魔人に就職しました。

ミネラル・ウィンター

第58話 集まった6人

 

「ハズレー誰もいなかったぜぇ!ハハハハハハ!」

「ちっ。ハズレか」


 笑っている男が建物から出てくる。
 そこは魔王教のメンバーが拠点として使っていた場所。もう使っていない拠点の1つだ。
 彼らはそこに訪れていた。

 彼らは転移者。この異世界に召還された者だ。


「でー?次はどーするよぉ!祐介ゆうすけくぅーん?」


 テンションが高く、声も大きく、常にふざけているように笑っている男。男の名前は九条くじょう はやと。常にコインを指ではじく事を止めない奇妙な男だ。


「その呼び方やめろ」


 そしてハヤトに祐介くんと呼ばれたこっちの男。彼の名前は神田かんだ 祐介ゆうすけ。ハヤトとは違い武器も何も持っていない彼は、数枚の紙を手に持っている。その紙の一枚は地図になっており、その地図には数ヶ所にしるしがしてある。


「どこも遠いな。ここに居てくれれば楽だったんだけどなー」


 彼らはアドルフォン王国で、チーム[クロガネ]としてハンターをしている2人組。
 彼らはある人物の依頼で魔王教を壊滅かいめつさせるように頼まれている。そのため、こうやって魔人教のアジト、拠点を回っているのだ。
 この依頼はハンターとしてではない。ハンターは基本的に魔物関連の依頼しか受け付けておらず、魔物の討伐や護衛ごえいなどのものばかりだ。誰を殺して欲しいなんて依頼は一切受け付けていない。ハンターは殺し屋ではないのだ。
 しかし、彼らは組合を通さないで今回の依頼を受けている。それも人殺しの依頼を。


「まだー?」


 ハヤトはコインを弾きながら、次の襲撃場所を催促さいそくする。ユウスケは地図を見ながら、どうするか悩んでいる所だ。ユウスケの返事が返って来ないため、しばらく静かな空間にコインを弾く音だけが鳴り響く。

 少しして、悩んだユウスケが次の場所を決めた。


「次はここにするぞ。青龍国に近いし、ついでに寄っていこうぜ」


 次に向かう場所は青龍国に近い場所。ここから、地図上ではかなり距離がある。この世界に合わせていうなら3日ほど掛かる距離だろうか。
 しかし、それはあくまで通常の人間が魔物を警戒しながら安全に歩いた場合だ。彼らは転移特典とも言える《スキル》の力がある。身体能力が通常の人間と比べ物にならないほど上がっている彼らが全力で走れば、その日の内に目的地に着けるだろう。


「は?」


 ハヤトの短く聞き返えした。ユウスケのどの発言に対してかわからないが、いつものふざけた感じではなく。一瞬だけだが、ハヤトの平静な部分が出た。


「あ?」


 その時、集中力が削がれたのか、手元が狂ったのかはわからないが、ハヤトが指でうまく弾けずコインを落としてしまった。


「やっべ」

「おい」


 スキルによる後付けの身体能力で、そのコインを地面に着く前に掴む事ができた。弾いていた指ではなく。しっかりと手のひらで握るようにつかんだ。


「そんな事になるからいつも、必要もねぇのにコイン飛ばすのやめろっていってんだ」


 コインを慌てて掴んだハヤトにユウスケは文句を言う。しかし、ハヤトは軽く返事だけをしてその意見を流した。これはいつもの事だ。彼はこれについて止める事を考えてはない。
 どうして、止めないのかは彼にしかわかないが、こだわりみたいなものがあるのだろう。

 ハヤトはユウスケに対し、ふざけたように笑うと自分の握っている手を開き、掴んだコインを確認した。


「あっ」


 手のコインを確認したハヤトの口から、反射的に声が漏れる。その声につられユウスケもハヤトの方を反射的に見てしまう。
 ハヤトが声をあげた理由。それは、手を開いた時にコインがを向いていたからだ。
 金色の一枚のコインに彫られている【死】という一文字ひともじ。コインはその面を向いていたのだ。


