのでトロル達に重傷じゅうしょうの者を優先して回復させるように追加で指示を出した。
 怪我人には悪いが重傷者を優先して回復させなければさらに死者が出てしまうのだ。

 ―――だが
 辛いことに重傷であるにも関わらず回復魔法で回復させることが出来ない存在がいた。
 それはリックである。彼は瀕死ひんしの重傷であり、今すぐにでも回復させなければ命が尽きてしまうかもしれない。にも関わらずトロル達にはリックを回復させる事は出来なかった。
 何故なら通常の回復魔法では死者であるアンデッドを回復させる事が出来ないのだ。
 アンデッドを回復させる魔法は別に存在しているがトロル達には使うことが出来なかった。
 だからこそ、彼らにはどうする事もできなかった。パブル達は自分の無力さをうらんだ。
 事前にアンデッド用の回復魔法を習得しておけば・・・と。

「貴方たちは・・・一体何があったのですか?」

 そんな時・・・そんな時にだ。一体の知らないアンデッドが現れた。村に居たアンデッドとは別のアンデッド。この地域にいたアンデッドだろうか?そんなアンデッドが話しかけてきた。




 魔王達は今は亡き4幹部の一人"深淵のエクス"の拠点をさらに部下に調べさせていた。
 オラクガが「エクスの事だ、まだ秘密の隠し部屋があるかも知れない」と言ったので念の為だ。
 この調査の指揮はオラクガの部下である"アンデッド・ロード"の"ワイシング"が手下のアンデッドと共にエクスの拠点を調べていた。

「この痕跡こんせき・・・。我々がこの拠点を調べるよりに何者かがこの拠点に住み着いていたようですな」

 ワイシングが拠点をくまなく調べていると、自分達がこの拠点の事を調べるよりも前に何者かがこの拠点に住み着いてた事が新たに判明した。しかし現在の魔王軍での魔法研究の第一人者だいいちにんしゃであるワイシングでもそれ以上は分からなかった。
 唯一分かったのはここに住み着いていたのは自分と同じ種族の魔物。アンデッドだという事っだけだった。

 それからずっと体力の尽きない特性を生かして彼らは昼も夜もエクスの拠点を調べていた。
 だが新たに部屋や資料が見つかる訳ではなく。あまり成果を出せぬまま時間だけが過ぎていた。
 そんな時、いつもの様にエクスの拠点内を調べているとワイシングは外から微かに音が聞こえて来た事に気が付いた。しかもよく聞くとどうやらその音は魔物同士の会話の様だ。
 気になったワイシングは会話をしている人物を突き止めるために外に出る。そこで彼は見慣れぬ魔物の群れを見つけたのだ。

「何事ですかな?・・・あれは、あの数の魔物が一体なにを?」

 その群れは群れとしては異常な数だった。それに魔物の種族が多すぎる。通常あそこまで多くの種族が群れを成す事は少ない。
 そして何故だかその群れは動く事なくその場にとどまっていた。
 気になったワイシングは《飛ぶ/リェターチ》の魔法を使用し、その魔物の群れの所まで飛んで行った。

 近寄ると、彼らが何をしているかが解かった。
 どうやら彼らは負傷ふしょうしている様だ。そのためこの場に止まり、手当てをしていたのだ。
 だが、謎は深まった。一体なぜこんな何もないところでこれ程のダメージを負ったのか。それに一体いつからこの場所にいたのか。彼らにダメージを与えた者は何処に行ったのか。
 魔法の研究が好きな彼はよく考えてしまう。しかし、それよりも同じ魔物としてはトロル達が一生懸命に魔物達を回復させている様子を見ると、彼らを放ってはおけなくなってしまった。

「貴方たちは・・・一体何があったのですか?」

 魔物の群れに降り立ったワイシングはとりあえず事情を聞く。すると一瞬、魔物達は戸惑ったが一体の"アンデッド・ナイト"がその問いに答えた。アンデッド以外にまともに答える事が出来るのはトロルだけだが、トロル達は回復魔法をしなければいけない。その為トロル達が答える前に一体のアンデッド・ナイトが答えたのだ。

「我々は人間に襲われた」

「人間・・・?ハンターですかな?」

「それはわからない、だがもうその人間たちの事はもう心配することはない」

「それは・・・災難でしたな。良ければ私も手伝っていいですかな?回復魔法は使えますぞ?」

 ワイシングとアンデッド・ナイトのやり取りを聞いていたパブルは彼の発言を聞いて、思わず手を止めた。もしかしたらリックを助ける事が出来るかもしれないと思ったからだ。

「すまないッ!名も知れぬアンデッドよ!ぜひ手伝っていただきたいがその前に一つ!!アンデッド用の回復魔法は使えるかッ!?」

「もちろん。できますぞ」

「!?。な、なら大至急お願いしたいッ!」

「わかりました」

 パブルは今が緊急事態だということはしっかりと理解していた。本来このような勝手な決定はしてはいけないトロルという種族は魔法得意だがそこまで頭が良い訳ではない。いつもならリックやマサムネ、ジャックという頭の良い魔物が判断してくれていた。しかし今ではリックもマサムネもジャックも気を失っている。
 そんな緊急事態の時に彼は自分で考えてリックを助けられるなら、例え外部の魔物だろうが協力してもらうべきだと判断したのだ。

「それで?私はどちらの方を回復させればいいのですかな?」

「こっちだ」

 パブルは名も知らぬアンデッドを瀕死のリックの元に連れていった。

「なっ!?貴方は・・・!!」

 連れていかれたワイシングはそこで今にも力尽きそうなアンデッドを見て驚きの声をあげてしまった。そのアンデッドを彼は知っていたのだ。
 彼は元々魔王軍にいたアンデッドの1人で、今は亡き"エクスの部下"だったアンデッド。
 仕える幹部は違ったが何度か会う機会きかいがあり、その度に魔法について熱い議論ぎろんを繰り広げた事もある。それにそのアンデッドは魔法である発見し当時、魔物の中ではそれなりに有名になった事もある。
 彼とエクスはお互い魔法好きという事もあり、よく一緒にいた事からてっきりエクスと共に死亡したものだと思われていた。しかし、生きている。
 当時の友が生きており、その再開がこんな状況だとはワイシングは夢にも思わなかっただろう。

「異端のアンデッド・・・」

 ワイシングはリックという名前を魔人からもらったアンデッドをそう呼んだ。


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