「おい、まさか!」


 ユウスケが焦ったような口調になる。
 ハヤトはユウスケの言葉に返事をする事なく、地面に倒れた。

 そしてその肉体は、来ていた衣服、持っていた三日月型の剣などの物を残して消えていった。


「あいつ・・・っ!!」


 そう。彼はユウスケの言うとおり死んだのだ。
 自信の《スキル》の効果によって、簡単に、単純に、死んでしまった。残されたのは彼の持ち物だけ。
 本当に九条 隼は死亡したのだ。


「あーくそっ。このタイミングでやらかすかよ・・・しょうがない。一旦もどるか」


 ユウスケはチームメンバーに訪れた突然の死について悲しむ事はせず、頭を抱えて苛立っていた。
 そして「荷物が増えるじゃねぇか・・・」と呟きながらハヤトの遺品いひんを回収すると、自分たちの国。アドルフォン王国に戻るのだった。






 そこはアドルフォン王国にある聖堂せいどう
 古めかしい作り方のそこは、今は誰も使っていない。
 そこに入っていく、1人の男。つい先日にチームの相棒を亡くしたユウスケだ。
 彼はハヤトの残した遺品を持ち、その聖堂に入っていった。


「あれ?何でこんなに人がいるんだ?」


 そこに居たのは、3人の男と1人の女。
 盗賊のような格好をしている男もいれば、赤いスーツを着たおっさん。椅子に座って歯車はぐるまをいじっている男もいる。
 そんな中で、入ってきたユウスケを見て目線を向けたのは1人だけだった。


「あぁ!!あんた!」


 声を荒げて指差してくる盗賊のような格好をしている男。ユウスケにその男は見覚えがないが、その男はユウスケを知っているようだ。


「あんた!Sランクハンターのクロガネの1人だろ?」

「そうだが、どこかで会ったか?悪いが覚えてないんだ」

「いやたぶん、こっちが勝手に知ってるだけだ。俺はあんたと同じSランクハンターでチーム[アネット]の1人で・・・コリンズっていうんだ。同業者同士よろしく頼むぜ」

「ああ、なるほどな。よろしく」


 現在この国に4組しかいない。Sランクハンター。基本的に、彼らが共に依頼を受ける事はない。そもそもSランクハンターが2組も必要な依頼は来なからだ。依頼の難易度でSランクのハンター2組が必要になるなど、それこそ上位の魔物が大きな群れを作ってた時ぐらいだ。
 それに4組といってもその内の2組はソロで活動しおり、そのどちらも個が強すぎる。よほどの事がなければ、ソロで活動している彼らと合同の依頼がくる事はないだろう。


「それで、要件はそれだけか?」

「ん、いや、ちょっと聞きたい事があってな。あんたも神って名乗る奴にここに呼ばれたのか?」

「神?」

「ああ、突然、急にこの場所に来てくれって言われてさ。誰だ?って聞いたら神って言ってたんだよ」


 コリンズは昨日。仕事も終わり、宿屋の自室でくつろいでいると、白い影のようなものがその部屋に現れた。
 その影は自らを神の名乗り、コリンズをこの時間にこの場所にくるようにと告げると返事も聞かずに消滅した。
 そして今日、いざここに来てみると、不気味なスーツ姿のおっさんや歯車をいじり倒している男。そして、を見てる女がいた。
 コリンズは最初、彼らにユウスケと同じ質問をしようとしたが雰囲気的に話しかけられず、気まづい雰囲気の中にいた。そんな時、見たことある人物が入ってきたものだから、思わずユウスケに話しかけたのだ。


「いや、俺はからそんな連絡はもらってないな」

「そっか・・・うん?あいつ?」


 ユウスケの返事に違和感を覚えるコリンズ。
 しかし、その違和感をコリンズがユウスケに聞く事はなかった。
 なぜなら、その聖堂の奥から1人の男が大きな声で笑いながら出てきたからだ。


「よぉ、よぉ。皆の衆。はじめましての方は、はじめまして!フハハハハハハ!俺が神だ!!」


 奥から出てきたのはなんと先日、自分のスキルで死亡したハヤトだった。
 まるで何事もなかったかのように現れたハヤトだったが、彼は服を着ておらず、全裸で堂々と仁王立ちをしていた。


「は?待て待て、嘘だろ!お前が神だって!?」


 思っていた神とは違いすぎる。神の名乗ったただの全裸の男に、コリンズは思わず叫んだ。


「いや違うけど?」

「は?」


 しかし、その男は違う、と。自分は神ではない、と直ぐに認めた。
 もうコリンズは何がなんだかわからない。
 混乱しているコリンズを他所に、ハヤトがユウスケを見つける。


「ヒャヒャヒャヒャ!久しぶりだな!まっ、といっても俺の感覚ではついさっき死に別れした感覚なんだけどな!ハハハハハハ!あ、俺の服を持ってきた?」

「ああ、ここにあるぞ」


 ユウスケはハヤトが残した剣や衣服などの持ち物をその変に置いた。
「サンキュゥゥゥゥゥ!!」と叫んだハヤトは早速その場でその服を着はじめた。
 直ぐに着替えは終わり、死ぬ前のハヤトと同じ格好に戻る。そうなると、ハヤトはまたいつもと同じように、一枚のコインを指で弾きはじめた。


「また、死んでたのかキチガイ野郎」


 ふいに男の声が聞こえてくる。それは歯車をいじっていた男から発せられていた。


「おやおや、おやおやおやおや?そちらにいらっしゃるのは変態歯車男くんではあーりませんか!!ヒヒヒ!お久しぶりだね!元気にしてたかな?」

「黙ってろキチガイ野郎」


 歯車の男とハヤトが言い合いを始める。
 ハヤトの方は完全にあおっている喋り方なので、どんどんと空気が悪くなっていく。
 そして、そのやりとりがしばらく続くとついにはハヤトの口調が変わった。


「いちいち俺に突っ掛かってくるんじゃあねぇよ、クソ野郎。切り刻むぞ?」


 笑っている時のおちゃらけた表情はなくなり、言葉も普段のふざけた感じがなくななった。声もドスの利いた声に変わる。
 普段の彼しか見たことない者にとっては明らかに異常な事だ。


「いいぜ。やってみろよ。バラバラにしてやる」


 ハヤトの挑発に、その男も乗ってくる。
 ついには、お互いに構えまでしてしまう。
 そんな緊張した雰囲気の中、コリンズは驚きわなわなとしており、スーツの男は少しも動かず腕を組んでたっているまま。同じチームのユウスケもどうでも良さそうに荷物の整理をはじめた。
 そんな中で、一際ひときわ高い声が響く。


「ウルサイんだけど。テレビ見てるんだから静かにしてくれない?」


 声の主はソファーに寝転がり、テレビを見てる女。
 科学というものが、発展していないこの異世界であるはずのない、あっても使い物にならないテレビを女は静かに見ていた。
 彼女はウルサイと注意をしたが、実際にはそのテレビから音は出ていない。
 ただ、音のないクイズ番組のようなものを見ていた。

 ハヤトと歯車の男は横やりが入った事で雰囲気を壊されたからか、男は黙りまた歯車をいじる、ハヤトはいつも通りの口調に戻り、ユウスケと話はじめた。

 しかし、コリンズだけ疑問だらけだ。
 周りは当たり前のように、スルーしたがこの世界にテレビがある。そして、電気も電波も存在しないのにテレビが映っていてる。この事に誰も突っ込まない。
 コリンズはあれが気になるが、誰も疑問に思わないこの状況で、聞けるほどきもわってなかった。


「お待たせしました。これで全員ですね」


 気まずい雰囲気のなか突如として1人男が現れる。
 その男の見た目は、ここいる黒髪の5人とは違い、明るい茶色の髪色をしており、服もこの世界でありふれたものを着ている。
 そんはこの世界でどこにでもいる、普通の人の格好。そんな格好をした男が奥から、先ほど全裸のハヤトが出てきた所から、現れた。


「よくぞ集まってくださいました。勇者達よ。私がここに皆をお呼びしました。神です」


 全裸の男の嘘ではない。

 本物の神が今ここに現れた。



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